序章Ⅱ 神之世界
遥か昔。神話時代『ハラリエル』では、全ての神々の始祖たる存在である二柱、
極神龍である始祖之帝カオスと超女神である始祖之妃ガイアによって、
神々が暮らす五つの世界の最高位の世界『ユグドラシル』が庇護されていた。
ユグドラシルでは神々の幹部として
森羅万象を司るゼウス。
そしてゼウスの使者であり、配下である
神疑似者ミカエル
神告知者ガブリエル
神癒行者ラファエル
神光炎者ウリエル
の四柱の天使がいる。
更に、十戒神であり十戒全てを統括する者でもある、唯一神ノアもこのユグドラシルに住んでいる。
唯一神ノアを筆頭に、慈愛神・真実神・信仰神・不殺神・沈黙神・純潔神・安息神・忍耐神・無欲神の九神がいる。十戒の神々はユグドラシルの守護神である。
神之世界の中央都市ユーダイル。
その中心の巨大な神殿ヴィンゴルブではゼウスとその他の幹部達がカオス等に呼び出された。
「ゼウスよ、我の言葉を魂に刻むがよい。近々二千年以内に第二の災厄が起こる。
その災厄は、我等の世界『神之世界』と、英雄神の住む世界『英雄世界』とで起こった『神々之戦』を凌駕するであろう。
世界が五つに別れて以来の災厄『終焉之時』が起こるのだ。」
ゼウスはその言葉を聞き驚愕した。
森羅万象を司るゼウスが一度生死を賭けた大戦争『神々之戦』を凌駕する災厄が降り注ぐのだ。彼にはどれ程の事かイメージができなかった。
事実として、ゼウスは英雄神の中で二番目に強いとされる種族『北欧英雄』の最強の英雄『ジグムンド』と争った際に一度死を経験している。死と言っても、カオスによって直ぐに蘇生が施されたのだが...
―神之世界の中で最強の幹部であるゼウスが、一度死ぬ程に神々之戦は激しい災いと為った。
しかしカオスはその災いをも凌駕すると言ったのである。
神々之戦では両者に甚大な被害が齎された。
神の軍団である十戒兵は数にして1200万名の壮大な規模の軍勢だった。
英雄の軍団であるティタン兵は1000万名と数は劣るものの戦力としては五分五分であった。
だが大戦後は軍勢の99%は消滅。
十戒兵は12000名に。ティタン兵は10000名へと減少したのだ。
民等も戦前は神之世界は1億名。英雄世界では1億5千万名だったのに対して、大戦後はその99%が消滅した。
神之世界からは始祖之妃によって放たれた始祖之怒によって英雄世界の周辺都市が壊滅し、中央都市ヴァナヘイムの20%が吹き飛んだ。
英雄世界からは、英雄之神から放たれた英雄之誇によって神之世界の周辺都市は壊滅。中央都市ユーダイルの30%程が吹き飛ばされた。
その様な歴史に大きく名を遺すであろう大戦を経ていて、二千年程度の期間では元の軍勢には回復することは不可能であろう。
「恐れながら、我が始祖よ。二千年程度では我らの軍勢を強化することは愚か、回復することも儘ならないでしょう。」
ゼウスは予感していた。我が始祖達が思案して出した答えを。
しかし、ゼウスはその様なことは不可能だと思っていたのである。
「我が僕よ、お前も我等の考えを予感しているのだろう?
