17. 卵と鶏肉
あの人間……何者?
というわけで、晩飯の時間である!
「まず、玉ねぎ!薄くスライス!」
手慣れた、包丁さばきが炸裂!
トン、トン、トン
「慣れてるわね……。前の世界では料理人か何かだったの?」
「そういう訳ではないんですけど……じわじわ来るな……急がないと」
少しずつだが目にダメージが入り始めていた。
6個の玉ねぎを切り終えた。樹生の目は無事だった。
「次は、人参のスライス」
2本を千切りにして野菜類の切り物は終了
「サンダーバードの肉は一口サイズに」
フウナさんが見つけた肉屋で買ったもの。
「サンダーバードは雷雲に生息する鳥なのよ。高い雷属性耐性が特徴かしら。」
「クウゥーン?(じゃあ、どうやって倒すの?)」
「あら、クウいい質問ね。簡単なことよサンダーバードがいる雷雲を吹き飛ばして遠距離から魔法で仕留めるのよ」
親子で仲良く話していたが内容がぶっ飛んでる……
何だよ雷雲に住んでるって
何だよ雷雲吹き飛ばすって
ここ実はグ○メ界だったりする?
「まぁ、あの親子ならやりかねないか……おっと、いい感じに煮込めてきたな」
玉ねぎ、人参、サンダーバードの肉、醤油、酒、味醂、鰹だし
「卵とじ風にして……」
くつくつと優しく火をとうして
「ご飯の上に味海苔を振りかけて盛り付ければ!」
「サンダーバードの親子丼の完成!」
ダラダラ……
正直びっくりした。
ホラーものでよくある振り向いたら化け物が的な奴。
「ど……どうぞ……」
ガツガツ!
今回も上手くできたようだ。
「さてと、いただきま……」
「おかわりよ!」
「アオン!」
その後樹生が食事にありつけたのは一時間近く後のことだった。ちなみに味は最高に旨かったようだ。
「タツキ、明日はギルドに行くのよね?
フウナさんは眠るクウを愛おしそうに見つめながら話しかけてきた。
「その予定ですね。話が終わった後何らかの依頼を受けようかと……あ!それと……」
樹生はフウナさんのほうを見るとある提案をした。
「とりあえず、フウナさん達はキングウルフの変異種という設定で行きましょう」
フウナさんが少しムッとした表情になった。
「そんな顔してもダメですよ。俺の知識上強すぎると"絶対"
面倒くさいことに巻き込まれるんですよ……」
政治上のいざこざとか、戦争とか色々と。
「……わかったわよ。とりあえず、そういうことにしておくわ」
「ありがとうございます。それじゃ明日も早いですからもう寝ましょう」
樹生はベッドの中に入り……
もぞもぞ……
皆で一緒に寝ることにした。
「ドナンさん……」
「うん?ああ、その件か。そこに置いといてくれ」
数枚の資料を持った女性にドナンと呼ばれた男が指示を出していた。机の上には整理された"依頼書"が山積みになっていた。
「ドナンさん、少し休んだらどうですか?もう数日寝てませんよね?」
「ありがとうな。だが、ここで休むわけにはいかねぇのさ。それに……」
(今日あったあの男。キングウルフだと言っていたがありゃ嘘だな。)
彼はフウナさんの正体に気づいていた。
「どちらにせよ、使えるもんは使わせて貰うぞ」
"デビルスネーク討伐依頼書"
"キマイラ討伐依頼書"
"ミスリルゴーレム依頼書"
彼は物騒な名前の依頼書の"束"を見てそう呟いた。
なんだか物騒な物が見えましたが、一体どうなることやら……。それはそうと親子丼です。まあ正確に言えば親子ではないですが(笑
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!