7. 安らぎのパン粥
へぇ~
固い肉をミンチにするのね。
……ていうかさらっと魔法使ってたわね、彼。
これも転移ボーナスってやつかしら……
「いや~、上手いもん食わせて貰ってありがとうな!」
グランさんは上機嫌だった。
「いえ、それも依頼内容のひとつですから。」
「はは。こりゃなんとしても無事に送り届けねぇとなぁ」
皆さんとそんな話をしているときだった。
「ずいぶん良いものを食べてるわねぇ」
「「「「「!!!!!」」」」」
いきなりのことだった。
真っ白の体毛に赤い線が入っており、その尾は九つにわかれていた。
「………エンシェントウルフ!!」
妖火の化身、伝説の生物、そう呼ばれる存在が目の前にいた。
「そう警戒しなくても大丈夫よ。用があるのはそこの人間だけだから………」
じっと見つめられていた。
(なんだろう……違和感が凄い……)
「ふふ、一緒に来て貰うわよ」
「ちっ!……タツキ!逃げろ!」
グランさんはそう言うが……
(多分大丈夫だな)
根拠のない自信が俺にはあった。
「わかりました。どうせ抵抗しても無駄でしょう。
……皆さんここまでありがとうございました。またどこかで会いましょう」
そう言うと
「てっ!うわぁ!」
首根っこを咥えられ凄い速度で連れていかれた。
「!!……タツキ-ー!!」
グランさん達の声が遠のいていく。
はてさて、どうなることやら
しばらく後……
「………ここは」
連れてこられたのは崖の下にある洞窟だった。
「中に入って」
言われるがままに中に入ると……
「くぅーん……」
「今帰ったわよ……」
まだ子供のエンシェントウルフがいた。
「……痩せてる」
ガリガリに痩せ細った子供を見るにご飯を何日も食べてないようだ
「最近になって乳も飲まなくなったのよ……生肉はまだ食べられないし……」
「……それで俺を」
(拒食症か?……専門家ではないから何とも言えないが)
必死に考えるが、いい案が思い付かない。
「そんな時あなたを見つけたのよ。あなたならこの子を何とかしてくれる………そんな気がしたのよ」
「お願い。娘を……助けて……」
(…初対面のそれも人間に頭を下げるなんて……)
「……わかりました。出来るだけのことはやります」
「!!ありがとう。」
覚悟は決めた。あとは実践あるのみである。
「まずは牛乳から……」
哺乳瓶を購入し、中に牛乳を入れ飲ませようとするが……
「······」
ダメか……
「次は赤ちゃん用の粉ミルクも試してみるか……」
時間だけが過ぎていくなか、エンシェントウルフの子供はなかなか手をつけてくれなかった。
3日程後
グツグツ
パンをミルクで念入りに煮込んでいく。
形がなくなりミルクにとろみがつき始めたところに豆乳を入れまた煮込んでいく。
(ミルクだけじゃ栄養が足りないから豆乳を入れてみたが、上手くいけばいいが)
しばらくしてからどろどろのパン粥が出来上がった。
何度やり直したか
色々と試したが見向きもされなかったが
「頼む……」
しっかり冷ましたパン粥をそっと口に運ぶ……
「……スン……スン」
パクっ
「ああ……!」
「……やった」
パク、パク、とゆっくりだが食べ始めた。
「ああ……ああ……」
後ろで母親が感涙を流していた。
「良かった……ゆっくりでいい。ゆっくり食べるんだ。」
ゆっくりだが噛み締めるように食べていた。
しばらくすると満腹になったのかそのまま眠ってしまった。
今までのような苦しみながら寝るのではなく、気持ち良さそうに眠っていた。
「…………zz」
「あらあら」
安心したのかエンシェントウルフの母親と寄り添うように樹生も寝てしまった。
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