32. 依頼完了
あ、ああ……魔力が………無くなって………
ふふふ、素敵な使い方じゃない。
村の広場には巨大な鍋がふつふつと煮えており、その周りでは村人達が談笑していた。
「なるほど……フウナ殿はエンシェントウルフであると。
ああ、死ぬ前にその姿が見れて感無量です……」
「すげぇ~……カッコいいなぁ!!」
「あらあら、そんなに褒めても何もでないわよ?」
フウナさんは口ではそう言うが、とても嬉しそうであった。
一方、シルエルとクウはというと……
「行くわよ!それ!」
「アオン!(それ!)」
大きな稲妻が巨大な龍になって空へと舞い上がっていった。
「うおぉぉ!!すげぇ!!」
「綺麗ね………」
大人も子供も目を輝かせて、龍を見ていた。
…………どうなってんのアレ?
樹生は稲妻の龍が舞い上がって行くのを見ながら、そう呟いていた。
クウもどんどん力量をあげているようである。
「タツキさん。隣良いですか?」
そう声を掛けてきたのは、一人の青年だった。
「大丈夫ですよ。所で貴方は?」
「挨拶が遅れました。自分はアルと言います。……この村を救っていただきありがとうございます!!」
アルと名乗った青年の樹生に頭を下げた。
「ええッと?アルさん。頭を上げてください。俺は俺に出来る事をしたまでです。」
「!!。……本当にありがとうございます!それにこんな美味しいご飯まで………必ず恩返しします!」
いい人である。
樹生は見返りを求めて行動したわけではないが、こんな風にお礼を言われると嬉しいものである。
「…………それではいくつか質問してもいいですか?」
樹生がそういうとアルさんはコクっと頷いた。
「一週間前ここに来た勇者と名乗る人物はどんな人でしたか?」
「あの人ですか?よく覚えてますよ!黒髪、黒目で歳はタツキさんと同じくらいだと思います。あと………これが……」
アルさんが地面に絵を書き始めた。
………何かのシンボルのようだが
「………アンギス帝国の紋章です。」
マジかよ!!
ここであの国が出てくるのか!
「なるほど………あの国がですか」
「はい。最近になって行動範囲を広げてるみたいです。悪い話もちらほらと……」
きなくせぇ………
っていうかドラゴンゾンビの件も絡んでそうだが……
「まぁ関わらない様にしますよ。それが一番です。」
既に首を突っ込んでいる気もするが………気にしないでおこう。
「そうしてください。もしあの国の人がここに来ても今までの事はなかったこにしますから。」
「ありがとうございます。村の方はこれからどうするんですか?」
アルさんの目はイキイキとしていた。
「以前よりももっと豊かにしていきますよ。それに森も川を前より元気が良さそうに見えます。次期村長としてやりがいがあるものです。」
次期村長?てことは……
「おーい、アルー!何しとるんじゃあ?」
「ああ、父さん!無理しないで。今行くよ!」
アルさんは「では、これで」といい父親の所へ向かった。
この村は運が悪かっただけなのだ。アンギス帝国の人間が来たのも、フォレストドラゴンがゾンビ化したのも、瘴気の影響で病魔が蔓延したのも、例えそれが仕組まれたものであったとしても………
(これから先この村がもっと豊かになりますように。)
樹生は仲良く話す村人達を見ながらそう願い、その日は床につくのだった。
「何とか………わね」
声が聞こえる……気のせいか?
「まったく………ためたのに……」
まただ、なんなんだ?
「て!早く…………なさい!」
うるさいなぁ……今寝てんだよ……
「起きなさい!時間がないの!」
「なんなんだよ………いったい……」
目を開けると謎の空間にいた。
宇宙空間?のようだが息は出来る。
てことは………
「夢の世界か!」
「そうよ。話が早くて助かるわ。」
絶世の美女とはこういう人の事を言うのだろう。
「初めまして。異世界人くん。私は風の女神ウェンディ、貴方に信託をするからよく聞いてちょうだい。」
…………ゴクッ
「何でもいいわ。甘い物を捧げなさい!今!すぐ!」
……………………ああ、なるほど。この神様は……
「早くしてちょうだい。この世界の維持は大変なのよ。」
「…………………わかりました。ちょっと待っててください。」
樹生はいくつかの高級な菓子類を購入した。
「どうぞ。納めください。」
ウェンディ様はニッコニコで菓子類を受け取った。
「ありがとね。また次もよろしくね!」
瞬間視界がぐにゃっとなり…………
「気づけば朝だったと………」
周りではフウナさんやクウ、シルエルが寝ており、村人達も眠っていた。
「………………女神様はダメ神様だったと。良くあるテンプレだわこれ。」
樹生の頭痛はさらに痛くなっていった。
ついに女神様の登場!
やはりダメ神でしたね笑。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!




