66. それはまるで神業の如く
「にゃはははははははははっ！！！」
クガァァァアァァァァアァァァァア！！！！
「もう嫌にゃぁぁあ！！誰か助けてにゃぁぁあ！！」
「ルビア様、一人にしてしまい申し訳ありません。」
スタッ……と地面に着々すると手に持っている仮面？というよりは、貴族達がパーティーとかで着けてる目隠しの様なものだろう。
てか、何で一回外した？
「ちょっとリーシェルさん！！何してるんですか！？」
ルビアがばっと目を塞いでくる。何か既視感………
「あら、ルビア様珍しいですね。あなたが男性にそこまで夢中だなんて………。ふふふ、懐かしいですね……。今でも覚えてますよ、貴方が私の事を深く求めてきた……」
「あああああああああ！！！！その事は今は関係ありません！て言うかあれはリーシェルさんの仕業でしょ！？過去改変も大概にしてください！！」
「ふふふふ………そんな大声をあげないでください。耳が果ててしまいそうです………♡」
「だぁあぁあぁぁ！！hhwi*#(#¥;$(#8♤·♤·♡°」
冷静なルビアが目を見開きながら顔を真っ赤にしながらまくし立てていた。
こんなキャラだっけ？て言うかこっちの耳が果てそうだわ。色んな意味で………
「シャ……シャアア？」
「あ………どうも？」
巨大な蛇と目があった。お互いに軽く会釈をした。
えっ？何この状況………
美少女に抱き締められながら、美女にお姫様抱っこをしてもらっている所を巨大な蛇が睨み付けており、その蛇と軽く会釈を交わした………
う～ん………俺こんなんばっかじゃん………
まぁでも……‥…………
ムニュッ
プルン……
悪くないね☆
「………邪な気配を感じます。」
「………視姦ですか？石にしますよ？」
目からハイライトが消えた二人がじっと見てくる。
「………………へ、ヘビサンダ～」
「シャァアァァァア！！！！」
痺れを切らした巨大な蛇が襲いかかってきた。
グッジョブ！！
「うわぁぁぁあぁあぁあ！！」
巨大な口が迫るなかリーシェルさんに放り投げられる。
「はああああああ！！」
ガキンッ！！っと牙と天秤剣がぶつかる。ルビアは小柄ながらも巨大な蛇を押さえ込んでいた。
「ルビア様！そのまま押さえていてください！！」
いつの間にか仮面を着けているリーシェルさんはそう言うと手に持っている魔導書から強烈なビームを放つ。蛇に直撃するとジュー……っと焦げた匂いがする。
「なかなか強いですね。私の一撃を受けておいて………生意気ですねぇ……♪」
「リーシェルさん！！喜んでないで攻撃してください！」
聖職者二人が巨大な蛇相手に善戦するなか樹生はと言うと……
「が、頑張れー！！」
ぶん投げられた先にあった岩影でせめてもの応援をしていた。
すぐに動けるように聖剣オメガプロキシモ以外の荷物を隠しておいた。そして何故か樹生はオメガプロキシモを地面におく。特に理由のない行動だった。
(あんなのと対峙するとか絶対に無理だね！蛙になっちゃうよ。)
とは言ったものの流石に何もしない訳にはいかないし…………
「オメガプロキシモ……………でも、俺の腕じゃ」
おもいきり振ることはできるが、そんなことをしたら天井が崩落してしまうだろう。それに二人を巻き込みかねない。
う～ん………と悩む樹生。
「···························」
しかし後ろから不穏な影がゆっくりと近づいていることに全く気付いていなかった。
「…………………………………ていっ！」
「うがぁ！………」 チーン……
何者かに後頭部を強打され、白目を剥きながら樹生は気を失った…………
「全く…………それでも私の所有者ですか………。この臆病者が」
ゆらりと気を失ったはずの樹生が起き上がる。その手には聖剣オメガプロキシモが握られていた。
「………………………………」 チーン
いや…………気は、失っている。白目を剥き、半開きになった口からは涎が垂れていた。腐ってないゾンビそのものだった。
「さあ！行きますよ！明日は筋肉痛を覚悟しておいてください！」
