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6 スライム

 

 シスターチェスタがどこからか木靴を持ってきた。

 今、シスターたちが履いている靴も、子供達が履いている靴も木靴だ。

 教会ではファーザーロレンスが、休息日礼拝の時だけ革の靴を履いている。

 ハンターなどは革に金属で補強された靴を履いている。

 そう、木靴と革靴の価格は革靴の方が圧倒的にお高いのである。


 ちなみにシスターチェスタが持ってきた木靴はブラザーニックと、去年巣立ったボブスが作った木靴だ。

 僕を丸太を切り出しただけの椅子に座らせ、シスターチェスタが靴を履かせてくれる。うん、ブカブカですっぽ抜けそう。

 音がして、ボロ布を詰めては履かせるを繰り返し調節してくれる。


 シスタータバサは棚から青い粉の入った瓶と乳鉢を取り出し、青い粉をスプーンで乳鉢に入れていく。

 何だろう?


「リューク、触ってはいけませんよ。青スライムの粉は毒ではありませんけど、食べ物ではありませんからね」


 シスタータバサは瓶を僕の手の届かないところに移してから、乳鉢に水を入れ、混ぜ棒でコリコリとかき混ぜ出した。


「こんなものかしら」


 混ぜ終わった乳鉢の中には青いゲル状の液体があった。それをボロギレに浸し、靴底に塗っていく。


 青スライムか。

 スライムはモンスターの一種だが、割とどこにでもいる。

 青だけでなく、赤、黄、緑、紫とその種類は豊富で、色によって吐く毒が違う。

 スライムは毒を吐くのだ。

 大きさもまちまちだが、ぶよんぶよんした饅頭型の透き通ったボディの中に、核といわれるものを持つ。

 スライムはその核を取り出すか壊すことで倒せるのだ。

 だが饅頭型のボディ、外殻と言われる部分を刺激すると毒を吐き出すのだ。


 スライムの動きは緩慢で、十歳の見習いでも正しいやり方さえ知っていれば倒せるモンスターだ。

 ごく稀に変わった動きをする特殊個体とかもいるそうだけど、そういうのはレア中のレアだ。


 スライムの吐き出す毒は、ボディの色によって違う。

 青は弱酸。触るとかぶれたりただれたりするが、薄めて除草剤とか、木の表面をつるりとさせるための加工に用いることができる。

 赤は可燃。人肌で発火する燃えやすい液体で、かぶると燃え出して火傷をしてしまう。着火剤やランプの燃料として使われる。

 黄は硬化。人肌で固まり、一度固まると元に戻らない。綺麗な黄色なので中に花びらを閉じ込めたりして、琥珀みたいなアクセサリーを作ったり、凝固剤として使われる。

 緑は強酸。金属も溶かすその毒をかぶると、人の体も溶けるのだ。金属加工の際に、薄めて仕上げ材として使ったりする。

 紫は死毒。本当の毒でかぶったり身体の中に入ったりすると徐々に体力や生命力を奪う。酸のように溶かされることはないので、ハンターなんかが鏃やナイフに塗って使ったりしている。

 これ以外にもまだ色はあるが、よく見かけるのはこの五色だ。


 スライムの毒はなぜかガラスは溶かさない。捕まえたスライムをガラスの器に入れて振ると、毒を吐き出すので毒を有効利用することができる。

 毒は一定量(外殻の半分)吐き出すとそれ以上吐き出さないので、そうしてから核を壊すか取り出して倒す。

 壊さず取り出した核を放置するといつの間にか外殻が大きくなって復活するので、職人はスライムを飼ってたりする。

 外殻はカピカピに乾燥させてから粉にする。それをスライム粉というのだ。粉を水で溶くと乳鉢の中のようなゲル状に戻る。使用目的によって水分量を変えるのだが、今回は滑り止めなので適度に弾力を残すために水は少なめだ。


 青より赤の方がさらっとしている、黄色の方が弾力が少ない。

 ちなみに礼拝堂のステンドグラスは、ガラスの上に黄色のスライム粉を主成分に各種混ぜて色を作り塗っている。

 色ガラスより安くつくのだ。

 スライム粉だけだと割れやすく大きなものは作れない。

 ん、どうして僕はスライムの加工法を知ってるんだろう? 母さんに教えてもらったのかな?




「乾いたわね、こんなものかしら。リューク履いてごらんなさい」

「あい」


 シスターチェスタに椅子から降ろしてもらう。


 カッポカッポカッポ、ぽてん。

 カッポカッポカッポ、ぽすん。


 あれ、三歩しか歩けないし、尻もちをつくぞ?


「ああ、慣れるまでちょっとかかりそうだねぇ」


 シスターチェスタ歩く僕を見て首をひねった。

 せっかく十歩以上(要休憩)歩けるようになったのに、またここから練習?


「靴を履いて外を歩くのはまだ無理みたいね」


 シスタータバサが僕を抱き上げた。

 教会の中でも孤児院以外で、僕が自由に歩き回れるのは障害物の少ない礼拝堂の会衆席の身廊と側廊くらい。内陣にも入れない。

 シスターたちの作業場のある右棟は抱っこ移動だ。


 三歩進んで二歩下がる的な状況に、僕の力も抜けて、抱っこ移動に身を任せた。


 アイリス、ごめんね。僕もう疲れ(re……


 

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