78 新たなクエストは頭痛の原因?
「よし!成功!」
「ちょっと!乱暴過ぎよ。頭でも打ったらどうするつもり!?」
「大丈夫大丈夫。加護もついてるし、タツキ君の周りには強い子達がいるんだから......」
「うぅぅ......ここは......」
目を開くと真っ白な空間にポツンと一人......頭が狂いそうになると思うが案外居心地は良い。それにしても...
「神様…...もうちょっと優しくしてくれませんかね?」
「何言ってるのよ。あんたが頭打ったくらいで死ぬと思う?」
腕を腰に当て見下ろすのは風の女神ウェンディ様。
「久し振りね。異世界はどうかしら?」
パチンと指を鳴らすと真っ白だった空間に風景が現れる。
「座って。立ち話もなんでしょう?」
目の前には真っ白なテーブルに椅子。テーブルの上には何もなかった。
「これじゃあ寂しいですね。.........どうぞ。」
樹生はホワイトマーケットを開くとお高めなクッキーやチョコレートを購入して、保管庫に入れておいた紅茶をカップに入れてテーブルに置く。するとウェンディ様は目を輝かせてパクパクと食べ始めていた。ちなみに樹生は紅茶が嫌いなためコーヒーを飲んでいた。紅茶を飲むと車酔いしたような気分になってしまうのだ。わかる人はいるだろうか?
「う~ん......美味しい!!」
パクパクと食べ飲み食べ飲み......口の周りには食べかすが。......マジで女神なのか?
「えっと......今日はウェンディ様だけなんですか?」
「リヴィエもいるわよ。ほら......」
ウェンディ様が指を指す方を見ると木陰に隠れてこちらを見るリヴィエ様。
「はぁ......早く来なさい!」
ウェンディ様がそう言うとリヴィエ様が何故か俺を警戒しながら来る
「こ、こんにちは......」
「リヴィエ様、お久しぶりです。リヴィエ様から頂いた神器とても役にたってます。」
樹生が笑顔でそう言うとリヴィエ様の顔から不安が消えた。
「ええ、ええ!それは本当に良かったわ!」
ルンルンにウェンディ様の隣に座るとお菓子を手に取り食べていた。似たものである。
「ええっと......今回呼ばれた理由って言うのは...」
樹生が困惑しながら聞くと2人ははっとして食べる手を止めて真剣な眼差しで樹生を見る。この時点では大したことでは無いのでは?と思っていた。
「単刀直入に言うと貴方の異常性について説明が必要だと思ってね。」
「俺の異常性ですか?」
ウェンディ様がコクリと頷くと話し始める。
「まずは職業とスキルについて話さないとね。あんた
アンギス帝国で何も聞かずに飛び出してきたでしょう?」
確かに......考えてみればしっかり話を聞いたことがないな。
「あんたの職業は探求者だったわね。この職業自体かなり珍しいのよ。それこそ勇者や聖女並みにね......」
「加えて貴方は異世界人ですからね。かなりの補正が加えられていますから。」
2人の言葉に樹生は言葉を失っていた。自分の職業は役に立たないと思っていたからである。
「貴方は様々な魔獣を従えていますが、職業の影響が大きいかと。」
リヴィエ様がそう言う。
「まぁ端的に言っちゃうといっぱい旅して色んな物を体験しなさい!っていう職業ね。だからその補助として全属性魔法、無詠唱、多重起動が使えるのよ。ただほんとに補助程度よ…...過信すると痛い目みるからね。」
ウェンディ様に釘を刺される。
「それは大丈夫だと思いますよ......俺ビビりですからね。」
「それもそうね......でも油断大敵だからね!」
あ......否定してくれないんですね。
「......わかりました。お二人から頂いた神器もありますし問題は無いと思いますが、油断せず楽しんで行きます!」
樹生の言葉に2人は嬉しそうに微笑むがすぐに表情が曇ってしまう。
「実は......今からする話が本題というか…...」
ウェンディ様が言いづらそうにしている。何かあったのだろうか?そう考えているとリヴィエ様がポツポツと話始める。
「私が話ましょう。タツキ君は一緒に来た召喚者達を覚えていますか?」
「彼らですか?そこまで鮮明には覚えていませんが...」
事実高校生が数人と大人や大学生が数十人程だったか?それがどうしたのだろうか。
「実は今世界中で起こってる事件に…...彼らが関与しているの。」
