56. 一旦……
……………………………………
おや?あのドラゴンまさか………
………………またすごいことになってるわね
白竜との契約ですか。これまたとんでもないのが誕生しましたねぇ。
暫くしてエマが落ち着いた頃、樹生達は地面に座りある重要な事を考えていた。
「タツキさん!!見てください。私の"友達"ですよ!」
明るい笑顔でエマは大喜びしていた。そこには出会った頃の焦燥感は感じられなかった。
「ピィ!ピィ!」
エマの手の上でぴょんぴょんと跳ねる白竜。生まれたばかりだと言うのに………流石はドラゴンと言ったところか。
「ねぇ、エマちゃん。名前はどうするの?」
シルエルが白竜の頬をツンツンとしながらエマに聞く。白竜もまんざらでも無いようでシルエルのされるがままになっていた。
「そうですね…………………」
あれから全員で考えているがなかなかピンとくるものがない。
「難しいですね。名付けと言うのは………」
う~んっとエマが悩んでいると………
「一旦帰りましょう?もう日が落ちるわよ?」
でっかい肉を咥えたフウナさんが来ていた。
「あら……どうやら契約は上手く行ったようね。おめでとうエマちゃん。これで無能の烙印を払拭できたかしら?」
ドサッと肉を地面に置くとそれめがけて白竜が食らいついていた。
一心不乱に食らいついている。その姿は野生そのものだが、その目は輝いていた。
「良く食べますね。タツキさんこのお肉は何のお肉何ですか?」
「う~ん………星熊かなぁ?」
樹生にとっては食べなれた物だったがエマにとってはそうではないようで……
「星熊と言いましたか!?あの星熊ですか!?」
バッと身をのりだし樹生に詰め寄る。
「見せてください。星熊を見せてください!!」
ものごっつ目を輝かせながら、エマに詰め寄られた樹生は乾いた笑いしか出来なかった。
「ウー………ワフッ!」
するとクウが顔に飛び付いてきた。相変わらず好きだなぁそれ。
「じゃあ私も!」
ぽふっとシルエルが頭の上に飛び乗ってくる。
「キュッ?………キュゥ!!」
ワチャワチャしている様子を見ていて混ざりたくなったのか食事を止めて白竜がエマの頭の上に飛び乗っていた。
「…………はははっ、こりゃ大変だぁ」
「ふふ、賑やかになってきたわね。………そうだ、タツキ」
「どうしたんですか?」
「…………その状態でしゃべるのね。まぁいいわ、それより話があるの。後で少しいいかしら?」
「?大丈夫ですよ。」
何やら話があるようで………何かあったっけ?
「大丈夫。悪い話じゃないわよ。」
フウナさんがニコッと笑うと学園に帰るように催促された。どうやらBBQが一段落し今は少数の生徒が残って後片付けをしてるようだ。
「さあ、帰るわよ。エマちゃん乗っていいわよ。
「は、はい。失礼します………。わぁ!ふかふか!」
フウナさんの毛並みに感動しているエマ。
そりゃそうだ。フウナさんの毛並みは世界一だからな!
でも…………
「…………………………スン」
「あら?どうかしたかしら?」
「フウナさん、後でお風呂はいりましょうか!」
瞬間フウナさんの顔がひきつった気がしたが………まさかそこらの犬猫じゃないんだし"風呂"くらいねぇ………
「……………フウナ様、お風呂苦手なんですか?」
エマがそう言った瞬間フウナさんがものすごい早口で
「そんなこと無いわよ私を誰だと思ってるのかしら?そもそもシルエルにクリーンの魔法をかけて貰えばすむ話だし何より私臭くないわよそれにお風呂なんて人間がはいるものであって私には縁もゆかりも無いものでつまりどう言うことかと言うと私には必要無いものよ。」
フンスと鼻を鳴らすとすげぇどや顔を決めていた。
いや、どやる要素無いだろう。
とりあえずフウナさんをお風呂に入れる事が確定した所で学園に帰る事にした。
「絶対に入らないからね。」
その後5回くらい同じ事を言われた。
パチパチ…………
ある岩山の上で焚き火を囲む少女と女性。
目の前には野菜のシチューがコトコトと音を立てていた。
「しかし………ハグ……異世界人とは……モグモグ……何者なのですか?」
少女がパンを頬張りながら、もう一人の女性に聞く。
「言葉の通りですよ。こことは異なり世界からの来訪者、それがアンギスの英雄達と異端者タツキです。」
一方、金と銀の装飾が美しい目隠しを着けたシスターはシチューを混ぜながら答える。
「今から1ヶ月程前アンギス帝国が行った英雄召喚の儀式。本来ならアンギス帝国が彼らの手綱を握る筈なのに、異端者の口八丁にまんまと騙され手綱を放し野に解き放ってしまったのですから。」
シスターの声には悔しさと一緒に深い憎悪が感じられた。
「まさか、召喚された人間があのグロウリーの関係者だなんて。そんな事が起きるものなんですね。」
英雄召喚が行われた後教皇に神託が下った。その内容が……
「近い内に異世界から来訪者が訪れる。その中に悪の魔術師の関係者が混じっている。必ず捕まえ天誅を下せ。………出したね。」
この神託が下った後聖教国は大騒ぎになった。
聖教騎士団は樹生の捕縛に躍起になり、その勢いは私達にまで広がった。
「………………タツキですか。必ず捕まえ真意を聞かなければ!」
少女とシスターは決意を改めて、その日は就寝するのだった。
異端者情報
異世界人 タツキ
男性
黒髪、黒目
魔獣の見た目をした悪魔を使役している。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!
上記の者を発見した場合は聖教騎士団へ通報を。




