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スターチャイルド

警告・New Age Beginningの続編であるために先にオリジナルを刮目せよ。そして本編に突入くれたし。

「おじいちゃん・・」

光は直感的にそのミイラが自分の祖父、有沢高仁だという事が分かった。

「おじいちゃん・・、私のお父さんお母さんは誰なの。いま何処にいるの・・」

光は決して返ってはこない会話と知りながらこらえきれない涙を流しながら横たわる有沢のミイラに縋り付いた。

感情を鎮めるまでどれだけの時間が経っただろう。光は涙で溢れかえった顔を腕で拭い悲しい感情を吹っ切り、有沢のミイラを引きずり出して“パンドラの匣”の中へと入っていった。

光が思い浮かべるのはまだ見ぬ両親への思い、ただ会いたいと願う事だけだった。

扉を締め真っ暗な狭い空間で目が慣れてきた頃、目の前に自分がいる事に気づく。一瞬驚いたが、他愛もないそれは四方鏡張りで映る自分の顔だった。周りの鏡にも自分の姿が映っている。しかし・・、何かが違う。人の気配がするのだ。見渡してもそこには鏡に映る自分の姿だけ、・・ではなかった。姿形は自分と変わらずとも本能で分かる別の何かがそこにいた。

「よく気がついたわね、光ちゃん・・」

目の前の鏡に映った自分が語り始めてきた。声まで同じだ。

「私はあなたの心の中にいるもうひとりの私よ・・」

目をやると四方に囲まれた鏡の中の自分達が語りだしている。

「あなたは何をするにも人まかせ。暇があったら寝るかゲームをするかどちらか。退屈な日常をただ時間を潰しているだけ。だからあなたの仲間達も愛想を付かせて先に死んじゃったのよ。そんなくだらない人生やめちゃえばぁ」

鏡の中の自分は確信を突き胸に刺さる事を言ってきた。

「両親にあったところでどうするの?親のスネでもかじって甘えるつもり」

鏡の中自分が親の話題に触れてきた。

「そんなんじゃないわっ!私はただ優しさに触れて胸に飛び込みたいだけよ!」

光は囲んでいる鏡の中自分を見渡しながら言った。

「そんな両親はあなたに会いたいと思っているの?望んでいなかったらどうするの?自分勝手な思い込みだわ」

鏡の中の自分は平然と論破してきた。

「会えなくてもいい・・。私は・・、自分の親が・・、どんな人なのか知りたいだけよ・・」

光は俯き泣き出しそうになっっている。

「あなたの親は黒い大きな目の銀色の皮膚の宇宙人よっ!その宇宙人がUFOに乗って仲間達のところへあなたを運んでくれたのよ!」

鏡の中自分がけたたましく大きくあざ笑った。

「ドッペルゲンガーの戯言に負けるんじゃない!俺の孫娘は強い子だ!」

扉の向こうから有沢の声が響いた。その迫力に光は我に返り咄嗟に目の前の水晶玉らしきものに手を触れた。すると突然闇の中の声は消え、まばゆい光に包まれた。

「おねぇさん。なに泣いているの」

眩しい光の中から野球帽を被った男の子が光の前まで歩いてきた。

「泣いてなんかないわよ」

光は男の子の身長に合わせしゃがんだ。

「だけど顔に涙の跡が付いているよ」

野球帽の男の子が光の顔をなぞる。

「ごめんね。嘘ついちゃった。君は何処から来たの」

光はその野球帽の男の子が自分にとって好意的と感じた。

「お空の上の遠いところだよ」

野球帽の男の子は人差し指を上に向けた。

「お父さんやお母さんもそこにいるんだ」

光は男の子の頭を撫でながら言った。

「そこにはいないよ。お父さんもお母さんも僕の事を忘れているんだ」

野球帽の男の子は寂しそうな顔になった。

「それじゃ一緒にいないの?なぜ君の事忘れちゃったのかしら?」

光は優しい表情で言った。

「自分のやっている事に夢中になって僕の事はほったらかしなんだ」

野球帽の男の子はふくれっ面になった。

「いけないお父さんとお母さんね。それで二人はいま何処で何をしているの?」 

光は昔の時代にはそんな親も沢山いたんだろうと感じた。

「お父さんはこの扉の向こうに倒れているよ。お母さんは“嵐が丘”という所にいるんだ。だけどもう二人とも僕に触れてくれない。今はおねぇさんだけだよ」

光は男の子の言葉にハッとした。この男の子はお祖父ちゃん達の息子!

