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81. 地獄を出た後に地獄がコンチニハした件

「ど、ど、ど、どうしよう!?」

「お、お、落ち着きなさい!もう1度転移を......」

「「あっ...見失った...」」



「うわぁぁぁぁぁあ!!.........って、ここは?」

「にゃ......苦しいにゃ...」

「ごめん!大丈夫...?」 

タツキはメアをそっと地面に立たせる。どうやら恐怖のあまり抱きしめる力が強くなっていたようだ。

「僕は物理的な強さは皆無にゃ。本当にその辺の猫と大差ないにゃよ。」

「そうだったんだね......気を付けるよ。」

ガクッと肩を落とす樹生を見てメアは訂正する。

「そんな気を落とさないでにゃ。タツキのお陰で助かったにゃね。」

そう言いながらピョンと樹生の頭に乗ってきた。

「スンスン......別の臭いがするにゃね。」

「あはは...クウがよく乗ってたからね。」

今では顔面に飛び付いてくることのが多いな。頭の上はどちらかと言うとシルエルだろうか。

「狼と精霊、鳥?じゃないにゃね。神鳥......かにゃ?タツキは何者にゃ?」

「俺は普通の冒険者で異世界人だよ。」

「そうなのかにゃ。異世界人......異世界人?...異世界人!?」

ばっ!と肩に移るとメアはまじまじと樹生を見る。

「やっと見つけたにゃ。」

メアの目がまんまるに開く。獲物を見る目である。

「ど、どうしたの?」

「......にゃにゃ、説明するにゃ。でもその前に歩こうにゃ。」

「確かにね。よし!行くか!」

タツキは神布レーヴェを首に巻き歩く。今の樹生にはフウナさんとアーサー、シルエルの加護がついているが、効果が消えるのは時間の問題であった。まぁ樹生は加護の事は忘れているためあっても無くてもそこまで差は無いが......

「とりあえず、ここがどういう場所か確認しないと...」


「伏せるにゃ!!」

「うわ!な、なんだ!」

巨大な影が樹生の頭上を通過した。見上げると巨大な鷲が悠々と飛んでいた。しかも巨大な牛を掴んでいた。

「な、なんだあのサイズ...」

「す、すごいにゃ...」

2人揃って呆然としていたが、はっとすると急いで物陰に身を隠す。

「アレがこの辺の主なのかな?」

「わからなにゃいけど、可能性としては十分に高いと思うにゃ。」

バサッバサッと飛んで行くのを確認してから物陰から出た。

「あんなのが沢山いるのか...」

「心配だにゃ...」

樹生とメア、2人揃って小心者であったのだ。


「早く進もうか。ここには昼夜の概念はあるの?」

「どうかにゃ...ダンジョンである以上何が起こるかわからないにゃ。」

「そうか…なら、まずは安全の確保と腹ごしらえだな。」

「んにゃ!あの細長いのかにゃ!?」

「あれはおやつだね。メアは肉とか野菜は食べる?」

歩きながら会話する。

「僕は雑食にゃ。肉も野菜も魂も...何でも食べるにゃよ。」

「魂......って美味しいの?」

純粋な疑問。他のファンタジーでもよく魂を食べる敵がいるが、上手いのだろうか?

「味はしないにゃ。ただ魔力補給のために食べるにゃ。特に僕は燃費が悪いにゃからね。」

「ふーん.........あっ!あの洞穴なら。」


樹生は小走りで洞穴に向かう。森の中でぽっかりと空いたそれは簡易的な拠点にするにはちょうどよかった。

「中に魔物が居るかもしれないから......」

「僕に任せるにゃ!......"眠れ 眠れ 儚き夢見の 羊の元で"   スリープホール」

メアがそう唱えるとドサッと何かが倒れる音がした。やはり中に何か居たようで確認に行く。

「それは間道具かにゃ?」

「これ?これは懐中電灯っていう物だよ。動力源は電気だね。」

そう言いながら進むととんでもないものがそこにはいた。

「こ、こいつは......」

「......バジリスクにゃ。」

寝息を立てていたのは巨大なバジリスクであった。頭の上には王冠が乗っていた。

「まずい...メア、直ぐに離れよう。」

樹生はもはやへっぴり腰になっており、一刻も早くこの場から去りたかった。

「そう言えば樹生には僕の戦いかたを見せて無かったにゃね。」

メアはピョンと降りるとバジリスクの頭の上に乗った。

「ちょっ!メア!戻ってきて!!」

樹生はできる限りの小声で叫ぶ。

「まぁ見ててにゃ......"%@^@$^@&&$!/_"」

また表現出来ない言語でメアが呟く。瞬間バジリスクの体から力が抜けていくのがわかる。口は半開きになり、その瞳には生気が無かった。

「終わったにゃよ。」

トコトコと樹生の元へ戻ってくるや肩にピョンと飛び乗る。

「な、何をしたの…...死んでる。」

触るとバジリスクが収納可能な事がわかる。いったい何がどうなってるんだ?

「これが僕の戦いかたにゃ。条件が色々とあるんにゃけど、眠っている敵の魂を強制的に抜き取るんだにゃ。」

前足をペロペロと舐めながらとんでもない事を言うメア。魂を強制的に抜くって…...いわゆる即死魔法ってやつか?

