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3

浄化作用のある土地は珍しくない。


悪いモノが集まらない清浄な場所なのに、わざわざ災いを言いふらすなんて…。


深く息を吐きながら、わたしは立ち上がる。


「じゃあちょっと電話してくるわね」


「うん。お願い」


言いたいことを言ってスッキリしたのか、サアヤはポットからハーブティーを注いで、機嫌良く飲む。


わたしはリビングを出て、ダイニングキッチンへ向かう。


そこには母がいて、ソファーに座ってテレビを見ていた。


「お茶のお代わりがいるなら、持っていったのに」


「ううん。ちょっと電話連絡する為に来たの。テレビの音、低くしてくれる?」


「分かった。…おや、この旅館…」


「えっ?」


『旅館』と言う言葉に、携帯電話を手にしながらわたしはテレビを見た。


テレビに映っていたのは、例の旅館と女将の写真だった。


「うそっ!」


わたしはテレビに駆け寄る。


アナウンサーの話しでは、今朝、女将が首を吊って亡くなっているところを、旅館関係者が発見したらしい。


「ちょっ、サアヤ! サアヤ、来てっ!」


大声で呼ぶと、サアヤは慌てて来た。


「どうしたの? ノウコさん。…って、アレ?」


サアヤはテレビを見て、固まった。


「…何か見たことのある旅館と女性の顔」


と言うけれど、すでにどこの誰だか分かっているのだろう。


顔が引きつっているのが、証拠だ。


アナウンサーは更に、最近旅館で起こっている不審な事故の原因が、女将であったことを語る。


それで警察は動き出そうとした矢先の出来事だったらしい。


「…動くの、ちょっと遅かったわね」


わたしは携帯電話をテーブルに置いた。


「っちゃー…。言わんこっちゃない」


サアヤはため息をつき、ソファーに座る。


「アンタ達も知ってたのかい? あの旅館のこと」


「母さん、知っていたの?」


「アタシは何度か相談が来たからね」


旅館に勤めていた人達や、旅館に実際に泊まった客達から、相談を何回か受けたらしい。


対処法としては、旅館に行かなければ大丈夫だと言ったらしいけど…。


「でも今度は大変だろうな」


母は眉間にシワを寄せ、テレビを見つめる。



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