「君っ!私のお父さんなのっ!」

光は男の子の肩を強く握りしめた。

「痛いよぉ、おねぇさん。僕まだ子供だよ」

野球帽の男の子は困った顔になっている。

「何でもいいから知っている事は教えてよおぉ。私のお母さんは何処にいるの・・」

光は男の子に縋る思いで聞いた。

「僕もよく分からないけど、お空の上の僕のいるところは他にも沢山のお友達がいて皆んなそこで楽しく遊んでいるの。だけど何かのタイミングでこうしておねぇさんに会えたりも出来るの。だけど気付けばまたそこに帰っているの」

野球帽の男の子は子供ながらに一生懸命伝えた。光は男の子の言葉の意味を一生懸命解釈した。遠い空の上の場所はもしかしたら宇宙ステーション。そして何らかの意図で集められた他の大勢の子供達。無意識にテレポーテーションするのは何かのきっかけがあった時。

何のきっかけ?例えば今の私の様な親に会いたいという気持ち。やっぱり、この男の子と私は何かの繋がりがあるんだわ。あと、“嵐が丘”は別の場所?私の推測があっているならこの子は絶対私の父親。

「お父さん。私もその場所に連れてって!」

光は不意に男の子に向かってそんな言葉が出た。男の子をもう既に自分の父親だと思っている。

「分かったよ、おねぇさん。僕にしっかり掴まっていて」

光が男の子を抱きしめた瞬間、二人の体は粒子となり消えた。そしてその後、巨大な揺れが起こり海底洞窟は崩壊して“パンドラの匣”も崩れ落ちる瓦礫の下に埋もれてしまった。


 

同じ時間ころの少し前・・



海底油田掘削場を教会とする女だらけの“鉄十字聖道会”の司教がいま時間と戦いながら掘削作業を急いでいた。

「今宵、そらの上では四つの天体がグランドクロスを形取りそこから創造の主が降りて来られる。それまでに間に合えば良いのだが・・」

すっぽりと銀色の完全防御服を被り顔までは分からないが、よほど焦った形相でいるのだろう。そんな中、少し離れた制御室では他の信者達が司教のこんな噂話をしていた。


“このごろ司教は人が変わってしまったわ。今じゃ布教活動おしえより世界を根本的に変える事しか頭にないわ。これじゃ宗教じゃなく革命よ・・”


“司教の昔を知る人はもういないけど、話によると私達の漸進は“鉄十字教団”という名前で当時の司教はまだ一信者で“No.6”って番号で呼ばれていて、とても心優しいお方だったみたいよ”


“だけどその当時の司教は自殺しちゃったみたいよ。何か曰く付きねぇ”


「今でも素晴らしいお方よ。人の人生を良からぬ眼でこそこそと詮索してはなりませぬ」

そこへ上層クラスの格の高い女が凛々しく入ってきた。

「無駄話などしていないで復旧活動は進んでいるの?私達はいち早く布教活動おしえをしなければならないのよ」

上層クラスの女はその場にいた信者達をけしかけた。

「そうです、新人類こひつじ達に救済を!」

信者の一人が声を張り上げた。それを皮切りに一斉に他の信者達も声を高らめた。

「シスター!大変です!至急お話が!」

慌てた様子で一人の信者が上層クラスの女に詰め寄った。そして耳元で小声で話している。

「分かりました。他の皆さんは復旧活動を急いで下さい。私は用が出来ましたので出ていきます」

上層クラスの女は冷静な顔つきになり落ち着きながら全員に通達した。


“今のシスターの顔。緊張して強張っていたわよ”


“よっぽど緊迫した事があったんじゃない?”


“足元が震えていたわよ”


女の噂話は尽きない。


「それは間違いないの!」

上層クラスの女はひと気の無い通路で慌ててきた信者に聞き返した。

「間違いありません確かに見ました。私が偶然空を見上げたとき高台に司教がいらっしゃって、そして私を呼んで“もうすぐ地球ほし心臓コアに突入します。そして大地の叫びの声を分かち合いましょう”と脈絡もない事を言ったのです。大事なのはその時の司教の防御服が裂けていたんです」

慌てた信者は言葉を震わせながら言った。

「この最近、人を寄せ付けず独りで何をやっているかと思えば、何を考えているのかも分からなくなってきているわ。きっと裂けた切れ目から有毒ガスが司教の頭に回ったのに違いないわ」

上層クラスの女は慌てた信者の唇に人差し指を当てた。

「この事はぜったい内緒よ。私は司教を止めに行くわ」


そこは長い鉄板が連なりせり出した掘削場。その先端には長細い鋼鉄のドリルが高くせり上がっている。大きな波の音と唸り上がるモーター音が絡み合いとてつもない轟音が響き渡っている。潮風の強風がうねりを上げるその場所で司教は機械を弄りながら掘削ドリルの回転を速めた。

「司教!お止め下さい!」

司教に気付かれず近寄った上層クラスの女が銃を構えていた。

「シスターも間近で“新境地”を見届けに来てくれたの」

司教が発するイントネーションがろれつが回らず不協和音になっている。

「司教あなたは有毒ガスに侵されています。妄想を見ているのです。私と一緒に来て下さい。治療が必要です」

そう言いながら上層クラスの女は銃を司教に向けていた。

「シスターにも分かるでしょ。もう遅いのよ。さぁ、神の怒りよ!大自然の猛威よ!唸りを上げこの世界を創り変えろ!」

司教がそう言って機械のレバーを引いた。・・と、同時に上層クラスの女が持つ銃が火を放った。司教はそらを仰ぎながら荒れる波の中に落ちていった。

「司教は神に召された・・」

上層クラスの女が呟いた瞬間、高くそびえ立つ掘削ドリルがまるでロケットの様に海の中に突っ込んで行った。

「遅かったか・・」

上層クラスの女は絶望に満ちた表情に変わった。それから間もなくしてその“教会”と呼ばれた海底油田掘削場は海に沈み海底火山が噴火した。


・・つづく。

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