流れる星をつかまえたくて
おにくと申します。二作品目ですね- ̗̀ ( ˶'ᵕ'˶) ̖́-
最近の悩みはアイデアだけが溢れすぎてることです
あるあるですよね(。'-')(。,_,)ウンウン
そういえば最近感じたことですが、勿忘草って響きいいですよねぇ……
「私、死んじゃいました」
通学路を歩いていたとき。
彼女から放たれた言葉は僕の耳に入ったが、理解に時間がかかった。
「それってどういう……」
何かの冗談だと思った。嘘だと思った。
彼女は確かに僕の隣を歩き、言葉を発している。
死んでいるなら出来ないはずだった。
でも彼女をよくよく見てみると。
体が半透明だったり、少しだけ浮いていたり。
生きているならありえない姿だった。
まるで、幽霊のような。
「その体は……?」
「朝起きたらこんなことになってた」
「嘘……」
平然とした顔の彼女。
絶望した。底のない暗闇へ落ちていくような感覚。
僕は膝から崩れ落ちた。
アスファルトはひんやりとしている。
「せっかく……霧谷と付き合えたのに……」
そう、僕たちは付き合っている。
2日前、霧谷に告白された。
あまり面識はなかったが、彼女のまっすぐで強い心に僕は惚れた。
「これから霧谷のこと、もっと好きになろうと思ってたのに……」
「ちょっと恥ずかしいな、山本くん」
固く冷たいアスファルトに涙を流した。
涙が触れた部分が少し黒く染まる。
「もう、お別れだなんて……」
「待って待って。私まだいるから」
霧谷の声に僕は顔を上げた。
慌てた様子の霧谷。改めて見ても綺麗だ。
清楚なボブカット。可愛さと優しさをあわせ持った柔らかい目。ピンと伸びた背筋。
本当に綺麗だ。つい見惚れてしまう。
そんな彼女を失ってしまったと思うと、本当に自分の無力さが嫌いになる。
結局僕は、彼女と釣り合う人間ではなかったってことだ。
「えっとね。私は死んじゃったんだけど、山本くんにお願いがあってね」
「お願い?」
僕は不思議に思った。
今まで――まだ知り合って2日だが――彼女が僕に何かを頼むことはほとんどなかった。
どこか遠慮している感じがあった気がする。
「私、こんなんだからさ。いずれ消えちゃうと思うの。だから、私のやりたいことを叶えて欲しいんだ」
「もうすぐ消える……」
霧谷の言葉をオウム返しする。
ゆっくりと、冷静さが取り戻される。
「やっぱりもう救えないんだね……ごめん、霧谷……」
後悔を、してしまう。してしまうんだ。
もう、後悔は、したくなかったのに。
「山本くんが謝ることないよ。だって私は……いや、なんでもない」
暖かい春風が吹き、視界が桜色に染まる。
「とにかく、山本くんは最期まで私のお願いを叶え続けて欲しいの。ちょっと我儘かもだけど、残りわずかな時間を君と一緒に過ごしたいんだよ」
霧谷は僕の顔の前で人差し指をたて、首を傾げた。
「これもお願いだよ?」
「ずるいよ、霧谷……分かった。君のお願いを叶え続けるよ。もちろんできる範囲でだけど」
決意した。固く揺るがない決意を。
「……っ!うん!」
霧谷の明るい返事が宙に溶けた。
桜の花びらが舞う通学路には僕一人だけ。
「まず、満天の星空を見ながら打ち上げ花火がみたいな!」
「それはちょっと無理かな……」
「まずは、公園デート!」
僕たちは近場の公園に来ていた。
「覚えてる?ここで告白されたこと」
「覚えてるもなにも、つい2日前のことじゃん。忘れるわけないよ」
あの出来事は僕が体験したことの中で1、2を争うほどの衝撃だった。
ちょっとやそっとでは忘れない。
「そうだったね。もうずいぶん昔に思えてきちゃう」
確かにそうだ。
頭では分かっていてもあれが最近のこととは思えない。
放課後、呼び出されたと思ったら面識のない女の子から告白される。
こんなフィクションみたいな展開。
こんなラブコメみたいな展開。