五つの世界が同盟を結び、災厄の元凶と共闘するのだ。」
「始祖よ。神之世界と英雄世界、人間世界の同盟は容易に遂行できるでしょう。ですが妖怪の住む、闇之世界と魔族が住む、魔之世界との同盟など始祖の産まれた最初期『始祖時代』の時代ですら無かったでしょう。
神之世界と魔之世界は常に敵対関係。
共闘は愚か、我等が滅亡へと誑かされることとなりましょう」
神之世界と魔之世界は言うなれば対なる世界なのである。
始祖之帝であるカオス。そして始祖之魔であるサタン。
両者は始祖時代の頃からの宿敵であり協力は愚か、騙し騙されの繰り返し。
ある時は都市を消滅させた。ある時は幹部を抹殺した。
またある時は技術を奪った。
そういう永劫の時を経ても尚の事決着が着かずにいる超宿敵。
カオスはその宿敵と同盟を結び共闘する、と言っているのである。
心とは皮肉なことに、自分達の危機が来れば敵とすら協力するのである。
「しかし、サタン様は500年前に深き眠りに着き、後200年は目覚めることは無いかと...」
「その様なことは既に知っている!!我を誰だと思っておるのだ!」
「失言、どうかお許しください。
さすれば、妖怪の住む世界『闇之世界』へ向かえばよろしいのですね?」
「うむ。そういうことだ。」
「出発はいつ頃に致しますか」
「20年後を予定する。場合によっては直ぐに行く」
「御意」
世界を収める世界支配者は各世界を行き来することができるのだ。
ただし、他世界に行くにも条件なるものが存在する。
それは支配者の了承である。
では戦争はどこで行うものなのか?というものである。
それは五つの世界で最も下位であり、技術も劣っている人間世界で行う。
自世界よりも格下の世界へは了承無くして行き来できるのだ。
各位としては
神之世界=魔之世界
英雄世界=闇之世界
人間世界
であり、一番格下なのが人間世界である。
次位である英雄と闇の世界ではダメなのかという疑問が生まれるが、明確な理由が一つある。
それは『属性』だ。
神々の属性は『天』副属性として『光』
魔族の属性は『魔』副属性として『闇』
人間の属性は『無』副属性は無い。
予想が着いた人もいるかもしれないが、
英雄の属性は『光』副属性は無い。
妖怪の属性は『闇』副属性は無い。
そして、世界を収める支配者の属性はそのまま世界の属性になる。
詰まりは、英雄世界か闇之世界どちらかを選ぶと
どちらかが有利になり、どちらかが不利になる。
そしてどちらも平等に力を発揮できるのが人間世界ということである。
人間の歴史書に『神話』や『悪魔』などの書籍があったり、『神への信仰』があったりするのは
そういう理由があるのだろう。
そして、決着が着かずに永劫の時を過ごし両者とも弱っている隙に次位世界からの下剋上が起こされた。神之世界には英雄世界が、魔之世界には闇之世界が反逆してきたのだ。
神之世界と英雄世界は既に互いを許しあい引き分けとなった。
魔之世界と闇之世界は途中で始祖之魔と天逆毎が深き眠りに陥り引き分けとなった。
この下剋上を『反逆大戦争』と名付けられた。
また神之世界と英雄世界の戦いを『神々之戦』
魔之世界と闇之世界の戦いを『妖魔大戦』
と名付けられた。
そして、人間世界より天が『天界』地が『魔界』と名付けられた。
「皆の者、ご苦労であった。これにて我の告げは終わりにする」
「「有難きお言葉、感謝致します!」」
「うむ、では各々帰るがよい!ゼウス、お前は残れ」
「御意」
一瞬で他の上位天使は去っていった。
「ゼウスよ、世界は幾つある」
「五つに御座います」
「その通りだ。だが我は気づいたのだ...世界はもう一つある、と」
「そのような事あり得るのですか!?」
驚愕驚嘆するゼウスにガイアは言う。
「カオス様の仰っていることは本当だと思いますわ。
私もその波動を感じましたの。そう、今までに感じたことのない恐怖の波動を」
「ガイアまでもが感じたこの波動、恐らくはもう一つ世界、いや世界とは呼べない何か別次元のものかもしれない。」
神の始祖達はとても焦っており、既に手遅れかもしれないと溜息をついた。
「しかし、できたばかりならばそこまで脅威にはなり得ることは無いのでは?
力を蓄えていないなら、脅威になる前に叩けば良いのでは?」
そこから始祖達は沈黙し、金属で固定されたような重い口を開いた。
「その世界は...『始祖時代』の頃からあるものだと思われる...」
「!!!」
「ゼウス、言葉にできないほど驚くのはわかりますわ。
私もこれを知ったのはついさっきですもの...災厄は恐らくそこに発生したのでしょう」
「今まで気づかなかったのは脅威になり得る可能性がなかったからなのだ。
そうでなければ始祖世界から存在した我等が気づかない筈がない。」
「では、その不確定世界に終焉之時を引き起こすであろう災厄の元凶が生まれた...
ということですか?」
「恐らくはそうかもしれませんね。その生まれた時のエネルギーが波動となって私達の魂に恐怖を与えたのでしょう。」
この日。超空間世界の一つである五つの世界とは別次元のもう一つの世界『災厄世界』またの名を超魔界にディザスタリングが誕生したのだ。
補足ですが、五つの世界と災厄世界はディザスタリングが生まれたことにより並列時間に成ったので
カオスとガイアが気づきました。
それまでの始祖時代は流れる時間が違ったので気づかなかったのです。