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96. 冥府のお嬢様

「あの引きこもりが出てくるとは......」

「それ程事態は逼迫している......ということじゃの」

「リーブルカイザーの容態は?」

「ギリギリじゃのぉ。治癒神の力を持ってしても...むずかいじゃろうて...」


「し、死んだ?リルが?」

樹生の顔が真っ青になる。

「う、嘘にゃ......アイツはそんなすぐにやられるヤツじゃないにゃ!」

メアからも酷い焦りを感じる。


「事実です。樹生様とメア様の魂をこちらに引っ張った直後にリル様がお二人の肉体を飲み込み......」


「ま、待ってくれ......リルは何に殺されたんだ?」

リルが殺されるのはありえない。だって、ワダツミは死んだ。ならばリルと戦える存在はいない筈......

「まさか.........アイギスかにゃ?」

メアの言葉にメフィスは顔を伏せる。

「答えるにゃ。リルを殺したのはアイギスかにゃ?」



「おっしゃる通りです。」

聞きたくなかった。疑問ばかりが浮かぶ。


「な、なんでアイギスがリルを......こ、殺すんだ!?」

「タツキ......落ち着くにゃ...。」

絶望し膝をつき項垂れる、タツキの頭をポンポンと叩く。



「反転の前兆はありました。」

ことりと目の前にカップが置かれる。サロメさんからだった。

「マンドラゴラの葉を煎じたお茶です。落ち着きますよ。.........アイギス様はタツキ様に深い愛情を感じていたのでしょう。だからこそ......貴方の死を受け入れられなかった。そして、隠していた感情が爆発......反転してしまったのです。」

反転......そう言えばメアが前に言ってたな。

「メア......説明してくれ。」

「わかったにゃ。反転......要するにあり方が逆になっちゃうことにゃ。アイギスの場合は主人が望む姿に変わる......そしてあの時のアイギスはタツキの事を"守る"だったにゃね。ならその反対は?」


メアの言葉に樹生は押し黙る。守るの反対......


「殺す......ね。」

言葉を発っしたのはリリアであった。

「こうなってしまったのは…私の責任...」

樹生はハッとする。リリアがボロボロと涙を流しながらうつ向いていた。

「ごめんなさい...ごめんなさい......ただの傍観者でいればこんなことには......ごめんなさい...ごめんなさい...」

「お嬢様...」

「むぅ......」

サロメさんは寄り添い、メフィスさんは目をつむり唸っていた。2人共リリアの非は理解していた。だが......娘同然に接してきた2人からしたら、彼女の変わり用は嬉しかったのだろう。


「タツキ様......恥を承知でお願いがあります。」

メフィスさんが覚悟を決めたように樹生の目を真っ直ぐ見る。

「我々も力を貸します。やり直して頂けないでしょうか?」

その時、樹生も気づかない内に手が出ていた。初めて人を殴った感触に驚くが、それ以上に怒りが爆発していた。


「リルが死んだのは......仕方がないことだ。あいつも覚悟の上で俺達に力を貸してくれたんだ。それを......やり直せだと......?ふざけるな!!」

生まれてから16年、ここまで怒ったのは初めてであった。


「何をやり直せだ!時間でも戻せるのか!?出来るものならやってみろよ!!」

胸ぐらを掴み、詰め寄る。樹生とて理解していた。この怒りは決してメフィスさん達にぶつけて良いものではないと、理不尽な事を言っていることを分かっていた。それでも......リルの覚悟を無かったような発言は許せなかった。その気持ちを知ってか知らずか...メフィスさんはただ黙っていた。

「タ、タツキ......」

メアも樹生の怒声に萎縮していた。フウナさん達すらも見たこと無い樹生の本気の怒り。


「もう......リルは...アイツはいないんだ。契約を結んだ俺が良く分かる...」

胸ぐらを掴んでいた手を離し膝をつく。もはや涙すら流れないほど絶望していた。


「何も......出来ないのか...リルを守ることも...アイギスを救うことも......何も...」


ガックリと項垂れる樹生に誰も声をかけられずにいた。

だがリリアは意を決したように立ち上がる。


「タツキ様!!」


隣からの呼び声にゆっくりと振り向く。


「私は貴方がこの世界に来てからずっと......ずっと!

見ていました。最初は暇潰し程度でした......でも貴方は他の人達とは違った!!スキルは戦いの役に立たないし、初めから危機に片足突っ込んで......見ていてハラハラしました。それでも、タツキ様は誰よりも多くの人々を幸せにしています。だから............私も貴方と話してみたかった。それが、こんな結果を招くとは.........思いませんでした。だから!......お願いです、手伝わせてください。」


「リルを......生き返らせられるのか?」

「はい!」

樹生からの問いにリリアは力強く頷いた。


「詳しくは......落ち着いて...か...らぁ...」

樹生がジッとリリアを見つめていると徐々に赤くなっていく。

「大丈夫ですか?......さっきは怒鳴ってすみませんでした。メフィスさんも殴ってしまい申し訳ありません。貴方達に落ち度は無いと言うのに。」

「いえ、あれは私の言い方に問題がありました。こちらこそ軽率な発言をお許しください。」

樹生が頭を下げると同じようにメフィスさんも同じように頭を下げた。


「それで......リリア様!?大丈夫ですか?頭から湯気出てますよ!!」

「だ、大丈夫...」

「いやいや、漫画でしか見ませんよ!!ちょっと失礼します!」

おでこに手を当て熱を確認する。酷く熱い


「ぴゃっ!?  きゅーぅ......」

「ちょっ!ちょっと!!サロメさんー!」

「ハイハイ......」


「完全にトドメ指したにゃね」

「ははは.........お嬢様は"うぶ"ですから。」

樹生とリリアを見ながらメアとメフィスは苦笑していた。

「しかし、タツキ様は凄い方だ。なんと言うか.........切り換えが速いと言うか...」

「ちょっと違うにゃね。」

「と言いますと?」

メフィスの言葉をメアが否定する。

「あの娘の事を信じてるのにゃよ。」 

「それは......なんとも...」

メフィスはぎょっとしたように目を見開く。

「それがタツキの凄いところで、同時に怖い所でもあるんにゃけどね。最近タツキは相手の心が覗けるにゃかと疑ってるにゃ。」

にゃははと楽しそうに笑うメアにメフィスは感心の眼差しを送っていた。

(彼こそが真なる英雄............なるほど、ご主人の予言は間違いでは無かったと...)


「タ、タツキ様!お腹......減ってないですか?」

「うん?お腹かぁ......減ってると言えば減ってるけど。状況がなぁ...」

リリアに聞かれ、お腹を軽くさする。早くリルとアイギスを救いに行きたい樹生からするとご飯を食べてる余裕が無いのだが......



「タツキ様......リリア、頑張ったんです。食べてくれますか?」

うるうる......



「よし!メア、食べるぞ!腹が減っては戦は出来ぬだよ!」

「にゃはは......それもそうにゃね...。」

どこか歯切れの悪いメアを不思議に思いつつも、樹生は未知の料理に期待を膨らませるのだった。


目玉焼きって...グロいよな。親子丼とか踊り食いとか、人の業を詰め込みまくって生まれたって言うか......

とにかくさ!そう言うのって名称だけですまして欲しい部分があると言うか、踊り食いなんて特にさ!だからさ!!名称だけですましてほしかったって思ってたんだよぉぉぉ!!



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