誰だってそう思わざるを得ないだろう。
だから、なのか。だけど、なのか。
いつの間にか彼女に惚れて、承諾していた。
夢みたいだった。
「ねね、山本くん。押して?」
霧谷はふわふわとブランコへ向かっていた。
「霧谷、今すり抜けるでしょ」
「いいの!はやくー」
「分かった分かった。いくよ」
傍から見れば、1人でブランコを押している不審者だ。
でも僕の目には確かに霧谷が映っている。
霧谷は器用にブランコに乗ってるような動きをしている。
「あはは、楽しい!」
この笑顔のためなら不審者と思われてもいい。いや、やっぱりちょっと嫌かも。
心が弱い僕はとても軽いブランコを力強く押した。
「やっぱり、そんな記事無いよな……」
帰宅後、僕は霧谷を救う手がかりがないか調べている。
もちろん霊体化した人間を元に戻す方法なんてあるはずもなく、嘘くさい記事ばかりがヒットした。
一応試してみようかと思ったが、「対象のDNA」とか「対象の目玉」とかが必要らしい。
持ってるわけないだろ。怖いわ。とツッコミを入れたくなる。
やはり希望は持たない方が良いのかもしれない。
「かと言って、諦めるのもなぁ」
僕は朝日が昇るその時まで方法を探し続けた。
「次は、ショッピングデート!」
僕たちはこの辺りでは大きめのショッピングセンターに来ていた。
服屋とかゲームセンターとかでカップルっぽいことがしたいけど、すり抜けるから服選びも一緒にゲームも出来ない。
幽霊とデートって本当に難しい。
世界が幽霊を嫌っているみたいだ。
とりあえず何か記念になるものを買うことになった。
記憶にしっかり残るように。
いつでも思い出せるように。
今は偶然開催されていたフリーマーケットの品を見ている。
どれも手作り感満載の品物だ。
「フリマなんて初めて来たかも」
「うん、私も初めて」
田舎だからか人は少ない。
この静けさはきっと、都会ではお目にかかれないだろう。
霧谷と喋りやすいからちょうどよかった。
たださっきから少し、ほんの少しだけ、霧谷と距離を感じるのはどうしてだろう。
霧谷の言動が、まるで僕を避けてるみたいに思えてしょうがない。
「見て見て、山本くん!かわいい!」
そんな悩みは露知らず、霧谷は明るい笑顔をこちらに向けてくる。
星の形をしたキーホルダーを指さしていた。
「何これ?星……にしては色が暗いね」
「私たちにピッタリ!これにしよう」
「うっ……」
僕も霧谷も教室の隅が好きな陰の者だ。
多分それでピッタリと言ったのだろう。
ちょっと悲しくなってくる。
「これでいいの?明るい色もあるけど」
「うん。こっちの方がしっくり来る。これでお揃いだね」
霧谷は異なる色のキーホルダーを指さし、そう言った。
こちらも色は暗め。
「2つ買うの?霧谷は持てないけど」
「いいの。山本くんが持っててくれたら……」
まただ。
霧谷と距離を感じた。
気のせいだといいんだけれど。
「ほら、もっと見て回ろう?」
「……うん、そうだね」
その後も霧谷は楽しそうな、同時に消えてしまいそうな儚い表情で品物を眺めていた。
背筋に悪寒が走る。
この笑顔を、僕は覚えていられるだろうか。
「次はおうちデート!」
ということで霧谷の自宅に来ていた。
「いやいや、流石に早すぎる!」
「大丈夫だよ。お母さんいるし」
「そういう問題ではなくて!」
僕は今、心臓が破裂しそうなほど鼓動していた。
付き合ってまだ数日なのに、おうちデート&親御さんに挨拶は緊張する。
「大丈夫だって!ほら行くよ?」
霧谷は僕を手招きし、玄関のドアをすり抜けた。
僕は逃げられないことを悟り、大人しくドアを開いた。
「お母さーん。紹介したい人がいるのー」
さらに鼓動が速くなり、全身の筋肉がガチガチに固まっていた。
呼吸もしづらい。
「こっちゃん、紹介したい人ってその子?」
奥から霧谷の母らしき人が顔を出した。
