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○月生まれの・・・

作者: 旭 河埜
掲載日:2019/09/01

 僕のクラスには十二人の女子がいて、生まれた月がみんな違った。要は一月から十二月まで一際かぶっていないということ。とても珍しいクラスだと思う。


 一月生まれの彼女は、踊るのが好きだった。踊っている間の彼女は、教室での冷たく近寄りがたい雰囲気とうって変わって、滅多に見せない笑顔を浮かべながら、茶色いポニーテールをなびかせて。とても楽しそうに踊っている。

 暇なとき、彼女が踊っている屋上に行くと、彼女は

「何見てんのよ。」

と言いさえするものの、追い払おうとはしなかった。

 ある日、彼女は辛かったり悲しかったりをぶつけるように踊り狂い、得意のジャンプで低いフェンスを跳び越えて、転落死した。


 それが呪いの、拾弐ヶ月という呪いの始まりだったのだ。


 二月生まれの彼女は、歌が得意だった。明るい朗らかな人物で、全クラスから好かれていた。合唱の時間は、彼女の歌声が一際よく響き、聞いている者の心をしっかりとつかむのだった。

 彼女は留守番中、忍び込んだ強盗に喉を刃物で裂かれ死亡した。


 三月生まれの彼女は、草花に詳しかった。理科の授業で植物を探しに外へ行ったとき、その辺の草の名を一つ一つつぶやきながら、草原を駆け回っていたのを覚えている。

 そんな彼女が何を間違ったのか、山菜採りでラッパズイセンを摘んでしまい、それを食べて中毒で死んだ。


 四月生まれの彼女は、空の様子に詳しかった。

「あの雲は雨が降る。」

「太陽の周りに輪ができると明日は曇る。」

など、一緒に寝転がって天気を予想しあったものだ。

 彼女は台風の日に外に出て、飛んできた看板が頭に当たり死んでしまった。


 五月生まれの彼女は、岩石、化石、宝石など、石と名のつくものは全て好きだった。帰りが一緒だったのだが、一人川岸に降りていき、岸の石を毎回一つ拾って帰って行くような今までのどの子より不思議な子だった。

 彼女は小雨が降った日に、いつも通り石を拾おうとして滑って転倒し、後頭部をぶつけた。打ち所が悪く、そのまま死亡した。

 

 六月生まれの彼女は、本がとても好きだった。休みには必ず図書館に行き、本を舐めるように見ていくのだという。後で図書館の司書さんに聞いた話では、そのときの彼女はとても幸せそうだったという。

 彼女は図書館にいるときに大きな地震に襲われて、倒れた本棚の下敷きになって死んだ。


 七月生まれの彼女は、海の子だった。海の子、というのは例えだが、それほど海に魅了された子だった。泳ぎも上手いので、きっと彼女は自身の魅了されている海がよく似合うだろうなと思っていた。

 彼女は人生で二回目の海で、大波に攫われて、溺れて亡くなった。


 八月生まれの彼女は、女子には珍しく虫好きだった。虫の図鑑を借りて教室で読んでいるのもよく見かけた。他の人が気持ち悪いと言って目を背けるようなページも、表情一つ変えずに見ている。ある意味尊敬出来る存在だった。

 彼女は森林に入った時にスズメバチの巣の近くに入り込んでしまい、刺されてアナフィラキシーショックで死亡した。


 九月生まれの彼女は、いろいろな国の言葉を習得していた。英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語など、他にも数種類。話すだけでなく文字も書けたので、家族から重宝されていた。たまに会話に外国語が混ざることがあるので、彼女との会話はいつもあまりスムーズには運ばない。

 彼女は家族と行った海外旅行の最中に、自爆テロに巻き込まれて亡くなった。


 十月生まれの彼女は、車が好きだった。校外学習の移動中に、

「あ、今○○が通った。」

「あの車何て言うんだろ。ボディかっこいい~。」

などとつぶやいているのをよく耳にした。

 彼女は飲酒運転の車に轢かれて死んでしまった。


 十一月生まれの彼女は、金持ちだった。いつもしゃれた服を着ていて、服に関する相談をよくされていた。女子達のリーダー的存在だったが、いつも孤立していた一月生まれの彼女をいじめたりすることもなかったので、良いリーダーなんだなと感じていた。

 彼女は金目当ての輩に誘拐され、腕利きの警察に追い詰められた輩に殺された。


 十二月生まれの彼女は、冬生まれだけあって冬のスポーツに優れていた。中でもスキーでは、一番早いグループでも物足りない位だった。

 彼女は何があったのか、無理をしてころび、足を痛めたところを雪崩に襲われて死亡した。


 僕のクラスに女子はいなくなった。


 僕のクラスには十二人の男子がいて、生まれた月がみんな違った。要は一月から十二月まで一切かぶっていないということ。とても珍しいクラスだと思う。


 昨日のことだ。一月生まれの彼が死んだ。下校中に、工事現場から落ちてきた鉄骨の下敷きになって。

「大工になりたいんだ。」

と、教えてくれた子だった。


 女子を見る限り、そして昨日死んだ彼を見る限り、一月から順にこの世を去っていくのだろう。

 僕は十二月生まれだ。全員の死因を見ることが出来るのは僕しかいない。記録できるのも。いつか僕が死んで、記録を先生か親が見つけたら。そのとき彼らは記録を完璧にしてくれるだろうか。


 十一月生まれの彼が死んで数日たった。彼はガラス細工の店の息子で、本人もガラス細工が得意だった。


 彼は窓に投げつけられた石に当たって亡くなったそうだ。


 さて、一体僕の死因は何かな。記録を書き終えて紅茶を飲んだ。途端に息が苦しくなる。倒れた僕に店員さんが駆け寄ってくるのが見えた。微笑みながら思った。毒殺か。お茶を使うとは拾弐ヶ月も考えたものだ。僕のお茶好みを知っていたと見える。

 

 この拾弐ヶ月という呪いの主が、僕の後輩達に、この恐ろしく残酷な呪いを押し付けないよう祈ろう。

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