「聞きたいことは山程あるけどとりあえず、拠点を設営しちゃおうか…」

「賛成にゃ!ちなみに魚が食べたいにゃ!」

「魚か。了解!」

樹生はそう言うとあることをメアに訪ねた。

「入り口に魔除けの結界みたいなのは張れる?」

「魔除けは無理にゃね。そしたら、僕たち以外が入り口を潜ったら強制的に眠る結界を張っておくにゃ!」

「え?あ、う、うん!ありがとうね。」

お礼を言われたメアは尻尾を振りながら上機嫌で入り口へ向かった。樹生はかなりエグい事をしているメアに引きつつも頼もしさを感じていた。

(俺も助けてもらってばっかりじゃな。旨いご飯いっぱい作って......)

「にゃぁぁぁぁぁ!!」

「メア!!」

入り口に走ると、メアがオークに捕まっていた。苦しそうに踠くメアを見ながらオークはニタニタ笑っていた。


「この野郎!メアを...離せ!」

樹生は保管庫から剣を取り出すと、オークの腕を切り落とした。

「グガァァァァァ!!」

傷口を押さえのたうち回るオークは放っておき、メアの元へ駆けつける。

「大丈夫!?」

「た、助かったにゃぁぁ!!」

涙をポロポロと流しながらメアは飛び付いてきた。

「ガァァァァァァ!!」

振り返ると腕を切られた痛みか、怒りか......オークが半狂乱になって突っ込んできた。

「うぉぉぉぉ!!」

樹生はメアを抱えながら洞穴にダイブする。オークの腕が樹生の足を掴む瞬間

「グ......ギギィ」

呻き声をあげながら昏倒した。

「はぁはぁ......メア怪我は無い?」

「大丈夫にゃ。本当に助かったにゃ...」

メアの心臓がバクバクと動いているのが分かる。

「さて......」

樹生は立ち上がるとオークの首に剣を突き刺した。

「あぁぁぁ......何とかなった......」

普段だったらフウナさん達が何とかしてくれていたが...今は樹生とメアしか居ないのだ。ならば…...やるしかないんだ。

「タツキこそ大丈夫かにゃ?手が震えてるにゃよ。」

「ははは......こりゃキシーにも心配掛けるわな。」

このままじゃ駄目だといつも思っていた。だけど結局怖くていつも後に下がってばかり......

(ある意味これは試練なのかもな。)


「メア、絶対生きてここを出るぞ!」

「当たり前にゃ!」

「なら、ご飯にするぞ。美味しいのいっぱい作るから楽しみにな!」

「んにゃ!」

オークをしまい立ち上がる。樹生の目には悲壮感は無く生き残ると言う強い思いで溢れていた。


「一旦辺りを綺麗にしちゃおうか。」

この洞穴自体バジリスクが入れるほど広く、窮屈はしない。地面にランタンをいくつか置き、簡易ベットを設置。

「うにゃ?これは......」

メアはベットに飛び乗るとフミフミ......いつの間にか丸まっていた。

「気に入ったのかな?」

タツキは保管庫から魚......いや怪魚だなこいつは。を取り出す。3匹いるが、食べられるのは一匹だけ。理由は他の2匹は鱗が強すぎて捌けないからだ。鱗取りも試したが、鱗取りが根本から折れたのを見た時は笑うしかなかった。

「とりあえず、このでけェニジマス見たいのは旨いし捌きやすいからな。......早くカンドラに行きたかったよ。」

ご飯を作りながらフウナさん達の事を考えていた。


(あっちにはリーシェルさんもいるし、とんでもない行動はしない......と思う。多分だけど先にカンドラに向かう筈だから、ずっとあの洞窟に居るってことは無い筈。このダンジョンを出たら......何処に出るんだろうか?)

トントントンと野菜を切りながら樹生は考える。そもそもここを出てもあの洞窟に戻れるとは限らない...

「あっ!仮に辺な場所に出てもカンドラに向かえばいいか。フウナさん達が居なくても街の人に聞けば情報なんて幾らでも集まるか。皆目立つし。」

鍋に切った野菜とキノコ、ニジマス、味噌や醤油等の調味料を入れて蒸し焼きにする。同時にニジマスのホイル焼きも作っていく。こっちはバターとコンソメ、ワサビマヨネーズで食べる。

「フウナさん達の心配はしなくても大丈夫だな。よしっ!完成!メア、ご飯だよ。」

「待ってたにゃ!さっきからずっといい匂いがしてたから楽しみにゃ!!」

普段はガヤガヤと騒がしい食事だが今は2人静かな食事で少しだけ寂しさが......

「にゃにゃにゃ!?ニャンだこれは!凄く美味しいにゃ!!」

「......ありがとう。」

そんなことはなく、楽しい食卓だった。


「タツキ......大丈夫かしら......」

「貴方がそこまで落ち込むのも珍しいわね。」

「リヴィエは心配じゃないの?」

「私?心配と言えば心配だけど....タツキ君だからね♪」

「.........それもそうね。」

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