優しそうな雰囲気でひとまず安心した。
「どうも。霧谷さんとお付き合いさせていただいてる、山本と申します」
「あら、どうもご丁寧に。こっちゃんの母です」
必死に練習したセリフ。
少し間違えたものの好印象だ。
霧谷の母親のおっとりとした口調は霧谷とはまったく似ていない。
だが、目や口元はそっくりだ。
「お義母さんも見えているのですね。失礼ですが、初めて見たときは驚かれなかったのですか?」
これは純粋な疑問だった。
実の娘が霊体化して、母親はどう思うのか。
驚くだけなのか。悲しくなるのか。逆に嬉しく思うのか。
「そうねぇ。ちょっとびっくりしたけど、そこまで驚かなかったわ。だって、こうなるって……」
「お母さんストップ!山本くん、私の部屋行こうか!」
「えっ?あぁ分かった……」
霧谷はあからさまに慌てた様子で話に割って入ってきた。
消化不良な僕は、聞き返せる雰囲気でもなく大人しく霧谷についていった。
「ここが私の部屋だよ」
「し、失礼します」
緊張がほぐれない僕は霧谷の部屋を見て唖然とした。
そこはまるで夜空のような、幻想的な空間だった。
つい見とれてしまう。
「綺麗……」
「この壁紙、子供の頃にお父さんが私のために貼ってくれたの。どうしても満天の星空が見たくて」
ショッピングの時も真っ先に星のキーホルダーを指さした。
霧谷は星とかが好きなのだろうか。
そういうことを僕はまだ知らない。
(そういえば……)
霧谷のことを、僕はよく知らない。
知ろうとしてない……?
霧谷には何か隠していることがある。
霧谷の突然の霊体化、距離を感じる霧谷の言動、霧谷の母親の言葉を遮った霧谷。
最近の動きでそう確信した。
でも僕は未だに聞き出せないでいる。
霧谷に嫌われてしまうのではないかと思ってしまう。
霧谷を失うことよりも怖がっている。そんな自分がいた。
「山本くん?大丈夫?」
考え込んでいた僕に霧谷が声をかけた。
とても心配そうな声色だった。
「あぁごめん、ちょっとボーッとしてた」
「そう……」
霧谷は気まずそうに周りをふよふよしている。
一言も交わさないまま時間は過ぎていった。
(これでいいのか?このまま霧谷を失ってもいいのか?)
心の僕がそう問いかける。
(今更だよ。これから何をやっても霧谷を救うことはできない。こうすべきなんだ。これが最善のはず、なんだ……)
反論される。だが、その語尾はとても弱い。
僕は今までもこうやって自分を抑え込んできた。
でも、
僕の心は、このままじゃダメだと本気で思っている。
それに反論をして行動に移さないのは、自分自身にも霧谷にも、失礼じゃないのか。
僕は意を決して、霧谷に質問した。
「霧谷さ、なんか隠してることあるじゃない?」
「……っ!あぁ……やっぱり気付いてるか」
霧谷はバツが悪そうな顔で視線を落としながら話した。
「私、実はね。ある病にかかってたの。数ヶ月前くらいから」
「病……?それってどんな……」
「"存在消滅病"ってお医者さんは言ってて、次々と私という存在が消えていくんだって。みんなの記憶からも、ね。体が消えたのもこの病のせいなの」
「存在……消滅病……?」
覚悟は、していたと思う。
ただ、僕の覚悟は足りなかった。
理解しようとしてもできない。
聞いたことない病名が告げられたこと。霧谷は確実に消えてしまうこと。
そしてなにより、こんな大切なことを霧谷がずっと隠していたこと。
僕の頭にはどうしようもない怒りがぐるぐると渦巻いている。
その怒りは最初は大切なことを話さなかった霧谷に向けたものか、まだ助けられると薄い希望を抱いていた僕自身に向けたものかは自分でも分からなかった。
しかし、すでに僕は霧谷にその怒りを向けてしまっていた。
「どうしてはやく教えてくれなかったんだ!そんな大切なこと……」
「言えるわけないじゃん。山本くんに心配させたくないもん」
