第十三話
「へ~。姫に会ったんだ。」
「クリスティアさんに聞いたんだけどフラウレイズ殿下の妹さんなんでしょう?」
ユファンさんの授業を受けながら、書庫で会った少女の話になった。あの後クリスティアさんから聞いた話によるとあの子はフラウレイズ殿下の妹姫で、いわゆる本物のお姫様だ。
「そう。母親は違うけどね。ラチュリシア・ロエン・ディアリス殿下。御歳8歳。また侍女たちを撒いてたのかな?」
母親違いか。やっぱり王家は違うね。
「まぁ。姫さんのことはフラウ殿下に聞きなよ。僕からは詳しい話はできないからさ。」
そういうとユファンは綺麗な顔をゆがめるように笑ってみせる。
その笑い方には単純に王族の方々の噂話は出来ないということではなく別の理由があることが示されていることが伺える。
クリスティアから聞いたことはお姫様の正体だけではない。お姫様は口が利けないということも。
「まぁサヤと姫さんはあんまり関わりあう必要はないと思うし気にしなくていいんじゃない?」
ユファンさんは一息つくと椅子に座りなおし授業を再開するため本に手をかける。その態度は淡々としており、見た目年齢のような子どもらしさは微塵も無い。ぱっと見は少年なのに実年齢は違うんだろうか?可愛くない。
「ねぇ。ユファンさんっていくつなの?」
お姫様の話はこれ以上みんなからは聞けそうに無い。この話は置いておいて今気になる話題に話を移してみた。
「僕?サヤと大して変わらないと思うけど? 18歳だよ。」
さらっと言われたユファンさんからの言葉に咲夜は驚きを隠せない。
どうみたって14、15歳だ。
「18歳!!・・・もっと年下かと思った・・・。」
思わずつぶやいてしまったけれど、ユファンさんは嫌な顔をせず続けた。
「よく言われるけど。僕は魔力のせいで成長が遅いんだ。」
「魔力・・・。」
「昔は精霊たちとは違って、血筋による力を発揮した一族がいたんだ。もう神話レベルの伝説だけど。
で、精霊による力とは違う能力者のことをこの世界では魔法使いって言われるんだ。圧倒的に数は少ないし、大抵は守護している精霊の力が勝って魔力はあんまり表に出ない。僕みたいなのはなかなかいないよ。」
なんだか複雑そうだ。だまりこんで座ると本で頭をたたかれた。
「気にしなくていいよ。僕はこんな自分を結構気に入ってるんだ。」
そう言って笑った姿は歳相応に見えた。きっと色々と言われてきたんだろう。痛みは人を大きくすると思う。
「ちなみに私はもうすぐ26になるんだけどねぇ。」そういって笑ってみる。
あんぐり口をあけてペンを落としたユファンさん改めユファン君は可愛かった。
「サヤ殿。君が26歳というのは本当か?」
その後授業の時間になって訪れてきたヴァイルさんには開口一番に年齢を確認された。
そうだと告げると15分ぐらい眉間に皺を寄せながら考え事をしていた。声をかけてみたが反応は無かった。
あらあら珍しいこともあるもんですね~。そういってクリスティアはにこにこしていたけど。