94. ワダツミ討伐作戦3
「始まりますね。」
「うむ…...小僧め、囮になるとはおもいきったのぉ」
「ですが采配は問題ないかと。あの状況ではあれが最善でしょう。」
「そうじゃな。ワダツミは島にはよってこないようじゃし、移動式砲台は良い選択かのぉ。確かに火力は申し分ないじゃろうて。じゃが大事な事を忘れとらんかのぉ?」
樹生は水上バイクのエンジンを始動させる。
「メア、準備は良い?」
「もちろんだにゃ!魔力も十分。今ならワダツミも爆睡からのDie!ヾ(´∀`*)ノだにゃ!」
「それは心強いな!」
装備を確認してアイギス達に振り返る。
「それじゃあ、作戦通りにね。必ず生きて帰るよ!」
「もちろん!タッツー頑張ってね!!」
「マスター......ご武運を。」
親指をグッと立てる
「メア、絶対に落ちるなよ!!」
「任せるにゃ!いざ出撃にゃ!」
メアの掛け声にエンジンをフルスロットル。勢い良く水上バイクは海洋に向かって発進する。
「さあ、私達も行くわよ!!」
「はい。奴の脳天......必ずぶち抜いて見せます!!」
リルはアイギスを背負いながら海に潜っていった。きたるチャンスに備えて真っ暗海の底へと消えていく。
「にゃにゃ!見えてきたにゃ!」
「特徴的な背鰭......ワダツミか!」
ザバァァァンとワダツミが姿を現す。大きく振り上げた右手が無造作に振り落とされ、巨大な波が発生し樹生達を飲み込まんと襲いかかる。
「メア、捕まってろ!」
「す、凄い速度にゃ!」
そのまま直進。津波に真っ正直から突撃する。
「うぉぉぉぉ!!」
「アイギス!信じてるにゃよ!」
メアが叫んだ瞬間、後方から高速で武器が飛来する。
ズバァァン!!と轟音を上げ津波の真ん中...樹生達の正面に風穴を開ける。
「よし!行くぞ!!」
さらに加速させ穴が塞がる前に飛び込む。
「射程圏内にゃ......スリプルロアー!」
「!!!!!」
魔力マシマシのメアから放たれる睡眠魔法を受けワダツミはぐらついていた。
「よし、その調子だ。」
樹生はワダツミの周りをぐるぐると周りながら、ヘイトを一身に受ける。メアはワダツミの思考や行動を制限させる...いわば嫌がらせだがそれがなければ樹生達は囮として機能しない。そしてそれが成されれば......
「ガァァァァァァァア!!」
大口を開けながらワダツミは痛みに叫ぶ。
かなり離れた後方からアイギスを乗せたリルが高速で動きながら体中に武器を撃ち込み続ける。しかも、撃ち込む武器はただの武器ではない。
「これは......コロジョンソードですか。いったいどこでこんな危険な武器をマスターは拾ってきたのですか?」
「考えるのは後だよー!ほらほら!来たよ!!」
バシャバシャと水切り音を立てながらソードフィッシュの群れがリルとアイギスに襲いかかる。
「ワダツミの眷属ですか!!厄介な…」
「ここは私に任せて!アイちゃんはワダツミに攻撃を続けて!!喰らえ!!」
リルの周りに無数の水球が浮かび上がると音速でソードフィッシュの群れに当たる。
「きゃははははは!!近づけると思うなよー!」
バスバスバスと撃ち込まれる様はまるでガトリング砲であった。
「あっ!アイちゃん、一回潜るよ!」
「分かりました!!」
アイギスは武装を解除するとリルが急速潜航を開始する。瞬間さっきまで居た場所にワダツミからビームが撃ち込まれ水蒸気爆発を起こしていた。
「マスター達は無事でしょうか?」
「大丈夫そうだよ…...って言うかさメアチーってヤバいね!精霊とか魚人とかバンバン眠らせてるじゃん!」
「こちらに攻撃があまり来ないのは、一応うまく行っていると言う事でしょう。」
「そうだね。よーし!再攻撃を始めるよ!!」
リルは浮上しアイギスと共にワダツミを攻撃する。一方樹生達はというと......
「よっと!あっぶねぇ...」
「物凄い猛攻にゃね!!右も左も上も下も敵だらけにゃ!!!」
「問題ない!このまま続けるよ!!」
「それにしてもその"指輪"凄いにゃね。」
樹生の人差し指にはめられた指輪。名を獣の指輪。
ドラゴンゾンビから出てきてシルエルが浄化したあの指輪であった。実はシリラさんに鑑定をお願いした結果何重にも封印が施されており、その封印も厳重に隠蔽されておりシルエルでさえも気づけないだろうとの事。効果は付近に存在する敵対生物のヘイトを一身に受けると言うものだった。そりゃあ封印もされるだろうと思いこっそり保管庫の奥底へと押し込んでいたものだった。そんな危険物がこうも役に立つとは......。
そして樹生の目には勝利への筋道が見えていた。いつの間にか手に入れていたプロ顔負けの操舵技術。メアの広範囲魔法による嫌がらせ。獣の指輪...これらを持ってして樹生とメアは見事に囮としての役割を果たしていた。
「グルァァァァァァ!!」
ワダツミも痛みと攻撃が当たらない苛立ち、思考はまとまらず、何故か見てると殺したくなる感情から何度も強力なビームを放つが樹生達には当たらない。
ブスッ
「うん?不味いな…...メア飛ぶぞ!!」
「にゃにゃ!」
ソードフィッシュが燃料タンクに突き刺さった。こうなってしまっては捨てるしかない。だか問題はない。
「購入!!」
ポッチと押して展開!
「こっちの在庫は無限だぞ!」
エンジンを吹かして、爆速ワダツミから距離をとる。ワダツミは完全に樹生に狙いを定めたようで自身を貫く攻撃を無視していた。
「ガァァァァァァァァ!!」
「よっと!」
ワダツミが大口を開けて突っ込んでくるが、樹生は見事な乗りこなしで回避する。
「タツキ本当に凄いにゃ!どうやって......操縦してるにゃ!?」
「分かんないけど、なんか!感覚!で!」
まるでパルクールのように縦横無尽に走り回る。もはや波は大荒れ。左右からとてつもない高さの波が襲いかかるが今の樹生からすれば、障害物にすらならない。
「よし!このまま釘ずけにするぞ!」
「にゃにゃ!!スリプルロアー!再大出力にゃ!」
メアがワダツミの顔面目掛けて再大出力でぶつける。流石のワダツミもナイトメアキャットの本気を受けて一瞬意識を飛ばす。
「今だ!アイギス―!」
「見えています...」
バシュッ
打ち出される三ツ又の槍。それは真っ直ぐ吸い込まれるようにワダツミの脳天をぶち抜いた。咆哮や絶叫を上げることもなくその巨体は水に伏せた。そして...
ドガアアアアアアン!!
いきなりの大爆発。樹生は......光に飲み込まれてしまった。
そして目を開けた先に居たのは...
「始めましてかしら?異世界人...」
背中からコウモリの羽頭からは渦を巻くヤギの角を生やした、美少女がいた。
「お嬢様決まってますね!」
「そうですかね......俺にはカタカタ震えてる気が...」
「何を言っているのですか!あんなに堂々と......サロメ感激です!!」