「.........悪い方にですか?」
「「コクッ」」
「.........闇落ちしてるじゃねぇかぁぁ!!」
頭を抱える樹生。実は幾つか樹生自信も巻き込まれていたのだが......今となっては過ぎた話である。
「まさか......その尻拭いをしろと?」
樹生の言葉に女神様達は顔を伏せる。
「そうね...........貴方に頼みたいのは、めちゃくちゃになった場所や人々の修復ね。」
そう言われ樹生はあの村の事を思い出した。ドラゴンゾンビの影響で瘴気に蝕まれ全滅仕掛けていた村。風の聖剣オメガプロキシモことキシーのお陰で浄化が出来たが......あれと同じもしくはそれ以上か。
「タツキ君には危険なお願いをしていることは重々承知しています。しかし......」
ウェンディ様とリヴィエ様は苦しそうに顔を伏せてしまった。樹生としても自分にできる事なら手を貸してあげたいと思う。しかし相手はあのチート集団である。幾らフウナさん達が強くても......負けてしまうかもしれない。
「まったく.........私が入るのに弱気になってどうするのよ!」
樹生が頭を抱えていると、キシーが飛び出す。
「勇者が何よ!?所詮雑魚が強い剣持っただけでしょう?あんたと同じよ、ヘッポコマスター!!」
「俺と同じ......」
「そうよ、それにあんたには最強の従魔達が入るでしょう?もっと信じてあげなさい!」
「...............キシー」
「ちょっ!何よ......」
樹生はギュッとキシーを抱きしめる。説教なんて久しぶりに受けた。
「ありがとうキシー。勇者って聞いて弱気になってたよ。」
「ふん!覚悟が決まったらさっさと行くわよ。」
樹生はキシーを腰に刺すと女神様達に向き直るなおると覚悟を決める。
「わかりました。ただ、俺は従魔達とこの世界を旅して回ろうと決めています。その次いでて良ければ手を貸します。」
樹生の言葉に女神様達は嬉しそうに笑った。どうやら本当に困っていたらしい。
「それでも助かるわ。私達は手出しが出来ないのよ。だから勇者だったり英雄だったりに神託を下すんだけど......アイツら無視しやがったのよ。」
「ええ、その上命令するならお前らから殺すなどと......」
はぁ…とため息を付く2人。ここで樹生にある疑問が浮かぶ。
「そう言えばこの世界の神様ってお二人だけなんですか?」
至極単純な疑問だった。何せまだこの2人以外と出会っていないのだから。
「うん?あぁ......いっぱいいるわよ。」
「ええ、本当に沢山いらっしゃいますね。」
なるほど......風の女神と水の女神......ならば他の属性の神様は入るだろうな。そう考えながら2人を見る。安心したのか…...明るい表情にもどった。
「そうだ!オメガプロキシモを貸して頂戴。」
ウェンディ様がそう言うので渡す。
「うん......うん......よし!問題無いわね。」
キシーと一言二言交わすと返してきた。
「何か問題があったんですか?」
「実はこの剣は鍛冶神が打ったものに私が加護を付与したんだけど、そこで自我に近い物を一緒に付与しちゃってたみたいでね。何か問題があるようなものかと思ったんだけど......大丈夫ね!」
ウェンディ様はグッとサムズアップしていた。
「とりあえず......今日はここまでですね。」
リヴィエ様がそう言うと樹生の視界がぐにゃっとなる。
終わりか......そう思うとウェンディ様の声が聞こえる。
「起きたら手の中を見てちょうだい!!」
その言葉を最後に樹生の意識は完全に闇に落ちた......
「う~ん......フウナさんただいま......」
「ムニャァ.........」
「うん?ここは…......どこだ?」
見渡す限りの荒野、活火山からはマグマが溢れておりとんでもない暑さだった。
「...............はぁ」
ため息を付き下を向く。
「やってくれたなぁぁぁぁぁぁ!!駄目神ー!!」
「にゃぁぁぁぁ!?な、だ、誰にぁぁぁぁ!?」
「まって......まずい!!」
「どうかしたの?」
「魂の転移に干渉された。......おそらく肉体ごとどこかに転送された。」
「.........冥界の女神、彼女くらいかしらね。こんな芸当が出来るのは。」




