67. 遅れた合流
……………………………
「何とか逃げ切ったにゃぁぁぁ………」
「早く地上に行ければいいんにゃけど。」
パチパチ………
「う………うん?ここは?」
起き上がると近くには焚き火が置いてあった。洞窟内ではあるがわりと広い空間のようだ。
「あー…………痛ってぇぇ。いったい何が起きたんだ?」
後頭部を擦りながらぼやく。何者かに叩かれた瞬間までは覚えているのだが………
「…………まぁいいか。結果的に助かったわけだし。」
とりあえず生き残れたことに感謝しつつ、周りを見渡すと足元に神布レーヴェが置いてあった。そして少し離れたところでルビアが寝ているのを見つけた。
「…………………一件落着と考えても大丈夫かな?」
最初は敵同士…………と言うよりは一方的なものではあったが……
とにかく濡れ衣は解消されたようである。それだけでも今回の騒動に意味はあったと言えるだろう。
「おや?目が覚めたようですね。体調はどうですか?」
後ろから声をかけられたため振り替える。そこにはよくわからない生物を持ったリーシェルさんがいた。
「はい、お陰さまで生きていられました!ありがとうございます。」
樹生がそう言うとリーシェルさんの表情が少し曇った。
「………何も覚えて無いのですか?」
「?何のことですか?」
俺が気絶してる時の事だろうか?まぁ………覚えている分けないわな。だって気絶してたんだし。
「そうですか…………」
リーシェルさんはあの嘘発見器を取り出す。
どうやらまだ疑われていたようだ。
「……………………タツキ様。」
「………何ですか?」
いきなりの様呼び……………むず痒い。
「この度は我々の勘違いで多大なる迷惑を掛けてしまい、申し訳ありません。」
リーシェルさんが深々と頭を下げた。
「…………謝罪は受けとります。そしていくつか質問してもいいですか?」
「はい、なんなりとお聞き下さい。」
「じゃあ…………まず………」
バガアァァアァァァァンンンンン!!
今まさに話始めようとした瞬間天井が割れた。
「タツキ!無事かしら!?」
「あ!………あいつら!!」
「ワフ!(来たよ!)」
フウナさんにシルエル、クウが瓦礫を吹き飛しながら登場。
驚きの余り、放心状態になっていた。
「ふふふ………私達が来たからにはもう大丈夫よ。」
フウナさんが俺を守るように立つ。
「タツキ!!怪我は無い?………てっ!血が出てるじゃない!」
うん………瓦礫の破片がね………。結構痛かったのよ。これ。
「ワフ!(会いたかったよ!)」
「いだだだだだ!!クウ、爪が!!爪が!!」
顔面に張り付くクウ。傷口に爪が…………
「………………貴方たちあの時の!」
リーシェルさんが驚愕に目を見開いていた。
「リーシェルさん。紹介しますね。」
樹生がフウナさん達の紹介を終えると、リーシェルさんが顔面蒼白にしながら土下座してきた。
「大変申し訳ありませんでしたー!!!!」
「「「「「?」」」」」
いきなりの出来事に全員で首をかしげていた。
どうやら彼女の国ではエンシェントウルフが神聖視されているようで、最初はグレートウルフかワイルドウルフの変異種か何かだと思っていたようである。
「ああ………!!どうかお許しを!どうか……!!」
「………………………………………ぷぷ」
フウナさん…………笑ってるよ。
「あははは!!大丈夫よ。そう気にしないで頂戴。」
フウナさんが大笑いしながらそう言う。
「そりゃあ、あの時はぶっ殺してやろうと思ってたわよ?実際シルエルなんかは腸煮えくり返ってただろうし」
ちらりとシルエルを見るとルビアの治療をしていた。俺がお願いしたのだ。
「今だって完全に許したわけじゃないわよ?貴方達がタツキを殺そうとしたことに変わりわ無いのだからね。」
リーシェルは土下座しながらがだがたと震えていた。
「………まぁ、タツキの事を助けてくれた事は事実みたいだし今回は許してあげるわ。いいわね?シルエル。」
「………………………ふん。次は無いからね?」
キッとシルエルが睨む。
「ありがとうございます………本当に、本当に!!」
リーシェルさんは何度も何度も謝り感謝の言葉を口にする。
「フウナさん………その辺にしてあげようよ。」
樹生がそう言うとフウナさんが近づいてくる。そして……
「…………別に貴方を殺そうとしたことに怒ってるわけではないのよ。…………ただ一緒に居られる時間を奪われそうになったことが腹ただしかったのよ。」
そう言いながら顔を舐めてくる。
「うん。ありがとうね。」
頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めその場に座り込んだ。
「ああ!ズルい!!」
治癒が終わったのだろう。シルエルが物凄い勢いで胸に飛び込んでくる。
「ぐふっ!」
鳩尾にクリーンヒットしたが不思議と嫌な感じはしなかった。
「リーシェルさん………」
「!!ルビア様。目が覚めたようで何よりです。」
リーシェルはルビアに駆け寄る。
「私達はとんだ勘違いをしてしまったようですね。あのような方が悪人である筈がありません。」
「はい、私もそう思います。」
フウナさん達と楽しそうに話す樹生を見て微笑むリーシェルとルビア。
「これからどうしましょうか?事実を言っても恐らく上は信じようとはしないでしょうし。」
「オークの首でも持っていきましょうか?同族の首なら信用するのではないでしょうか?」
「それは絶対に本人達に言わないように。私達の首が飛んじゃいますか………」
聞こえていないからってそう言うことは余り言わない方が良いのだ。事実どこで聞かれているかは分からないのだがら。だが否定はしない。
「止めちゃおうかな………そうだ!いっそのことタツキさんに………!!…………危ない!!」
聖職者だからこそ気付けた一瞬の闇の揺らぎ。そいつは最初から虎視眈々と狙っていたのだ。樹生の首………いや命を!!
「「「!!」」」
フウナさんですら気付くのが一瞬遅れてしまった。
完全に油断しきっていた。このままじゃ!
「タツキ!!伏せて!!」
「えっ?」
ブンッと巨大な鎌が樹生の首を狙う。
皆の顔が徐々に絶望の色に染まる。
「えっ?………はっ?」
目の前にいきなり現れた真っ赤な炎………否!
「大丈夫ですか?マスター。遅れながら合流します。」
フェニックスが目の前で巨大な鎌を受け止めていた。
「マスター。指示を。」
「えっ?あ、あぁ。………うん?」
「…………………はぁ。燃やします。」
次回 死鎌vs炎帝
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!




