49. 神夢界
あ~あ……ついに来ちゃったかぁ。怒られるかなぁ……
「始めましてね。異世界人くん。私は水の女神リヴィエよ。よろしくね。」
……………………………でっけぇ。
何がとは言わない。て言うか言ったら死ぬ。物理的にも精神的にも社会的にも。
「ふふ………私は優しいから"一回目"は聞かなかったことにしてあげるわ。」
……何故だろう。リヴィエ様の後ろからゴゴゴゴゴっていう効果音が聞こえてくるのわ。
「ここは私達の世界よ?貴方の心の声なんて丸聞こえよ。」
「……………なるほど。変なことは考えられませんね。」
「そういうこと。まぁ、見とれてしまうことはしょうがない事なんだけどね。」
ファサッと髪をかきあげる。
この行動がここまで様になっている人はなかなかいないだろう。まぁ彼女、人じゃなくて神なんだけど。
「……………貴方をここに呼んだのは理由があるの。いきなりでごめんなさいね。」
そういうとリヴィエ様は頭を下げる。
「いえ、むしろ面白い体験が出来てますよ。神様達の世界にこれたんですから。そう言えばウェンディ様は元気にしてますか?」
今はリヴィエ様だけのようだが………
「ええ、貴方に貰ったお菓子を食べながら幸せそうにしてるわよ。」
口にあって何よりである。
樹生は周りを見ながらあることが気になった。
「そう言えば、ここって夢の世界なんですか?」
樹生の質問にリヴィエ様は答えた。
「まぁ分かりやすく言えばそんな感じかしら。私達は神夢界なんて呼んでるんだけど、ここには魂しか存在できないのよ。つまり貴方は今肉体と魂が解離してるってことね。」
……………つまり死んでるってことでは?
だんだんと不安になり冷や汗をかきはじめる。
「そう焦らなくても大丈夫よ。貴方の魂は私達が繋ぎ止めてるから、何の問題はないわよ。」
「…………わかりました。貴方を信じます。悪い神様には見えないですし。」
「ふふ、ありがとうね。ウェンディに聞いた通り落ち着いた子ね。慣れっこかしら?」
確かに、この手のテンプレは沢山見てきたからな………て!なるかぁ!心臓バクバクだわ。声聞こえてんならわかるだろ!
「ふふふ、ごめんなさいね。イタズラしたくなっちゃうのよ。」
そう言いながら、リヴィエ様は"何故か"服を脱ぎ出した。
大事なことなのでもう一度言おう。
服を"脱ぎ出した"
「???」
「そんなに見ないで頂戴……………恥ずかしいんだから」
ボソッと言いながら上半身の服を脱ぎ終え、次に下半身に手を掛けようとしていた。
「ちょちょちょちょっと!!何してるんですか!?駄目神の次は痴女神ですか!?冗談きついですよ!?」
樹生は本気で焦っていた。
ここに連れてこられた理由は大方、想像が付いていたがこんなことは想像出来るわけがない。
樹生の言葉を聞いても脱衣を止めないリヴィエ様。とりあえず背を向け目をむけないようにする。
「…………今何でここに自分を呼んだのか?そう思ってるわよね。」
シュルシュルと後ろから服を脱ぐ音が聞こえる。
「私だって出来ることならこんなことしたくないわよ。でもしょうがないのよ。」
服を脱ぐ音が聞こえなくなると、リヴィエ様の声がどんどん近づいてくる。
「…………暫く貴方のことを見ていたのだけど、すごく弱いわよね貴方。」
ついに耳元で囁き始める。
「武器に、従魔に振り回されてばかりよね。だから貴方のことを守ってくれる…………」
「?」
急に静かになったと思い振り向くと、
「//////////////!!」
顔を真っ赤にしてうつ向くリヴィエ様がいた。
「うー!!やっぱり無理!!」
屈みながら後悔してるようだ。
「…………大丈夫ですか?」
手を差しのべると、リヴィエ様が「大丈夫じゃない……」と蚊の泣くような声で言った。
「はぁ………だから言ったのに。」
するとウェンディ様が呆れたように言いながら出てきた。
「久しぶりね。タツキ君!お菓子めちゃくちゃ美味しいわよ。また頼むわね!」
サムズアップをしながらウィンクをしてきた。
めちゃくちゃ様になっていた。
「その節はどうも。聖剣役立ってますよ。」
「そりゃそうよ。なんせ聖剣だからね!………それはそうと
リヴィエ!いつまでそうしてるつもり?さっさと渡しちゃえばいいのよ。」
そう言いながらウェンディ様がリヴィエ様の服を引っ張り取る。リヴィエ様は「ああ~………」と言いながら手を伸ばすが遅い。
「はい!リヴィエからあんたへのプレゼントよ!大事にしなさいよね。」
その服は樹生の手に渡ってしまった。
………………これを着れと?
「サイズに関しては心配しなくていいわ。着ればわかるだろうし。」
いまだうずくまっているリヴィエ様をつかみウェンディ様が消えた………
「あ!そうそう、伝えることがあったわ。」
ひょこっと目の前にウェンディ様の顔が現れる。
「また近い内に呼ぶわ。その時は私達じゃないかも知れないけど………根はいい子だから仲良くしてくれると嬉しいわ。それじゃあね。」
放心状態になって数十秒。結構重要なことを言われた気がしたが樹生の頭には入っていなかった。なぜなら………
「………………これを着れと?」
……………こうなってしまうのは仕方がないだろう。
だって初めてなんだよ!こんな経験!
そう叫ぼうとした瞬間、意識はとうのいていき………
「…………見知った顔、………おわっ!」
「目が覚めたのね!!良かったわ……本当に!」
フウナさんに顔をペロペロと舐められる。
約1日しか離れていなかったのにまるで久しぶりにあった感覚………
「丸1日寝込んでたから心配したのよ!まったく……キツかったら言っていいんだからね。」
シルエルがそう言いながら顔に抱きついてくる。クウもそうだが流行ってるのかこれ?
……………うん?1日?
「シルエル、今1日って言った?」
改めて聞くとどうやら丸1日寝ていたようだ。
だいぶ身体に負荷がかかってるようだが、神様たちはわかってるのだろうか?
「………………うん?これは………」
「タツキ君!!大丈………………」
「目が覚めたのね、良かっ………」
セスさんとアリスさんが部屋に飛び込んでくる。
そこには……
女性用の洋服を広げながら首をかしげる男。
それも………かなり扇情的な………
「……………失礼しました~」
「……………………」
「ちょっ!ちょっと話しましょう!大丈夫です!俺は変態じゃ……。ちょっと!閉めないで!」
…………それは変態のセリフだよ。樹生君。
何故こうも間が悪いのでしょうか?異世界ではあるある何でしょうか………
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!




