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パンドラの匣

警告・New Age Beginningの続編であるために先にオリジナルを刮目せよ。そして本編に突入くれたし。

漆黒の闇の中をどれだけ進んだだろう。光は同じ思春期の少女とあいまみえながらようやく海底トンネルの入口が見えてきた。司令官だった有沢の時代からかれこれ何年経っただろうか。しかしそれは海流で崩れる事もなく歴然と残っていた。

「“嵐が丘”って知ってる?」

光はポツリと思春期の少女に聞いた。

「何かの曲?映画の名前?それとも漫画の・・」

「聞くんじゃなかった・・」

潜水艦はゆっくりと乗船ハッチに固定して定着した。

「さぁ、行くわよ」

光は思春期の少女に声を掛けた。

「私は此処で待っているわ。独りでいってらっしゃい」

思春期の少女は椅子に腰掛け背伸びをした。

「なんでよ!友達じゃないの!一緒に来てくれないの!」

光はわざと分かりきった事を張り上げた。

「私はねぇ。強い光がある所は苦手なのよ・・」

思春期の少女は腕の筋を伸ばしながら答えた。

「なるほど・・。それじゃ、独りで行ってくるから留守番お願いね」

光は彼女が幽霊だという事をすっかり忘れていた。光がハッチを開け中に入ると思った様に目が眩むほどの照明がトンネルの通路を照らし出していた。動力源はまだ活きている様だ。しかし物音は一切せず静まりかえったトンネルが長く続くだけだった。

「まだ残っているのかしら・・」

光は“それ”を求め歩き出した。



あの頃、同じ場所で有沢達は・・


「どうやら俺達と会えてよっぽど嬉しかったと見えてグッスリ寝ちまったなあ」

有沢はソファで横たわる司令官だという年配の男を見下ろしていた。

「裏政府のプログラムを無効化する特効薬ウイルスは手に入れた。しかし“11指令”がどういった計画なのか分からないままじゃ使いようがないな・・」

有沢は頭を捻っていた。

「それよりタイムマシンだ」

有沢は年配の男から受け取った特効薬ウイルスを隊員に渡し先に引き揚げるように支持した。


“タイムマシンはもう既に完成していたんだよ。裏政府と宇宙人が結託して作り上げたんだ。しかし安全の保証は出来ない。また本当に時間を移動できるのかも分からない。まだ還ってきた者は一人もいないんだ。それが今此処にある”


有沢は年配の男が言った雲を掴むような話が頭に引っ掛かっていた。そして来た道とは逆に進んでいった。


“有沢!そっちじゃない!”


突然夢の中の一場面がフラッシュバックで蘇る。有沢は目眩がして不意に座り込んだ。

「タイムマシンが本当なら山崎司令官と一緒にやり直せる」

有沢は初代司令官、山崎渉を思い出した。山崎渉は人間性豊かでユーモアがあり情熱と人への思いやりもある。単独行動も多いが適切な支持を出し隊員をまとめていた。しかし裏政府の罠に落ちて命を亡くした。有沢が常々信頼をしていた人物であった。

「夢は夢でしかないさ」

そう自分に言い聞かせ足早に急いだ。


“タイムマシンは真っ直ぐ進むトンネルが丁度折れる部分、そこにハッチがある。それを出ると海底洞窟に繋がっていてその洞窟の格納庫に置いてある。何故そんな物が此処にあるかって?それはまた話が長くなる・・。わしはもう寝るよ・・”


長い長いトンネルをどれだけ進んだのだろう。ようやく円曲になった部分に差し掛かった。そこに上の方向を指した矢印が書いてあり見上げると折りたたみ式の階段がぶら下がったハッチがあった。有沢はじんわりと汗を掻いた体と洗い呼吸のままハッチを開けゆっくりと開けた。そこには潮の匂いが広がった岩石が転がる岩肌の壁が覆い、足場も火山石で出来たような岸となっている空間だった。非常灯だろうか、小さな照明が所々にあるからペンライトは必要なさそうだ。ジャリジャリと音を立てる足の踏み場を確認しながら目の前の洞穴に進んでいく。中に入ると高い天井まで溶岩石が壁を覆いこの空間だけすっぽり穴を開けた感じだ。その中央に人一人が入れるくらいの縦長の箱が置かれていた。有沢は恐る恐る箱の扉を開けてみた。その中は四方一面が鏡張りになっており、その真中から伸びた台には水晶玉の様なものが置かれていた。

「パンドラの匣を開けてしまったかもしれない・・」

有沢は咄嗟に思った。

「まさかこれがタイムマシン・・?」

その空間には他に何がある訳でもない。また別の場所に行ける入り口らしき通路もない。有沢は用心深くその狭い箱の中に入っていった。

「ロッカーの中に入るとこんな感じなんだろうか・・」

扉は開けっ放しにしているが、その中は窮屈でその狭さに耐える有沢の歪んだ顔が四方から鏡に映されていた。その窮屈さに我慢できなくなり目の前の水晶玉らしきものに手を置き思わず力を入れた。するといきなり開けっ放しにしていた扉がバタンと閉まり閉じ込められてしまった。何が起こったのか考えている暇も与えず、その窮屈な箱の中が開放されるように広がっていくのを感じた。そして手を置いている水晶玉らしきものがゆっくりと光を帯び、真っ暗だった空間が見る見るうちに明るくなり光が降り注いでくる感触に襲われた。

「これでもう一度、山崎司令官に会えるのか・・」

有沢は薄れゆく意識の中で思った。 


そして現在いま、光はその“パンドラの匣”を前に扉を開けた。

そこにはミイラになった有沢が静かに眠っていた。


・・つづく

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