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帝国首領の過去

警告・New Age Beginningの続編であるために先にオリジナルを刮目せよ。そして本編に突入くれたし。

大きな赤い満月が雲からゆっくり顔を出し照らし出された大地が赤く染まった夏の蒸し暑い夜。幼顔の三つ子の姉妹は物音一つもしない奥深い森の中で恐怖に慄いていた。

「望恵、聡子。とにかく構わず逃げるのよ」

長女の良子が妹二人の手を引っ張り走り出した。

「あいつらは一体何なの」

次女の望恵が振り返りながら走っている。そこには大小の影がふらふらと歩いて来ている。

「良子お姉ちゃん怖いよ」

末っ子の聡子は泣きながら走っている。

「森の中だというのに何故病院の匂いが何処行っても充満しているのよ」

望恵が言うようにエタノールの混じった病院独特の匂いがその森一体に広がっていた。

「待って、なにっ!この蝉の鳴き声」

良子が立ち止まった。今まで恐ろしいほど静まりかえっていた森がうるさい程の蝉の鳴き声で埋め尽くされた。

「なんでこんな夜に一斉に鳴くのよ!」

望恵が両耳を塞いだ。

「ねぇ、お姉ちゃん・・お地蔵さん・・」

聡子が指を指した向こうには何回も出くわしている地蔵が立っていた。

「この地蔵、今さっきも此処にくる前もずっと私達の側にいるじゃない!?」

望恵は驚きと恐怖で顔が歪んだ。その地蔵は常に三人の前に出てきていた。

「私達逃げているつもりで全く動いていないのよ・・ただ足踏みしているだけなのよ・・」

聡子は走るのをやめた。すると何処から現れたのか不気味な影が背後から近づいて来ていた。

「諦めないで!体中に力を入れて全力で走るのよ!一人ひとり別れて散らばって逃げるのよ!」

良子は二人を勇気づけ背中を押した。三人は四方八方に別れ全速力で走り出した。

「運が良かったらまた何処かで会えるわ。その時代ときを楽しみに待っている!」

良子は逃げながら低い声帯で大きく二人に叫んだ。


三つ子として造られた新人類ミュータント。“不良品の墓場”と言われる誰も知らない場所で何があったというのだろうか?


“不良品の墓場って有名なミステリースポットよね”

“わたし赤い満月って見たこと無いんだけど・・”

“それより月って宇宙人の基地って知ってる?”

“聞いたことある、ある。巨大な人工衛星でしょ。本当かなぁ”

“事実無根。単なる噂話よ・・”



「昔話など聞きたくも思い出したくもないわ!もううんざりよ!」



無機質な部屋の中。そこには大きなスーパーコンピューターで管理された巨大な水槽が置かれていた。そこに貯められた水溶液の中に体中に管を通された鮎子が目を閉じ漬かっている。その鮎子を前に幼顔の女が低い声で語りかけていた。

「あの日あなたが突然、此処に現れたのはびっくりしたわ。遠藤広子さん」

幼顔の女が水槽の中の鮎子に声を掛けている。

“遠藤広子・・。そうだあの作戦で使っていた名前だわ・・”

鮎子は仮死状態ながら意識はまだあった。

「あれからかれこれ何年の月日が流れたのでしょう。あなたが私達の電波塔の高速エレベーターを使い遥か遠い此処までやってくるとはいい度胸よ」

幼顔の女は巨大な水槽の中の鮎子を下から見上げ眺めている。

「遠藤さん・・あなたは仮死状態のままずっとそこにいるのよ。その水槽の中から出ればどんどん歳をとって見る見るうちにお婆さんになるわよ」

幼顔の女は鮎子の美貌に嫉妬しているようだ。

「あなたは歳がいっても変わらないわね!」

鮎子は我慢できなくなって口に出した。

「私はこの顔がお好みなのよ」

幼顔の女はすぐさま答えた。鮎子の言葉は有沢の声が他の者に通じた様な原理だろう。

「しかし分からない筈だわ、こんな所に基地を構えていたんだなんて!そりゃ、世界中いくら探しても無いはずよ」

鮎子は皮肉っぽく感心した態度を見せた。

「此処だったらあの地球ほし全体を見渡せられるのよ」

幼顔の女は大きなモニターの画面を切り替えて地球の姿を映し出した。

「ロケットで月に行っていたのは遠い昔の話。現代いまやエレベーターひとつであなたの様にワープして一瞬で来れるのよ。やっぱりスピードの時代よねぇ。」

そう鮎子と幼顔の女がいるこの場所は“月”である。

「月の歴史はねぇ、遥か太古の昔あの地球ほしの一部だったの。その欠片がまぐれで飛び出して地球ほしの衛星になったのよ。そんな偉大なる恵みを利用しない手はないわ。太陽の力で電力も供給できるし、誰が宇宙人の基地だとか言ったのよ?」

幼顔の女はぬけぬけと聞いてもいない事を言い出した。鮎子はそれを疎ましく聞いている。

「所詮は戯言よ。それよりひとつ教えて欲しいの。何故あなた達は此処までして地球ほしを存続させたいの?」

鮎子は以前から思っていた疑問をぶつけた。

「あの地球ほしはねぇ、偶然が積み重なって出来た珍しい天体なの。大自然に囲まれ動物や植物、数多くの生命に溢れた宝庫なの。それにこんなに広い宇宙でもまれに見ない唯一の存在よ。だって地球ほし自体が生きているんだもの」

幼顔の女はさぞ楽しそうに言った。

「それで現在いまやコンピューター制御で新人類ミュータント達に地球ほしを管理させているのね」

「そうよ。愚かで何を仕出かすか分からない掃き溜めからわんさか湧いて出て来た様な人類どもを排除して、我々のコントロールで規則正しく動いてくれる新人類ミュータントの方が扱いがってが良いわ」

幼顔の女は自分達の偉業を自負している。

「しかし、もうそれもそろそろ終わりよ。あの地球ほしにも寿命が来ているの。いずれ太陽に吸い込まれ終わりを迎えるわ・・。そうなればここも巻き沿いをくらって同じ運命を辿るのよ。そうよねぇ運命共同体ですもの」

幼顔の女はさり気なく静かに悲しそうに言った。

地球ほしの最期!」

鮎子の心はざわめいた。

「せっかくここの“嵐が丘”って土地にマンション買ったのにっ!無駄骨だったわぁ」

幼顔の女の冗談めいた話が耳障りに聞こえた。

「“嵐が丘”!!」

鮎子の昔の記憶が蘇った。


・・つづく。

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