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48.  回復後

大丈夫よ。私ならいけるわ!私ならいけるわ!そうよダメだと思うからダメなのよ。


………………本当に大丈夫かなぁ?




「これめちゃくちゃ美味いな!おかわり!」

マーヤさんがそう言いながら器を出してきた。すでに三度おかわりしており次で四度目。いい加減食べ過ぎである。

「マーヤ、食べ過ぎよ。彼困ってるじゃない。」

アリスさんはそう言うが彼女も今3杯目を食べているところだった。

あんたら二人とも大して変わらんのよ………

「二人とも元気そうで良かったよ。……タツキ、おかわり頂戴。」

4杯目を完食したセスさん。

あんたが勝者だよ。

樹生は器に玉子粥を注ぐとセスさんに渡す。

「しかし、あんたが居るとは思わなかったな!」

マーヤさんがそう言いながら笑った。

「そうね。貴方が解呪してくれたんでしょう?本当に助かったわ。」

嬉しいものである。たまたま手に入れたものであるとはいえ誰かの命を救えるとは。

「しかし、タツキさんは何故ここに?カンドラに向かったものと聞いていたのですが。」

アリスさんに聞かれたため事の経緯を説明した。イルドランを出た後から今までの経緯………ドラゴンゾンビを倒し、村を救い、ダンジョンを踏破。樹生の話を三人は最初は冗談だと思っていたが大量の財宝、ファフニールの死体。ドラゴンゾンビの核の数々を見て言葉を失っていた。そしてあるものを見てアリスさんが驚愕に声を上げた。

「これは!!………タツキ君!これをいったいどこで手に入れたんだい!?」

樹生の手には聖剣オメガプロキシモがあった。

「これは………説明が難しいんですけど、ある森の中にあったんです。精霊に案内してもらって。」

シルエルのことは正直説明が出来ない。

理由はいくつかあるが一番は本人が嫌がっていることだった。本人は人間の事を気にかけているようだが、姿を表すと面倒臭いことになるとわかっているためだ。

「…………ごめんなさいね。精霊については言えないこともあるわよね。」

「いえ、彼女は人間が嫌いな訳じゃないんですけどね。」

アリスさんは何となく察してくれたようでそれ以上の詮索はしなかった。

「ていうかよ、あの従魔はどこにいるんだ?」

マーヤさんが周りを見渡しながらそういう。

「入口で待ってて貰ってるんです。」

樹生が入口を指さすがマーヤさんは首をかしげる。

「そうか?うーん………あんだけ強けりゃ、存在感でわかるんだがな。」

マーヤさんがそう言うと、さっきまで樹生の膝の上でゴロゴロしていたクウがピタッと止まった。


「確かにそうね。私もあの従魔に謝りたいと思ってたんだけど………近くに居ないわね。」

……………………やっぱりか。


分かってはいたけど………いったいどこに行ったんだ?

「………………クウ?何か知ってる?」

「………………ワフゥ?(…………………知らない)」


絶対何か知ってるだろ…………

「………………………タツキ」

しばらくの沈黙の後セスさんが声を掛けてきた。

「本当に感謝してる。貴方がいてくれたおかげで私達は助かったわ。本当に………ありがとう。」

手を優しくギュと握られる。

「い、いえ。無事で良かったです。」

いきなりのことで驚き、声が裏返っていた。

これまでごつい手で握られてばかりだったから………

「………………おいおい、ついにセスにも春が来たってことか!?」

「応援するわよ!!」

アリスさんとマーヤさんがそう言い出した。

当のセスさんは顔を真っ赤にしてうつ向いたまま動かなくなってしまった。

わかるよ…………本当にわかる。勢いで起こした行動って我に返るとめちゃくちゃ恥ずかしかったりするからなぁ。

樹生は過去の黒歴史を思い出していた。 

「………………本当にありがとう。」

セスさんが改めてそういうと手を離し………

「二人ともー!!」

叫びながらアリスさんとマーヤさんに飛び付いた。その顔に怒り等はなくむしろ安堵した表情で笑っていた。

「ワフッ!(一件落着!)」

「………………クウ?まだ終わってないよ。」

その時初めてクウは樹生に対して怖いという感情を持った。

「フウナさんとシルエルはどこに行ったの?」

「················」

「················」

クウはチラチラとアリスさん達の方を見るが助け船は出せない様子。

「大丈夫だよ。怒らないから。」

「ワフゥ………(本当に?………)」

クウが何を言っているのか完全には理解出来ないが何となく分かる。


「約束するよ。………それでどこにいるの?」


クウが鼻で指した先は、入口とは反対の方向。それもかなり遠いようだ。

予想通りっちゃ、予想通りだけど………

「まあいいや…………ふぁぁ」

何だかんだ色々あり疲れが貯まっていたようだ。外も真っ暗で22時を過ぎていた。


「あら、タツキ君お眠かしら?お姉さんの足使っていいわよ?」

いつのまにか後ろにいたシリラさんに頭をポスッと太ももに乗せられた。俗に言う膝枕って奴だろう。

「………ちょっとシリラさん。なにやってるんですか?」

「ふふ、弟がいたらこんな感じなのかしらね」

シリラさんに頭を撫でられていた。いい匂いがフワッと香り頭がふわふわしてきた。

だから気付かなかった。さっきまで大騒ぎしていた声がピタリと止んでいたことに……………


「………………………………!?」


そして数秒後絶叫に変わった。

「お姉ちゃん!?な、な、なにしてるの!?」

「ふふ、セスも来ていいのよ?」

「違うよ!!お姉ちゃんだけズル……じゃなくて!!タツキ君から離れて!迷惑でしょ!」

「あらあら、セスが声を荒げるなんて珍しいわね♪」


樹生の顔の前で美女姉妹がワチャワチャしていた。

普段ならドキドキが止まらなくなる「素晴らしい!!」状況ではあるのだが…………何故かとんでもない眠気に苛まれていた。

「……………ワフッ?(……………大丈夫?)」

クウは樹生の体調が良くないことに気付き始めていた。というよりはまるで魂が抜かれていくようなそんな感じ……


「……………大丈夫だよ。クウ…………。」


樹生はそう言うとそのまま目を閉じ………








~sideフウナ


「もう少しでつくわね。タツキは大丈夫かしら?」

「タツキなら大丈夫よ。クウもいるんだし………あれ?」

シルエルがそう言った瞬間フウナさんがとんでもない速度で走り出す。

「フ、フウナ!!これって!!」

「………………………」

無言ではあるが彼女の顔には焦りが見えていた。まるで初めて樹生とであった時のような。


樹生の魂は今この世に居なかった。

じゃあ、何処に居るのかっていうと!



side~神夢界



「こ、これを着てちょうだい!!」

「ぜっっったい嫌です。………嫌って言ってるでしょう!やめて!無理やり着せようと………近い近い!」


…………良く分からないけど何だかんだ大丈夫そうな樹生であった。


……………ふらっと死ぬの止めて貰っていいですか?

ほら!!セスちゃん泣き出しちゃったじゃん!樹生君、責任取るんだよ!

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

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