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97. 冥界食

「はぁはぁ......くっ!」

「ダメ......だったの?」

「答えてライーナ。リーブルカイザーはどうなったの?」

「肉体の蘇生は何とか間に合いました......ですが、魂が...!!」

「タツキ様!どうぞ......お召し上がりください!」

「ええっと......これは?」

「?」

樹生の前には、文字通り"目"玉焼きを筆頭にグロテスクな見た目の何かが大量に置かれていた。

大きな鍋のなかには、どす黒いスープに臓物の様なものと、いかにも猛毒です!と主張するキノコがたっぷり。

ガラスの器には芋虫、蛙、ゲジゲジ......etc

グラスを軽く揺すると、赤ワインとは思えない粘度を持った液体が入っている。それらを前にしてリリアの表情に変化は無かった。つまり彼女達にとってこれは日常なのだろう。


部屋全体が妙に薄暗く、テーブルに置かれた蝋燭の日が不気味にユラユラと動いており、食堂全体にズモモモ.........と言う雰囲気が漂っていた。


「ぼ、僕はお腹いっぱいにゃから......外でゆっくりしてるにゃ。タツキ、いっぱい食べてくるにゃよ。」

メアはそう言うと、早足で食堂から出ていこうとする。

(逃げるつもりだな!!)

必死に心の中でメアを引き留めるが、ちらりとこっちを見たメアは


てへっ⭐


(なっ!あいつ!............後で覚えてろよ!!)

樹生は改めて、テーブルの上に並べられた料理達を見る。

(後なんて、残ってないかもな......)


「どうされました?お気に召しませんでしたか?」

「い、いやぁ......初めて見るものばかりで驚いたと言うか...」

「確かに!地上の方なら冥界食を知らなくて当然でしたね!」

サロメさんが冥界食について説明を始めた。

どうやら、冥界に住まう魔獣はこういった見た目の奴らが多いようである。ナイトメアキャットであるメアも冥界の魔獣なのだが......

「それにしても......なかなか攻めた、見た目ですね。クリエイティブといいますか...」

そこまで聞いていた、メフィスさんがハッとしたように樹生を見た。

「タツキ様、まずは一口食べてみてからでも良いと思いますよ?味は私たちが保証しますよ。」

サロメさんもコクコクと頷いており、リリアはどこか気恥ずかしそうに...そして期待した眼差しで樹生を見ていた。


(............俺のために作ってくれたんだよな。)

それに対し見た目が嫌だから食べないとは......あまりにも失礼だろう。


「頂きます。」

目の前の皿に盛られた、心臓のような肉の塊にナイフを入れる。

そして躊躇無く口に運ぶ。


「こ、これは......!」

カッと目を開き樹生は驚愕に固まる。




「ビーフシチュー......だと?」

ホロホロと口の中で溶けていく。ハツのような食感をイメージしていたが、全く違った。むしろ長時間面倒を見続けた上質なスジ肉。口に含めばジュワっと旨味が広がる。

「こいつは......」

次に食べたのは、隣に置いてあった真っ黒のパン。見た目は完全に焦がしたダークマター…...。だが口に含めば小麦の香りを強く感じる。ソースを食べるためのパンとして最適だろう。


「............」

もはや、何も考えずドロドロの血液のようなワインを飲む。驚いた!!てっきりかき混ぜたゼリーをイメージしていたが、そんなことはない。サラサラと飲みやすく渋み、酸味、ブドウの風味......全てにおいて最上のバランスであると言えるだろう。酒に詳しくない樹生でさえそう思えるのだがら。



「あらあら...」

「よほど、お腹が減っていたのでしょう。」

メフィスさんとサロメさんは樹生が食べ終わったお皿を下げ始めていた。

「お、美味しいですか?」

リリアがおずおずと聞いてきた。


「とっても美味しいよ!これはリリアが作ったのかい?」

「は、はい!サロメにも手伝ってもらいましたけど...」

「凄いなぁ......。リリア、後で俺に教えてくれないか?」

「ええ!?えっと......あぁ、うぅ.........はい。」

「本当に!?ありがとう!」

料理のレパートリーが増えるのは良いことだ。只でさえゲテモノも多そうな世界だしな。樹生はパクパクと食べる。芋虫見たいなやつも上手い。見た目で判断するのはやはり良くないと、痛感する樹生であった。


「.........やっぱり皆と食べないとな。」

「今は僕とリリアで我慢するにゃよ。」

「メア?戻ってきたの?」

「にゃにゃ。ちょっと視察に行ってきたにゃ。なかなか面白いところにゃね。」

メアはバッタ見たいな虫をムシャムシャと食べていた。

「虫、食べられるんだね。」

「何言ってるにゃ?タツキが美味しそうに食べてるの見てたから食べてるにゃよ。」

口の端にバッタの足がついている。マジで実家の猫だろこいつ。

「ははは、つまりメアは俺を毒味役にしたと?」

「...............そう言えば、リルを生き返らせられると言ってたにゃね?」

なんとも強引に話を変えたな......


「半分は終わりました...」

「半分?と言うと?」

リリアは一つの鳥籠を取り出す。中には青く輝く物がある。


「これはリーブルカイザー…...リル様の魂。あの時崩れかけた彼女の魂を確保しておいたものです。」


「アレス!何処に行くつもりじゃ!!」

「少し冥夢界へ行きます。彼に謝罪しなければ......」

「お前さんのせいでは無かろうて......。仕方ないのぉ。わしも付いていってやるわい。」

「......感謝します。ヘファイストス。」



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