第九話
その後殿下は侍女を呼び寄せるとなにやら耳打ちし、呼び出された侍女さんによって咲夜は部屋から連れ出された。
3人はそのまま部屋に残っていたからたぶん今後の私の身の振り方とかを相談されるんだと思う。
まぁそしたら当事者がいる中では話しづらいよね。
侍女さんに案内されたお部屋は咲夜の実家のリビングより大きくこんな正体不明な女を置いていいのかと思うほど美しいお部屋だった。あつらえてある調度品もとっても高そうなものばかりだ。まぁなんてったって王城がサグラダファミリアなのだからその中では質素な部類に入るのかもしれないけれど。
部屋の中で唖然と立ち尽くしていると案内してくれた侍女さんではなくて新しい侍女さんが後ろに控えていた。
アイスグレーの艶やかな髪をしっかりと結い上げてあり、瞳は綺麗な朱色をしている。すらりとした長身の美人さん。年上っぽいけどたぶんそんなにはなれてはいないだろう。20代後半かな?
「これから咲夜様のお世話をさせていただきます。クリスティアと申します。宜しくお願いいたします。」
そういって恭しくお辞儀をする仕草は一級品そのもの。ほんもののお姫様ってこういう人のこと言うんだろうなぁ。
「あのぅ。クリスティアさん?とりあえずその様づけは無しにしません?どういう風に説明を受けているのかはわかんないんですけど私とりあえず大した身分の人間ではないんですよ~。」
「出来ません。」
へらっと愛想笑いを浮かべながら言ってみたが、100点満点の笑顔で拒否された。
「サヤ様はフラウレイズ殿下のゲストです。その時点でサヤ様がいかなる身分の方でも私達仕える者にとってサヤ様はお客様なのです。それにサヤ様は白き神の使いの守護を受ける方。その方を侍女と同じに扱うことなんてできませんわ。」
あっ。神獣のことは知っているわけですね。なんだかどこまで話していいいのかわからなくなる。
これからどうすればいいんだろ?
「そういえば、精霊はどんな人にでもついているんですよね?クリスティアさんにもついているんですか?」
神獣つながりで思い出したので聞いてみる。あれ?この質問自体なんかまずかっただろうか?
「えぇ。私には花の精霊がついています。ミスニスという花の精霊です。」
お花の精霊かぁ。なんだかイメージにぴったりだ♪
「ひょっとして目の色と同じ色のお花なんですか?」
「そうですね。春の時期になると頻繁に良く見られるようになる野花です。まぁ花の精霊の守護を受ける私は花を育てるのが得意だったり、お茶に香り付けができるとかそれくらいですけど。」
そういってクリスティアさんがティーカップを差し出してくれた。琥珀色した液体はあっちの世界の紅茶と似ている。一口飲んでみるとちょっと味は違うけれどとっても美味しい。それにとってもいいにおいがした。
あったかいお茶を飲んでいるとうとうとと眠気が襲ってきた。
そのままクリスティアに促されるまま咲夜は眠りについた。
温かいふかふかのベッドで眠るのは幾日振りだろう。その日咲夜は夢を見ることも無くぐっすり眠った。