何者かがそう言うと樹生は蛇に向かって走り出した。
一方ルビアはと言うと……
「ふっ！はっ！……やぁぁ！！」
蛇に対して剣を振っていた。蛇の体表には切り傷がいくつもできていたが、いずれも致命傷にはなっておらず再生が始まっていた。
「こんな魔物は聞いたことがありません。魔術に対して抵抗があるどころか高い再生能力まで………じり貧ですね。」
リーシェルさんが魔法を撃ちまくるがまるで効果がない。というよりは途中から効きずらくなったといった方が正しいだろう。
「リーシェルさん！どうしますか！？このままじゃ………」
はぁ……はぁ……と息を切らしながらルビアが蛇を睨み付ける。
「残念ながら……あれを一撃で沈める魔術を撃てません。万事休すですかね。」
最初は優勢だった。致命傷とは言わずともかなりの深手を二人は負わせていた。だが、途中から体表が固く柔軟になり魔術への高い耐性も持ち始めた。まるで………この戦いに順応していくように一つずつ二人の攻撃手段を潰していた。
「くっ！……うぁぁ」
振りかぶったしっぽがルビアを吹き飛ばす。ギリギリガードは間に合ったものの壁に叩きつけられる。
「ルビア！！……よくも！！」
ルビアさんが魔法を撃ちまくるが蛇はまるで気にしていなかった。ゆっくりとこちらに近づいてくる。
「うぅ…………油断………した。」
蛇の巨大な口が徐々に迫ってくる。リーシェルさんが何か叫んでいるが耳鳴りが酷く何も聞こえない。
視界がぼやけ意識が遠退く中ルビアの眼はあるものを捕らえていた。
それは蛇に向かって走っている樹生であった。
「だ、ダメ……です！ゲホッ……くっ！きちゃだめぇぇ！！」
最後の力を振り絞り叫ぶが樹生は止まらない。と言うよりは止まれない。何故なら………
「………は？」
リーシェルは眼を疑っていた。ルビアが吹き飛ばされ焦っていたが………それすらも凌駕するほどの光景に放心していた。
さっきまで岩影で怯えていたあの男が蛇に向かって走っているのだから！！しかも白目を剥きながらである。
「はっ！！」
明らかにあの男とは別の女性の声が聞こえる。
「魔力解放！！ トルビュヴェンディー！！」
剣が緑色に輝き巨大な風の刃が蛇の首を切り落とした。
「まだまだ！！」
ザシュ！ザシュ！と風の刃が蛇の体を切り刻んでいく。
「はぁぁぁぁぁぁ！！」
ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ！ザシュ
あまりの速度に再生が追い付いていなかった。
徐々に再生能力は落ちていきついには蛇の目から光が消えた。
「これで！！終わり！！」
最後、蛇に兜割りを決め………辺りは静寂に包まれた。
「ふぅ………少し寝ます。彼を………頼みますね。」
そう言うと謎の声の主の気配が消え、樹生はふっとその場に倒れた。
「いったい…………何だったの？」
あまりの光景にリーシェルはただただ眼を見開いているだけだった。
「と、とりあえず彼を起こさないと！」
リーシェルは我に返ると樹生に駆け寄る。普段はわりと余裕のある感じのリーシェルも流石に焦っていた。それはそうだろう、何せ目の前で圧倒的強者が瞬殺されたのだから………
「………よいしょ。」
タツキを担ぐが軽い。筋肉もあるわけではなく、体の線も冒険者の男にしては細い。
あんな芸当が出きるとは到底思えなかった。
「…………………どうやら異端者では無いようですね。ただ警戒は続けた方が良さそうです。」
リーシェルはそう言うと、樹生を担ぎ直しルビアのもとえと向かうのだった。
「全く…………やっとここまで回復できたのね。本当にマスターには困るわ。ここまでしてまだ気付かないなんて……とんだ鈍感野郎ね。これじゃあ毎回気絶させなきゃ行けなくなるじゃない。…………ああ、早く私を振り回して欲しい。破壊、殺戮、虐殺………あぁ\\\。
やはり私は強者との戦い等どうでもいいわ！！一方的な殺戮！！これこそ嗜好の領域！！………………なんて、これじゃあただの邪剣ね。…………ふふふ」
