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47. 回復

…………本当に行っちゃった。大丈夫かなぁ?




「ふん♪ふっふ♪ふ~ん♪」

鼻歌を歌いながら、上機嫌に野菜を切るセスさん。

食べることが大好きな彼女だがどうやら作ることも好きなようである。


…………こんなキャラだったっけ?もっと無口でクールな印象があったが。もしかしてこれが素か?


「ふふっ、驚いたでしょ?セスはね本当はお喋りな子なのよ。ただ人見知りが激しくて無口だって思われる事が多いんだけどね。」

シリラさんは椅子に座りながら本を読んでいた。

聞くとシリラさんは料理が大の苦手だそうだ。


「昔、お姉ちゃんがシチューを作ってくれたことがあったんだけど、出てきたのが真っ黒の何かだったのよ。でも焦げた味がしなくて不思議と記憶に残る味だったのよ。」


なるほど………ダークマターを作ることが出来る人だったか。


「まったく………二人して失礼ね。何がダークマターよ。あれは立派な料理です!…………少し独創的なね。」


やべっ、また口に出てたか。気を付けないと。口は災いの元とも言うしな。

「お姉ちゃん自分で言ってどおするのよ………。

あっ!タツキ、味見お願い!」

セスさんに卵スープの味見をお願いされた。

中に入ってるのは普通のコンソメキューブとホワイトマーケットで購入した野菜類、後卵だ。

正直言って不味いわけがないのだが………


「うん!塩加減もちょうど良くて凄い美味しいよ。」

こうもお願いされたら断るなんて出来るわけがないだろう。


「!!……そ、そう?………ありがとう\\\」


プシューっと蒸気でも出ているのだろうか?顔を真っ赤にしてセスさんがふいっと顔を反らした。


「ウーーッ!!(かまって!!)」


すると何故かクウが顔に飛び付いてきた。


「ちょっとクウ!危ないよ!」

「ワフっ!(離さない!)」


何故かクウがわがままになってしまった。反抗期ではないだけマシなんだろうか?


「ふふふっ、モテモテね。」

クスクスとシリラさんが笑っていた。

全く他人事だからって………



「………その干からびた果物は何だ?」

ワチャワチャしていた樹生に厨房にいた料理人が声をかけてきた。

どうやら梅干しが気になったようだ。


「食べてみます?こんな見た目ですけどイケますよ。」

渡すと、少し躊躇しながら手に取っていた。


「‥………酸っぱい匂いがするけど、腐っては無さそうだな。」

暫く眺めたり、匂いを嗅いだりした後ついに口に入れた。


「!!!!!!!!!!酸っっっっっっっっっぱぁ!!」

口をすぼませ悶絶していた。


ナイスリアクション!ありがとう!!


「ははっ、俺は慣れてますからそのままでも食べられますけど始めてだと衝撃が強いですよね。」

樹生も始めて梅干しを食べた時の事を思い出した。

母親に我慢しなさいって言われて口の中に放り込まれたのが初梅干しだった。余りの衝撃に吐き出しそうになったが何とか飲み込んだ。…………種ごとである。


「うぅー………種は吐き出すしかねぇか。」

ぺっと種を吐き出す料理人さん。

「これをどう食べるんだ?」

興味ありげに質問してきた。料理人として興味が湧いたのだろう。


「このお米っていう穀物と食べるんですよ。あと油の強い肉なんかのソースにも合いますね。さっぱりして美味しいですよ。」

樹生が米という単語をはっすると料理人さんは驚いていた。


「米を食べるのか!?あの家畜の餌を!?」


ピクッ


「どうやっても火が入らなくてカチカチだし、水でゆでてもべちゃべちゃになるし、そのくせ量だけは大量にあるから結局家畜の餌になるあの米を食べるのか!?」


ピクッピクッ


「あんたという人は………悪食も過ぎるとただの変態だぞ。」


………無知は罪であると言うことを教えて上げよう。


「分かりました。そこまで言うなら見せてあげましょう。米の可能性を。」

樹生は炊いておいた米を取るとおにぎりを作り始めた。

中には先程の梅干しを入れ海苔を巻く。

シンプルだがこれが一番旨い。


「食べてみてください。印象変わると思いますよ。」

「…………俺は一人の料理人だ。。これが家畜の餌だろうと食えて美味いならいくらでも使ってやる!!」

ばくっとおにぎりを頬張った。


もぐもぐ…………もぐもぐ…………


最初は目をギュッとつむり耐えるように食べていたが、徐々に美味しさに思考が追い付いたのだろう。味わうようにもぐもぐ食べていた。



「…………‥‥美味いな。これは美味い。」



驚愕に目を見開きながらおにぎりを見つめる料理人さん。どうやら彼の魂に火をつけられたようだ。


「最近の貴族の坊っちゃんどもが飯が不味い不味いって騒がしくてな。辟易してたところだったんだ。」


ガシッと両手をつかまれる。


「だが、あんたのお陰でやる気が出てきた!教えてくれ!この米って奴を!」

さっきまでの警戒ッぷりはどこえやら。

だけど、お米の美味しさに気付いたなら最高である。


「分かりました。そしたら他にも色々レシピがあるのでそれも教えますね。」

「ありがたい!これで新作もバンバン出せるぞ!」


大喜びする料理人さん。


「そういやぁ、まだ名乗ってなかったな。俺はイドだ。一応ここの料理長をやってる。」

「イドさんですね。自分は樹生と言います。良かったらこれ使ってください。」


樹生は何冊か料理本を渡した。もちろんホワイトマーケットッで購入したものである。


「………本当に良いのか?結構しただろこれ。」

この世界では本が貴重品だという。製本技術がまだ進歩しておらず量産が難しいとのこと。


「思い切り使い込んで下さい。もし他の本が欲しかったら依頼してください。届けますから。」

イドさんは深く頭を下げるとダッシュで厨房から出ていった。


「明日から忙しくなるだろうな。」

樹生は止めていた料理を再開した。



「…………………うっ、うぅ………」

「………………ここは?」


ちょうど日が沈んだ頃二人が目を覚ました。


「!!  アリス!マーヤ!」


セスさんが二人にかけよっていた。

回復魔術師によると目を覚ますまでもう少しかかると言われていたが、さすがの回復力である。


「身体は大丈夫?変な所はない!?」

二人はまだ意識が朦朧とするのか頭を押さえていた。


「セスか‥……あたしには何が何だか……」

「…………いったい何があったの?」


記憶が混濁している二人にセスさんは状況を説明した。


「……………という感じよ」


「マジかよ………信じられねぇけど……」

マーヤさんが手を握る。

「何となく………理解できたよ。一瞬感じたアレはヤバいって」

「……………そうね。今になって分かるわ。不気味ね……」


マーヤさんとアリスさんは不気味な気配を肌で感じ取っていたようだ。


「本当に……二人が無事で………良かった!!」

三人で無事だったことを喜びあっていた。

いつ死ぬかわからないこの世界でこの一件は奇跡と呼ぶにふさわしい。


一方その頃、



「…………………入りづらい。」

扉の前でいつ入るか迷う樹生だった。











樹生が持っている財宝の数々…………まだまだ凄いものが隠れてそうです。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!!

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