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プロローグ
山間部に存在する、とある小さな国
人口はさして多くないが、作物もよく取れ治安もよく平和な場所である。
隣国とはよく交流もあり、統治していた殿様も平和をこよなく愛していた。
城のある山の麓には神社があり、昔から武家の守り神として信仰されていた。
なかでも歴代の殿様とは深い関係があり、自身を守るご加護だけでなく、政のはからいや時として神主自らが殿を守るために従事していたこともあった。
今でもその関係は続き、武家は信仰を非常に大事にし、保護していた。
また大切な節目には、祭事を必ず行っていた。
私はその神社でなき父の跡を継いで巫女をしている。
ある時、遠方から来た旅人が旅の祈願と共にとある噂を持ってきた。
「下境の国が天下統一を狙っております。小国を併合し、賛同できぬ時は脅して傀儡として使っておるそうです。巫女様もお気を付けください。」
嫌な知らせだ。
今までの生き方を壊されて、自由を奪われるなんてどれだけ酷いことだろうか。
ずっと変わらない幸せな日常が続けばいい。
私は切に願った。