87 . 気づけば距離がちぢっまってる仲間たち
「あー...ダメだ。完全に見失った。」
「タツキ君は次の階層に進んだのよね。ならば、問題は無いわね。」
「そうね。あのまま下に戻ってたら死んでるし......何より戻れないんだけどね。」
「あー......癒される...」
「ポカポカにゃー>ω<」
「暖かいですねぇー...」
お昼を食べた後、浜辺にパサソルを刺して、その下で寝転がっていた。樹生も半袖半ズボンのラフな格好に着替えサングラスをかけていた。
「これからどうしようか。」
「まずは、扉を探す事が第一目標でしょう。しかし...」
アイギスは長く続く地平線を眺めている。
「他の島1つ見えないにゃね。もしかして、扉は海の中かにゃ?」
メアは波をペシペシと叩きながら呟く。正直ゾッとする。
「仮に扉が海の中だったとしましょう。マスターは潜水出来ますか?」
「無理だね。ちょっとだけ潜って見つけられる程簡単じゃないだろうしね。」
「そうですよね......」
また、話は最初に戻ってしまう。
「私は島を散策してきます。何か見落としがあるかもしれません。」
「わかった。アイギス、気をつけてね。」
島を散策にアイギスは向かった。
「仮に島を見つけられたとしてにゃ、そこまでの移動はどうするにゃ?」
「それは、何とかなると思うよ。」
寝転がる樹生の腹の上にピョンとメアが乗ってくる。
「何か考えがあるのかにゃ?もしかして、アイギスに捕まって...」
「いくらなんでも無謀すぎるよ......」
途中で俺がくたばるわ。
「そこは心配しなくて大丈夫だよ。それよりも...ここに来てどれくらいたつか分かる?」
「ん~...2時間くらいかにゃ?」
「そうだよな......なんか違和感があるんだよな~」
そんな事を考えながらボーッとしているとアイギスがやって来た。
「マスター、見ていただきたいものが。」
どうやら何かを見つけた様子。アイギスに付いていくと、樹生が飛び下りた崖に付いた。
「この崖に文字が掘ってありました。内容は...」
聡明なるもの 頂きに登り 太陽が眺める先を見よ
「と書いてありました。」
「うーん...わからん!!」
「簡単に言うと、高いとこに行って回りを見渡せって事かにゃ?」
「なら、ここが一番高いよ?」
そう、樹生達は島の崖上に立っていた。なのに何も変化が無い。
「謎解きかな?苦手なんだよな......」
崖上から少し下に生えているヤシの木へ向かう。
(違和感の正体をまずは探らないとな。)
シャシャカとスプレー缶をふるとヤシの木の影に沿って吹き掛けていく。
「とりあえず、こんなもんか。」
樹生はテントを張り、電子時計を設置すると時間は15時に設定する。
「どうしたにゃ?......にゃにゃ!涼しいにゃ!」
テントに入ってきたメアがそう言う。
「家庭用の冷風機を置いたからね。涼しいでしょ?」
「快適にゃ~...アイギスも呼んでくるにゃね。」
「ありがとうね............」
目をつぶり横になった樹生がスースーと寝息を立てる。
その様子をメアはじっと見ていた。
「メア........マスターは...」
「大丈夫にゃ。疲労がたまってるにゃね。その点ここは言い場所にゃ。暖かくて今は脅威がいないにゃ。」
「マスターは何故このような場所に?」
「そうかにゃ......アイギスはずっと眠ってたんにゃね。」
「はい。暫くの間あの宝剣の封印をしていましたから。」
「んにゃ?封印?どう言うことにゃ?」
「宝剣レオガー......マスターは確かそう呼んでいましたね。」
アイギスは一呼吸おくと、
「あれの本当の名称は血呪剣レオガー...あのまま使い続けていれば、いずれマスターの命を蝕む邪剣になるところでしたよ。本来1滴でも血を浴びせれば、精神を支配されるところでしたが...」
「本当かにゃ!?相変わらず運に全振りにゃね…」
「それでここに来た経緯を聞いても?」
「んにゃ...それじゃあ、説明するにゃね。」
暫く後...
「なるほど...そんな経緯が...」
どうやらある程度の事情はわかったようだ。
「それじゃあ、次はこっちが聞く番にゃ!」
メアはアイギスをじっと見つめる。
「にゃんで今になって現れたにゃ?それに、その忠誠心は何処からくるにゃ?」
「.....................」
「初めて、マスターを認識したのは宝物庫でした。あの時は認識していただけませんでした。その後は彼の元で、暫く観察していました。聖剣オメガプロキシモ、神布レーヴェに始まりエンシェントウルフ、風の精霊、フェニックス...正直恐怖でした。これ程の人物がもし悪に落ちたならば...」
小さくカタカタとアイギスは震えていた。最強の盾ともあろう存在がこうも小さくなるとは。
「しかし、杞憂でした。マスターは良い心を持った方だとすぐ分かりました。そして同時にオメガプロキシモを羨ましいと思いました。あれ程までに、大事に扱われていることが......本当に羨ましたかった。私は...大事に扱われたことが無いですから。」
アイギスは自信の過去を思い出す。
その性質を利用され、無理やり巨大な結界のエネルギー原にされ、使い物にならなくなったら二束三文で売り払われた。最終的に猛威を奮っていたレオガーを押さえ込むために使われ、気づけばあの宝物庫に入れられていた。
「だから......彼の危機を守れた時、彼に使って貰っとき...本当に幸せだった。思い出せんです。私の存在意義を...」
メアは黙って聞いていた。
「宝珠アイギス......本来のあり方は、持ち主の願ったか形に変化する神器です。しかし、これからは...」
そっと樹生に寄り掛かる。
「彼を守る盾となりましょう。マスターは絶対に傷付けさせません。」
「そうにゃね...僕も、マスターの夢くらい全力で守り抜くにゃよ。」
1つの神器と1匹の猫は樹生に寄り添い、静かに寝息をたてるのだった。
「二人とも?何やってるの?」
「にゃにゃ!樹生遊ぼうにゃ~!」
「マスター、必ずお守りします!」
「こんな時にどうしたの!?あっ?これ夢だな!そうともなれば......いっぱい遊ぶか!」




