69. アーサー
「にゃにゃ!!見つけたにゃ!」
目の前には光る出口が!
「やっと………出口にゃ!でも………」
そこでふと考える。
「僕はいったい何のために地上に向かうんだにゃ?」
「う~ん………!!!!はぁ………」
その後フウナさんの案内のもと出口へと戻ってきた。全身を照らす太陽が心地いい。
外はちょうどお昼ぐらいだろうか?
「はぁぁぁ…………やっぱり外が一番ですね。暫くはダンジョンは遠慮しておきます。」
「ええ………特にここは死体が多すぎます。遺品整理だけでもかなりかかりましたからね。」
ルビアとリーシェルさんが疲れた顔をしていた。行方不明者を見つけた場合遺族に遺品を持ち帰るのも聖職者の仕事のひとつだそうだ。
「本当にタツキさんが居てくれて助かりました。」
ルビアはそう言うとニコッと笑った。
「本当に……貴方はこんな短い間に色々と教えてくれましたから。」
スッと俺の手をとる。
「貴方に感謝を………」
彼女の手はほんのり温かく柔らかかった。
「タツキさん、私からも感謝を。ルビア様がここまで心を開く男性は初めてですよ。」
そう言われるとむず痒いものである。
「あはは………ありがとうございます。ところでお二人はこの後の予定は?」
「エルナス正教国に戻って報告をしなければなりませんから。それに………」
ルビアはダンジョンも見つめながら言う。
「個人的に調べたいこともありますから。しかし……タツキさんの料理が食べられなくなるのは残念ですね。」
「それなんだけどさ………今日の夜パーティーしないか?助けてもらったお礼もかねたくて」
そう言うとルビアの目が輝き始める。
「本当ですか!?………しかし」
悩んでる…………相当悩んでる。
う~ん……と考え込むルビアの元にリーシェルさんが歩みより耳元で何かを言っている。
「!!そ、それは………盲点でした。なるほど………そういう手が……」
いったい何の話をしているんだろうか?
「タツキさん………私も手伝ってもいいでしょうか?」
話を終えたルビアが上目遣いで聞いてくる。そっとリーシェルさんに親指を立てると………向こうもグッと返してきた。
流石である。彼女とは旨い酒が飲めそうだ。
「さてと………いったんシリラさんの所に帰ろうか。アーサーのこともあるし。」
ちらりと見るとフウナさんやシルエルと何やら話をしているようである。
(改めて考えると………エンシェントウルフのフウナさんとクウ。風の精霊のシルエルに、フェニックスのアーサー。こんなにも強い方たちが仲間になるなんて……まぁ異世界転移だったらこんなものなのかね。)
しかし………相も変わらず自分は弱いのである。いくら神器があるからといっても死ぬときは死ぬものなのである。
(だからこそ、ビビりくらいがちょうどいいのかもな!)
「ワフゥ?(どうしたの?)」
「うん?何でもないよ。」
不思議そうに首をかしげるクウを撫でながら俺は笑った。
その後、シリラさんの所へ向かうことに。
「いいですか、マスターは"私"が送ります!」
「ふふふ………面白い冗談を言いますね。」
何故かフウナさんとアーサーがどっちが樹生を運ぶかで言いあいをしていた。
「マスター!貴方は私を選びますよね!?」
「ふふ、タツキは賢いものね。どっちのがいいか………分かってるわよね?」
「あ、あはは………えっとぉ……そのぉ……」
ダラダラと冷や汗を流しながら困り果てる。
(こういうシチュエーション漫画で見るけど………思った以上に肝が冷えるな……)
「「ジー――――――…………」」
「こ、今回は…………あ、あっあ!?」
「キェェェェェェェェェェェ」
「うわぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
なんと樹生を選ぶのは野生のグリフォン………肩をがっしりと捕まれている。
一気に急上昇。気づけば地面は張るか彼方であった。
「た、助けてぇ!!!」
あまりの恐怖に叫ぶと地面から火の玉と雷の刃が飛んでくる。
「ギエェェェェ……………」
翼を切り裂かれ、顔面を吹き飛ばされたグリフォンは力無く落ちていく。
「うわぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ…………っ痛ってて」
「まったく……もう少し注意をしてください。まぁ………結果的にはオーライ?というものですが………」
目を開けるとアーサーの背の上にいた。とても暖かくまるで上質な床暖房のよう。
「…………ありがとう、アーサー。」
「はい。そのまま安静にしていてください。肩からの出血がありますから。………………"ヒール"」
ポウッと身体が光に包まれたかと思うと傷が消えていく。
「……………マスターは以外に可愛いらしいですね。」
疲れからか寝てしまった樹生を見ながらアーサーはそう呟いた。
「さぁ帰りますよ。………晩御飯期待していますからね。」
その後、シリラさんの元に到着した樹生一向。とりあえずアーサーをシリラさんに見てもらうことに。涎を滴し、目がキマッている彼女を見てアーサーも引いていたが「マスターの命ならば例え火の中水の中!」と言いながら向かっていった。いや、火の中は問題無いでしょう?と思ったが突っ込まないことに。
フウナさんと言うとムッとした状態で離してくれなかった。エンシェントウルフに包まれながら餃子を作る。こんな経験は2度と出来ないであろう。
そんな感じで気づいたら夕方になっていましたと。
夕飯前になってようやく戻ってきたアーサーは………シナシナになっていた。
「あのぉ………フウナさん?ちょっと退いてもらってもいいですか?火を使うので危ないですよ?」
「……………嫌よ。まだ匂いが残ってるから……」
余計な事をいったかもしれない。仕方なく樹生はフウナさんに身を預けるのだった。
投稿遅くなってしまい申し訳ありません。まだまだ至らない部分も多くありますが、今後も楽しんでいただければ幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!




