第十七話
ラチュアとのお茶会はその後お互いに招いたり招かれたりしながら続いた。
時にはユファンさんやセスさん、フラウレイズ殿下も参加するようになっていた。
ラチュアは咲夜にとても懐いてくれるようになり、表情も最初の頃から比べるとずいぶんと豊かになった。声はまだ聞けないけれど。
いつものようにお茶会の中、参加していたフラウレイズ殿下が口を開いた。
「陛下からお前と会いたいと話が出た。茶会が終わったら謁見にいくからそのつもりでいろ。」
「今日ですか!?ずいぶん急ですね。」
心の準備時間も無しですか。仮にもこの国の最高権力者に会うんですよね~。
せめて明日とかにしてくれないかな?そんな風に思った咲夜だけれど淡い期待は泡と消えた。
「陛下はお忙しい。今日だ。」
容赦ない殿下の一言に撃沈していると隣に座っていたラチュアが心配そうに咲夜のドレスを軽く引っ張る。優しいなぁラチュア。
ちなみにお茶会に殿下が交ざるようになってラチュアにいかにこの男が優しく接しているのかがわかった。セスさんが思わずからかいたくなる気持ちがわかる。妹を溺愛してんだな。
ラチュアにいつまでも心配させておくと殿下に殺気立った視線を送られるので「大丈夫だよ。」と告げ、微笑んだ。
陛下との謁見の間は城の中心に位置する。
セスさんに連れられて殿下のいる部屋に通されたときの様な緊張感が咲夜を包む。
殿下にあとに続き部屋に入る。それからクリスティアに教わったように礼をとった。
殿下に紹介され、名前を名乗る。それからは陛下に声をかけられるまで顔をあげてはいけない。じっとお辞儀をしながらその瞬間を待っていた。
「そなたがサヤ殿か。顔をあげてくれ。ぜひ瞳をみてみたい。」
その声は予想外だった。驚いて咲夜が顔を上げるとそこには妖艶な笑みを浮かべた美女が微笑んでいた。
国王様って男の人じゃなかったの??
そういえば陛下陛下って呼ばれていただけで性別を聞いてはいなかった。自分はてっきり男の人だと思っていたし、そんな咲夜の態度で周りももう知っていると思ったのかもしれない。
すらっと伸びた身長は175cm以上はあるだろう。ラチュアの金髪をより深くしたような赤みの強い金髪に薄い水色の瞳が好奇心に満ちた瞳で咲夜を見つめている。
「私がこのディアリス国王、カリスツィエン・オーネイ・ディアリスだ。挨拶が遅くなってすまなかった。まだバクウェイの平定ができていなくてな。」
そういいながら陛下は咲夜との距離を縮める。ぐいっと寄せられた顔に咲夜は動揺を隠せない。
「ふふ。神獣の守護を受けた娘というからどんな女かと思えばずいぶんと愛らしい娘ではないか。」
「陛下!」
艶やかな微笑を浮かべながら陛下は咲夜の頬を撫でる。まるで食われそうな雰囲気に咲夜が硬直しているとフラウレイズ殿下の嗜めるような、あきれたような声がかかる。
美人って凶器だ。
咲夜が心の中で一息つくと陛下は咲夜に椅子に腰掛けるよう促した。と同時にフラウレイズ殿下を下げさせ、陛下と二人きりにさせられてしまった。
「ラチュアが世話になっていると聞いた。あの娘はどうだい。」
何をされるのかと緊張していた咲夜にかかった声は優しく、今までの艶やかさは隠れている。
この姉弟はラチュアのことをとても気にかけているんだな。
「何しろ私たち王家の直系のものは私たち3人しかいないからな。ラチュアは歳が離れているし、あのような状態になってしまったりとで私もフラウも気になって仕方ないのだよ。特にフラウはラチュアの母親に育てられたようなものだから実の妹の様に感じているんだろう。」
陛下の言葉を咲夜は黙って聞いていた。陛下は口元に手を当てながら咲夜を見つめる。その視線は一気に鋭さを増した。
「さて、そなたがラチュアを気にかける理由は何だ?」