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76. 嵐、深夜

「やっぱり......アイツが絡んでそうだけどどう?」

「確証は無いけれど可能性は高そうね…」

「ならば!私達の出番かしら?」

「そうね。久しぶりに招こうかしら。」



「ワフッ!(早く!)」

クウがお皿を加えてトコトコとやってくる。

「分かってるよ。ちょっと待ってて。」

「タツキさん手伝います!」

「助かるよ。それじゃあどんどんひっくり返して。」

「はい!任せてください。」

腕を捲ったルビアがフライ返しを華麗に操りハンバーグをどんどん返していく。その隣ではタツキがパンパンとハンバーグの整形を行っていた。

「これがハンバーグ!あの時食べたつくねも美味しかったけど......タツキ!おかわりよ!」

「むっ?つくねとは?ハンバーグも美味しいですが私はそちらも気になります!マスター!」

「あ~あ...お腹いっぱい幸せぇ...」

フウナさんとアーサーはバクバクと食べまくっており、アーサーに至ってはつくねをねだり始める。また今度ね!

「くそ!腕が...いや体が足りん。せめて俺がもう一人いれば......」

まるで戦場で孤立した兵士の形相で樹生はハンバーグをこねる。

「ふふ…大変そうですね。お手伝いは必要ですか?」

賑やかな笑みを浮かべながらリーシェルさんがそう言う。

「天使だ......」

「むぅぅ......」

そう漏らした樹生をルビアはフライ返し片手に睨んでいる。

そこから先はルビアとリーシェルさんの手伝いのお陰で何とか食いしん坊達を満足させることが出来たのだった。

クウとシルエルは既に寝ており、フウナさんとアーサーは何かを話し合った後、目を閉じていた。





「二人ともありがとうね。」

カップにコーヒを入れルビアとリーシェルさんに渡す。

「ありがとうございます。頂きますね。」

「ありが......ございます...」

リーシェルさんは美味しそうに飲んでいたがルビアがコーヒを見ながら渋い顔をしていた。

「あ!ルビア、コーヒ苦手だった?」

「あ、え、えっと......ごめんなさい。」

スッとカップを奥にやった。ふむ…

「ルビア、ちょっと待ってて。」

カップに多めにミルクと砂糖を入れる。これでだいぶ飲みやすくなるだろう。

「これなら大丈夫だと思うよ。」

「はい............甘い!」

目を輝かせてルビアはカフェオレを見る。

「教会では甘い物は規制が多かったですから。ルビア様も類に漏れず甘い物に目がないんですよ。」

「だからチョコレートもあんなに驚いてたのか。」

コクコクとカフェオレを飲むとチラチラと樹生を見てくる。

「あ、あの......」

「ルビア様。幾ら監視の目が無いからと言ってわがままは良くありませんよ。」

リーシェルさんがキリッとルビアに言う。いや、あんた酒飲みまくってただろうがと心の中で言う。決して口には出さない。

「............わかりました。」

「そうです。きちんと自分を律する事で聖女としての...」

「リーシェルさんがゴットリカーを持っていると、大司教様に伝えておきますね♪」

「タツキさん!ルビア様に同じものと甘味を渡して下さい!今すぐ!」

リーシェルさんの目が血走っていた。

「そんなに言われたくないんですか?酒の一つや二つ問題ないと思っちゃんですけど......」

「違います!ああ、違くはないんですけど......あのタヌキにゴットリカーの事だけは知られたくない…ブツブツ」

「ははは.........そうですか。」

タヌキってあんた…

「なぁ......ルビア?」

「ふぁい?…...にゃんでしゅか......?」

ありゃ?眠そう…...さっきまで寝てたのに。

「色々あったから疲れてたんでしょう。」

「そりゃそうか。ちょっと待ってて。」

樹生はベットを出すとテキパキと準備を終わらせる。あらかじめベット何かは組み立てて置けば簡単に使えるのだ。ちなみにご飯の作り置きも最近は時間がある時に作っている。

「さあ、出来ました。リーシェルさんも寝ますか?」

「もう少し起きています。」

トコトコ歩き、目を擦りながらルビアは布団に入り数秒で寝てしまった。

「よっぽど疲れてたんだな。......おやすみ。」

軽く頭を撫でるとむにゃ...と声を出していた。


「最近......と言うよりはタツキさんにあってから、

ルビア様だいぶ変わられましたね。」

「そうなんですか?昔のルビアを知らないですから。なんとも......」

「貴方を攻めてるわけではないですよ?むしろ感謝しているんです。ルビア様はずっと復讐の檻に囚われていましたから。」

寝息を立てているルビアを見るリーシェルさんの目は、まるで本当の母親のような優しいものだった。


「そう言えばさっきルビア様に何かを聞こうとしていましたが…...気になる事でも?」

「あ~あ......大した事じゃないですよ。」

「何ですか?気になります!!」

ズイッと身を乗り出すリーシェルさん。いつにもまして積極的だな。いや......これが本来のリーシェルさんか。


「リーシェルさんって何者なのかと......」

「私ですか?ルビア様から何も聞いていません?」

コクっと頷くといきなり神妙な顔になり、


「元聖女です。今は引退してルビア様に聖女の座は渡しました。」


「へぇ.........えぇ!?」

「ビックリしましたか?」

そりゃもう...先輩後輩の関係かと...


「今はルビア様の御付きとして聖女としてのあり方を示しながら、私生活の方をサポートしているんですよ。」

「へぇ...聖女のあり方ですか。ふっ…」

「何ですか!?今鼻で笑いましたね!!」

顔を赤くしてリーシェルさんがプンプンと怒っていた。

「まったく…私には兄弟はいませんが、弟がいたらこんな感じなのですかね?」

「さぁ?妹ならいましたが、冗談が通じるほど仲は良くなかったですから。」

そう言いつつも樹生は何処か寂しそうだった。


「.........ルビア様の事はどうなんですか?」

そんな樹生の心情を知ってか知らずかリーシェルさんは唐突に聞いてきた。

「ルビアですか?うーん…」

ちらりと見て一言。

「妹が増えたな!って感じです。」

賑やかにそう言う樹生を見ながらこいつダメだなと思うリーシェルさんであった。


「私も寝ますね。」

「はい、おやすみなさい。」

「...............一緒に寝ますか?」

「寝ません。寝ません。寝ないって......!この、力強!引き込もうとするな!!」

「ふふふ♪ダメで~す。」


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