「でも、それでも!」
「言えるわけないって言ってるでしょ!」
霧谷が、声を荒げた。そして涙を流した。
初めてだった。
「……ごめん」
僕はそう言ってから部屋を出ることしかできなかった。
僕は帰ろうとしていた。
これ以上、ここに居てはいけない気がした。
「雨か……」
玄関のドアを開けると、空は泣いていた。
ちょうどいい、と思った。
このまま雨に打たれれば頭も冷やせるし、自分を許せる気がする。
僕は屋根と空の境界を越えた。
頭からつま先までつーっと水滴が通る感覚。
僕の身体は少しずつ冷えていく。気持ちいい。
「あら?山本くん、もう帰っちゃうの?」
霧谷の母親がリビングから顔を出していた。
僕は玄関の方に向き直り、深々と頭を下げた。
「はい、ご迷惑をおかけしました。失礼します。」
「今は雨降ってるじゃない。今日は止みそうにないし、泊まっていって」
「ですが……」
「いいのよ、こっちゃんの初めての彼氏くんを雨の中帰らせるわけにはいかないでしょ。それにびしょびしょじゃない。ご飯はもう少しかかるから、先にお風呂どうぞ」
正直に言うともう帰りたくてしょうがない。
気まずいのだ。気まずくてしょうがない。
でも、霧谷の母親の強烈な圧によって僕は渋々残ることにした。
脱衣所で服を脱いでいた僕は、服が肌に張り付く感覚に少し不快感を覚えながら自分の顔を鏡越しに見ていた。
嬉しいでも、悲しいでもない。もしくはどちらともとれるような複雑な表情だった。
きっとお義母さんは僕のこの顔を見て、何かを察したのだろう。
「酷い顔だな」
僕は自嘲するように鼻で笑って。
「こんな顔、霧谷に見せたくないな……」
無理やり指で口角を吊り上げた。
「ははっ似合わねー」
僕は一人で何をしているのだろう。
ここで一度冷静になって、自分の身体が冷えてきていることに気付いた。
慌てて風呂場に入り、シャワーを浴びた。
さっきとは違い僕の身体は少しずつ温まっていく。気持ちいい。
開放的な感覚に浸った。そのとき、
「えーっと、山本くん……?」
「えっ、霧谷!?」
霧谷の声が背中越しに聞こえた。
反射的にタオルを手に取り、腰に巻いた。
でも振り向けない。合わせる顔がない。
「お母さんが山本くんはお風呂に入ってるって聞いて……ごめんね」
霧谷の声は少し震えている。
霧谷が弱気になっている。
あのいつでも活発で強気な彼女が、一等星のように光り輝いていた彼女が。
「私ね、消えるのがすごく怖いの。この世界から"私"を知ってる人がいなくなっちゃうんだよ。それが、すごく怖い……」
すすり泣きながら、霧谷は自分の内側をさらけ出していく。
「やだよ……クラスのみんなも、お母さんも、山本くんも、忘れちゃヤダよ……」
背中に霧谷が触れる感覚があった。
霊体は触れても触れられないはずなのに、確かに僕は霧谷の体温を感じた。
涙をぐっと堪え、僕は霧谷の方に体を向けた。
「僕の方こそ、ごめん。そうだよな、霧谷も怖いよな」
そうだ、僕は怖かったんだ。怖くて、信じたくなかったんだ。
「でも大丈夫だ。僕は霧谷を忘れたりなんかしない。いままでも、これからも、忘れられない思い出ばかりだもん」
確証なんてどこにもない。
でも、僕はもう霧谷のことが頭から離れない。
「だから忘れない。僕の夜空には霧谷との思い出がいつまでも光り輝いているよ。空を見上げればその光は見えるから」
「……ありがとう、山本くん」
僕は霧谷家でご飯を頂いた。そうめんだった。
少し季節外れだが、霧谷の大好物らしい。
「私も食べたいぃ!」
「こっちゃん、すり抜けちゃうでしょ?」
さっきまでの緊張感は流星のように過ぎ去り、またいつもの霧谷に戻っていた。
頬を膨らます霧谷。かわいい。
これも忘れられない思い出かな。
「ねぇ山本くん、食べ終わったら花火しにいかない?雨もちょうどあがったしさ」
