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第二十二話

フラウレイズ殿下はベッド脇の椅子に腰を下ろすと人払いをした。

ラチュアは名残惜しそうにしていたし、咲夜もいろいろ話せるようになった経緯を聞きたかったがまぁそれは殿下に聞けばわかることなのでみんなが出て行くのを黙ってみていた。


「まずは一先ず礼を言おう。経緯はどうであれラチュアが声を取り戻したことは事実だからな。」

礼を言うといっているにも関わらず漂う殿下の怒りの空気に咲夜は思わず肩をすくませる。

「しかし下手をすればお前はラチュアに新しい心の傷を背負わせるところだったんだ。そこのところは自覚してもらわなければならない。」

その言葉を咲夜は素直に受けとる。慣れ親しんできた人たち、生活に気が緩んでいたことは否定できない。自分がこの世界でいかに希少な存在であったのかは理解していたはずなのに。

「まぁこちらの警備が不充分だったのが一番の理由だ。ついそとの警備に警戒するあまり、内に関する意識が甘くなっていた。すまなかった。」

殿下は咲夜に向かって頭を下げた。初めてみる王子様の態度にビックリして咲夜は声を上げそうになったが手で口をふさいでぐっとこらえた。



ー内に関する意識。

殿下の言葉が耳に残る。咲夜は手元の紙を新しいものに替え、文字を綴る。


『私が飲んだのは毒が含まれていたんですよね?』

「そうだ。バイガレスという花から抽出できる毒で極少量なら咳止め、痛み止めの役割を果たす薬草であるが、投与量を誤るとあっという間に呼吸器に作用し窒息を招き死に至る。」

うわーそんなもの盛られちゃったんだ。殺す気満々だったって事か。


『ちなみにラチュアのカップにも同じものが入っていたんですか?』

「ラチュアにカップには含まれていなかった。目的はお前だけだったようだな。」

つまりはお姫様目的の政治的な暗殺ではなかったって事か。私が目的・・・。


『犯人は捕まったんですか?』

「あの日、たまたまラチュア付きになっていた侍女だった。もう裏も取れており、幽閉されている。」

『それで犯行理由は何て言ってるんですか?』

「突然現れた正体不明の女が王家に取り入っているのが気に食わなかったからちょっと懲らしめてやるだけのつもりだったと言い張っている。」

うーん。確かに正体不明な女ではあるけれどそんな理由で殺されちゃたまったもんじゃない。

そもそも理由がな・・・。まるでとってつけたかの様。ちょっとおばかなお嬢様の短絡的犯行といってしまえばそれまでだけど、ほんとにそれが理由??神獣が言っていた“変革の歯車が動き出した”その言葉が頭の中をよぎる。


『殿下は彼女の言い分が真実だと思ってるんですか?』

咲夜の走り書きを読むと殿下は咲夜の目をじっと見る。

「真実とはおもっていない。おそらく裏があるだろう。お前にも思うところがあるのか?」

そう聞かれると咲夜も言葉に詰まってしまう。別にこれといった確証があるわけでもない。

『いや、なんとなくそうかな?と』

思わず歯切れの悪い返事になってしまったが、今のところこれが事実だ。

「・・・そうか。」

殿下はため息をつくように一言そうつぶやくと席を立ち上がった。

「長居して悪かった。まぁ新しいことがわかり次第お前にも伝えよう。・・・さぁもう少し休め。お前が飲んだ毒は致死量を3倍上回っていたのだ。いつ死んでもおかしくない状況だったんだぞ。」

殿下の言葉に驚きが隠せない。3倍!?!?そんな大量に盛られていたのかっ!!そりゃ生きていることは奇跡だな。


殿下に肩を押され、ベッドに横になると猛烈に眠気が襲ってきた。まだまだ体力が回復しきっていないことがわかる。ぼんやりと揺れる視界の中で、殿下に見下ろされている気配を感じながら、咲夜はゆっくりとまた眠りについた。



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