39. 次の目的地
う~ん、それにしても腑に落ちないわね。
あら、ウェンディが考え事なんて珍しいわね。」
「ちょっと、どういうこと!?私だって色々考えてるわよ!」
食事が終わり器具の片付けをしていた時、樹生はあることが気になった。
「フウナさん、この世界にお風呂ってあるんですか?」
「お風呂?あるわよ。」
なんと!異世界なら水浴びやタオルで汗をふくくらいだと思っていたが……
「よろこんでる所悪いんだけど、一部の金持ちと貴族、王族くらいしか使ってないわよそれ。」
「そうね。人間がお湯を沸かすの大変でしょう?それも毎日大量に。」
………確かに。時間もかかるし火を起こすエネルギーの問題も無視できない。だが、金を持ってる人達はその全てを解決できるだろう。
「まぁ、それもそうか。…………て言うかフウナさんとシルエルって何で人間の暮らしに詳しいの?」
前々から思っていたことだがこの二人の知識が高すぎる。
「?、何を言い出すかと思えば………。私がいったい何百年生きてきたと思ってるのかしら?」
「そうね。私はフウナほど長くはないけど、暇な時はよく街に出てたわよ。」
「…………なるほど。納得です。」
「まぁ、良いことばかりでは無いけどね………」
「確かに……」
フウナさんとシルエルが「「はぁ………」」とため息をついていた。
…………二人がため息をつく程のことなんて、一体何が。
しばらくの沈黙の後、
「………この話はここまでにしましょう。それより明日からどうするのかしら?」
露骨に話を反らしたフウナさんであった。
「う~ん………とりあえずロックバードを捕獲しないとな。本来の目的なわけだし。」
今さらだが本来の目的を達成できてない。そのために明日は……
「ワフっ?(これ?)」
クウの声に後ろを振り返るとでっかい鳥が気絶していた。
「うわっ!?な、何だこいつ。いつの間に……」
全身が岩のような鳥。まさに名前の通りだろう。
どうやらいつの間にか散歩に行っていたクウが見つけ捕獲したようだ。
「あらあら、明日の予定が1つ潰れちゃったわね。というよりこんな雑魚が塩漬けクエストだなんて……。」
フウナさんは少し残念そうに呟く。
「それなんですけど、これは別なんですよ。」
樹生は依頼書を見せながら説明する。
「カンドラに行く途中に魔術学院があるみたいで、授業で使うみたいなんです。」
聞いた時は驚いたものだ。こんな危険な魔物を授業で使うなんて流石は異世界である。
「魔術学院?………ああ!思い出したわ、グラニア魔術学院。確かにあるわね。」
「それじゃあ次の目的地はグラニア魔術学院かしら?」
フウナさんの言葉にコクっと頷く。
まぁ急ぎでは無いからな。ゆっくり行っても……
「この分だとロックバードが途中で起きちゃうわね。」
「そうね。さっさと向かいましょう。」
…………どうやら俺の願いは叶わないらしい。
ジェットダッシュ確定のお知らせである。
「とりあえずロックバードはしまっちゃいましょう。」
フウナさんはそう言うと宝物と一緒に手に入れたアイテムバックにロックバードを詰める。
どうやら、俺の保管庫とは違うようで生き物を入れることが出来るようだ。
「やっぱり便利ねこれ。他にも役立ちそうな物がいくつかあったから後で整理しましょうか。」
フウナさんはそう言うとあくびをしながら眠る態勢に入った。
シルエルもすでに船をこぎ始めており、クウに至ってはすでに夢の世界へと旅立っていた。
「……………寝るか」
樹生は器具をしまい、そのまま眠りについた。
「······························」
トクン……トクン……
封印が解かれたことにより、息を吹き返した伝説の生き物。その正体を樹生はまだ知らない。
魔術学院……まだまだカンドラまでの道は長そうです。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!