霧谷の言う通り、さっきまで土砂降りだった雨はもうすっかり晴れ、少し欠けてる月が少し見えるようになっていた。
「そうだね、行こうか。近くの公園でやろう。」
「……っ!うん!」
「行ってらっしゃい、二人とも」
僕たちはショッピングデートのときに買っていた線香花火とバケツ、その他もろもろを持ってこの前の公園に来た。
公園のまんなか辺りは街灯が無く、星空が綺麗に見えそうだ。
僕はおとなしめの線香花火を手に取り、開けた場所で火を着けた。
花火は弱々しく光る。
「綺麗だね。ちょっと季節外れだし、まだ日落ちてないけど」
「ごめん。打ち上げ花火見せてやれなくて。」
「謝ることないよ。線香花火もいいじゃん。」
本当は打ち上げ花火を見せてやりたかった。
それが霧谷の"お願い"だったから。
「私、幸せだよ。その花火みたいに消えそうな私を、山本くんは助けようとしてくれた」
霧谷は笑みを浮かべる。
その笑顔からは悲しみを感じない。
「もうみんなに忘れられるかもだけど、山本くんは覚えてるって言ってくれたから」
線香花火の玉が地面に落ちた。
「もう何も、怖くないよ」
同時に僕の涙が地面に落ちた。
「泣かないでよ、山本くん」
「だって、霧谷。その体、もう……」
霧谷は今にも消えそうだ。
身体はさらに薄くなり、手足はもう見えない。
「いつか来る別れが今来ただけだよ」
その声は穏やかで、同時に切ない。
「だけど、まだやりたいことが……!」
僕はまだ霧谷と一緒にいたい。
僕はまだ覚悟を決められない、弱い人間だ。
霧谷は首を横に振り、僕を諭すように言葉を紡いだ。
「これで、最後のお願い。……私を、名前で呼んで」
僕の頭ではその瞬間、走馬灯のように霧谷との思い出が再生された。
確かに僕は一度も霧谷を苗字以外で呼んだことがなかった。
「そういうことか……」
僕はずっと霧谷に距離を感じていた。
でも違う。
ずっと距離をつくっていたのは僕の方だ。
それを霧谷は感じ取っていたのだろう。
最期にこんなことに気付くなんて、本当に僕は弱い人間だ。
それならここでくらい、強くならないと。
「……"琴葉"、大好きだ」
「……っ!私も大好き。ありがとう、さようなら。"流星"くん……」
突風が桜の花びらと何かを巻き上げた。
「あれ?僕、ここで何を……」
気付いたら僕は公園にいた。
「もう暗いし、とにかく帰ろ」
山吹色の日が山の奥へ落ちていく。
自分の部屋に帰った今でも、どうして公園で花火を持ちながら涙を流していたのか分からない。
季節外れで日も落ちきってなかったのに。
「今夜はこと座流星群の活動が極大となる日です。満月前で月が明るいですが雲はないため、運が良ければ目にすることができるでしょう」
「っ!」
なぜか、テレビから聞こえてきた言葉に体が反応した。
「流星群、か……」
好奇心か、使命感か。
出処の分からない何かが僕の足を動かした。
もう一度、あの明かりが少ない公園へ行った。
空を見上げてみると数多の光が四方八方に散らばっていくのが見えた。
「これが、こと座流星群……!」
そういえばここ数日で星に興味を持った。
どうしてだろうか。
何か大切な理由が、あった気がする。
「はは、ボケてんのかなぁ僕」
理由の分からない涙が僕の頬を濡らした。
僕は流星群に向かって手を伸ばしてみた。
そうすると、僕の手を暖かいなにかが包んでくれた。
僕もそれを包み返した。
「……よしっ」
――この温もりだけは絶対に忘れませんように。
おにくと申します
「流れる星をつかまえたくて」どうでしたか?
ちょうどこと座流星群の季節だったので投稿してみました!偶然です!
私的には、物語としてはとても好きな展開です(実際に起こったらたまったもんじゃありませんが)
こういうラブストーリーはまた書くと思います
次も読んでいただけると嬉しいです( ˶>ᴗ<˶)