不作のち、たわわ
「咲、ようやく大人になったな」
喜色満面のタキトゥスに咲の顔は引き攣った。
だが、言いたいことが多すぎて何を口にしていいのかわからない。
「・・・」
お前は子どもだと思っている相手を番にするロリコンなのか? とか、妊娠8カ月を過ぎたこの膨らんだ腹が見えないのか? とか、言いたいことがたくさんある。
しかし、それよりも何よりも、考えたくなかったし、知りたくなかった。
アークデーモンは女性が大人になったかどうかを胸で判断することを。
咲は異種族の違いをまた思い知らされる。
番にするまでは毎日のように「まだ大人にならないのか?」と言われ続けていたので、タキトゥス特有の挨拶の言葉だと思うようになっていた。
それがタキトゥスの心境だったのだと知らされ、打ちのめされないだけのメンタルを咲はしていない。
黒髪の男の顔を咲は呆れた顔で見た。
子どもはアークデーモンの繁殖力の問題で出来るのは遅いか無理だろうと思っていたが、タキトゥスの言う通り異世界人だからかすぐに出来た。番でない場合、ほぼ無理だそうだ。番でも数千年に一人しかできないそうだが、そこは異世界人だからか、咲の寿命にあわせた確率で出来てくれた。
寿命が違いすぎる件もタキトゥスが調べて何とかしてくれるかもしれない。というか、なんとかなるかもしれない。咲は異世界の人間だから。
咲は今日もアークデーモンの常識に振り回されながら、地球ではない世界で生きている。