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65. 瘴気

「何もないにゃ………いったいどこにゃ?」

俺が光を抜けるとそこには予想外の光景が広がっていた。

「見渡す限りの荒野…………地上ってこんなことになってたのかにゃ!?」

「とりあえず人間を探そうかにゃ。街に行けば一人くらいいるはずにゃ!!」







「………………瘴気が濃くなってきましたね。タツキさんは大丈夫ですか?」

振り返るルビアの顔色がかなり悪くなっていた。

「ああ、大丈夫だけど………ルビアは大丈夫かい?」

「ええ、まだ耐えられま…………くっ!」

頭を押さえながら苦しそうに悶えていた。

樹生には神布レーヴェがあるため瘴気の影響は受けていなかった。だがルビアの様子を見るに相当な瘴気が蔓延しているのだろう。


「………………………ホワイトマーケット」


ホワイトマーケットを開くと軍事用品の欄を見る。様々な装備や銃器、果ては戦車や戦闘機までが並んでいた。


(今までは怖くてスルーしてたけど…………そろそろ覚悟を決めた方がいいかもな。)

その中からガスマスクを見る。

沢山の種類があり、値段もピンキリである。

(うーんと………対毒、対瘴…………異世界仕様?)

ガスマスクの中に見た目を変更する項目があった。今まではこんなもの無かったが………


(知らない間にアプデでも入ったか?………まぁいいか。)



「タツキさん?これは?」

ルビアに神布レーヴェを渡す。

「これを首に巻いてみて。かなり楽になると思うよ。」

「あ、ありがとうございます。では……………すごい!瘴気が遮断されてる!」


神布レーヴェを触りながら驚愕に目を見開いていた。


「だいぶ楽になりました!…………でもタツキさんは大丈夫何ですか?」

「ああ、変わりがあるからね。」

タツキは黒いスカーフで口を覆っていた。見た目はスカーフだが本体はガスマスクである。見た目変更の機能を使ったのだ。


「さっきよりだいぶ気持ち悪くなってきたな………これが瘴気か………」

いくら高性能なガスマスクとは言え、限界があった。だが問題はない。多少気分が悪くなるだけだ。


「さぁ………先に進もう。」

「はい。」




私は間違っていたのかもしれない。前を歩く彼を見てそう思う。歳は同じくらい、背丈もそこまで高くないし体格も普通……多分私より弱い。

最初上から与えられた任務を聞いた時天啓だと思った。私の家族、幸せ、時間………全てを奪い去ったあの男を殺せるのだと歓喜した。だが、会ってみれば似てるだけの別人で笑えるほどのお人好し………しかも変なスキルで見たことも聞いた事もない食べ物をくれた。……………めちゃくちゃ美味しかった。

(彼ならリーシェルさんもすぐに受け入れられるはず……‥‥)

顔面真っ青で今にも倒れそうなのに、笑いながら「段差気を付けてね。」何て言ってる。あっ!転んだ。

(……………そんなに辛いなら何でこれを私に?)

首に巻いているマフラーを触る。どうやらこれは瘴気を完全に遮断できるようだ。


「あの…………私はだいぶ楽になりましたから、タツキさん使って下さい。」

「うん?ああ、大丈夫大丈夫!!……おぇ!……ふぅ……ただの酸欠と脱水状態だから。」


「一大事です!貴方は私より弱いんですから!あっ………」

言ってしまった。虚勢をはる彼が見ていられなくて……

「だからこそだよ。いざって時に君が動けなかったら俺死んじゃうからね笑」

「でも!!」

「でもじゃない。いいか?俺は戦力外、君は………強いかもしれないが万全じゃない。そうだろう?」


図星だった。彼と出会う前に油断してゴブリンに足を刺されていた。運の悪いことに猛毒が塗られており意識がずっと朦朧としていた。だが彼が貸してくれたマフラーを巻くと今までの苦痛が嘘のように飛んだ。だが…………外した後がわからない。それに刺された場所がじくじくと痛みいつものポテンシャルは出せない。…………彼はそこまで見抜いていたのか。

ルビアはまだ16歳。そんな子がたった一人で洞窟内をさまよっているのだ。顔には出さずともその不安は計り知れない。


「それに俺が体を張らなくてどうすんだって話だしな!これでもファフニールから生き残ったからな!」

はっはッは!と笑いながらずんずんと前に進むタツキさん。いつの間にか私の中にあった不安は消えていた。


「待ってください。弱い自覚があるなら先にいかないでください。あとファフニールは伝説上の生き物ですから嘘つかないでください。」

「嘘じゃないぞ。ああ、確かあれが………」

「わかりましたから………先に………」


ズルッ


「えっ?」

油断していた。まさか一歩先が崖になってるだなんて。


「ルビア!!」

手を伸ばし腕を掴むと引き寄せるが少し間に合わなかった。

「キャアアアアア!!」

「うおおおお!!」

ルビアを抱き寄せるとそのまま浮遊感。まっ逆さまに落ちていった。


(まずい!この高さから落ちたら!)

今まで何度も感じた死の予感。今回ばかりは余りにも余裕が無かった。

(せめてルビアだけでも!」

体を反転させ背中から落ちていく。

ギュッとしがみつくルビアさん。その手は震えながらもしっかりと掴んでくれている。

(絶対に君だけでも!!)


地面まであと少し。背中に物凄い衝撃が走り内臓を全部引っくり返されたような感覚…………………が来なかった。むしろ何か柔らかいような……



「何とか間に合っいましたね。無事でよかったです。ルビア様。」

仮面を着けたシスターにお姫様抱っこされていた。

「それと………ルビア様をありがとうございます。」

「あ、貴方は?」

仮面シスターはゆっくりと仮面を外す。その顔に目を奪われた。


「私の名はリーシェルと申します。以後お見知りおきを。」

ルビアの探し人が目の前に立っていた。


そして…………



「シュルルルル………………!!」

「それと申し訳ないのですが…………手を貸していただけないでしょうか?」


三本首の巨大な蛇がこちらを睨み付けていた。





「ところで………貴方は誰ですか?」

「え、えっと……………あはは……」

「リーシェルさん!!彼のことは後で説明します。今はアイツに集中しないと!!」


三人は巨大な蛇に相対する。だが樹生はこの後の事が気がかりで胃がキリキリと音を立てていた。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

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