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4.調査

 私たち中を調べるグループは、まず全員の部屋を調べることにした。外のグループの人にも承諾を得て全員の部屋をめぐる。

 まずは一番奥の部屋であるLakeさんの部屋からスタートした。

「そういえば、Lakeさんとロビーですれ違ったわよね」

「確か九時半……より後ぐらいかな。白鳥さんに氷の彫刻をプレゼントしようとしてね。ほら、あの時右手にクーラーボックス持ってたでしょ?」

 部屋に入って、Lakeさんはまずクーラーボックスを開いて見せた。とてもきれいなティアラが不思議な光を放っていた。

「ほぉ、よくできてるな。でもプレゼントしたならなんでここにあるんだ?」

 大野さんの疑問は私も思ったことだった。

「白鳥さんの部屋をノックしても何も反応無かったから……。聞こえなかっただけかもしれないし、もしかしたらその時はもう……」

「何時ごろですか?」

「Mikoちゃんと会ったすぐあとよ。はぁ、もしかしてもう中はあぁなってたのかな」

 すこし悲しそうな目をするLakeさん。私は話題を逸らそうと「クローゼットの中とか大丈夫ですか?」と聞く。

「えぇ、明日着る衣装しかクローゼットにはかかってないと思うけど」

 Lakeさんの言う通りであまりクローゼットには服がかかっていなかった。

「ベッドの傍に彫刻のための道具とかあるわよ」

 もちろん、彫刻に使うわけだから刃物なわけだが、綺麗に整頓されていて、違和感は何も感じなかった。あとは、クーラーボックスがもう一個あって、そこには氷の塊が何個かあった。Lakeさん曰く練習用だそうだ。

「持ってきた服はこれとこれとこれだけ。全部真っ白でしょ? あと他も好きに調べていいわ」

 調べたところ、全然怪しいところはなかった。というか、Lakeさんは仕事道具以外ほとんど持ち物がなかった。彫刻刀も一つも欠けずにしっかりと整頓してある。

「そういえばLakeさんドライヤーしないんですか? 頭濡れてますけど」

 言われるまで気付かなかったが、確かに彼女の頭は濡れている。

「あ、忘れてたわ」

 フフフと不敵に笑みを浮かべる。

「私とRikoと三科さんは8時半ごろにお風呂入って、それからずっとトランプして遊んでたんだよね。でさ、三科さんは結構髪のこと気にしてるみたいで、シャンプーとかも自前の持ってきてたりしてたんだよね。私が気にしなさすぎるのかなぁ? 一応芸人だしね」

「俺たちには無縁の話だな。俺も佐中も一緒に風呂入ったけど、まぁ俺も佐中も年の割にはふっさふさだし、案外髪の毛乾かねぇんだ。さすがにもうあいつも俺も乾いてるけど。ドライヤーでも今度使ってみるか」

 長居は無用なので、無駄話をしながら次のMikoの部屋に入る。現実を直視しないようにみんな気を使っている。

「Lakeさんの部屋見てからだと、きったない部屋だな」

「しょうがないじゃん。ずっと遊んでたんだから」

「三人はずっと遊んでたの?」

 大野さんが聞くと、少しだけ考えてMikoは首を振った。

「全員バラバラの時間にペットボトルの飲み物買ってた。あの大浴場の前の自動販売機で」

「そういえば去年増設してたな」

 そんなものまで別荘につけたのか……ただの旅館じゃないか。

「その時私がLakeさんに会ったんだよ」

「帰りにはRikoさんにも会ったわ」

「え、私がペットボトル買ってからMikoがペットボトル買いに行くの少し時間差あったはずだよ。ずっと白鳥さんの部屋の前にいたの?」

「ええ。なんかせっかく渡しに行ったんだから、ちょっと気長に待とうと思ってね。結局ね……」

「Rikoと三科さんに何かおかしいところあった? ちょっと時間が長かったとか」

「うぅん、三科さんが少し長かったけど、トイレ行ってたって。お風呂場にトイレあるからそこに行ったとは言ってた」

「ほぉ」

 わざわざお風呂場のトイレを使うほどなことがあるのか知らんが、色々とあるのだろう。

 Mikoの部屋は服こそいろいろあったものの、凶器が一本も見つからない。強いて言うなら手品用のナイフだ。切れるかどうかは知らない。

 ただ、腐ってもマジシャンなので僕の知らない隠し収納場所が無いとも限らない。と聞いたところ「ある訳ない」との解答が得られた。

 Rikoの部屋も同じようなもので、凶器らしいのは先がとがったステッキぐらいだ。何のマジックに使うのかは知らない。

「本人もいないし、知らない女の人の部屋って入りづらいな」

 大野さんと同意見であるが、仕方がないので三科さんの部屋に入る。

 ギターが壁にたたってて、机の上には楽譜が何枚かあった。手書きで作曲してるらしく、色々メモ書きが書いてあったりしてる。

「なんか真面目そうな嬢ちゃんだと思ったけど、本当に真面目なんだろうな」

 服はさすがに女性人に調べてもらった。全体的に水色など明るい青系統の色が多く、最も血が付いたらわかる服ばかり揃っている。

「刃物っぽいのは、ペーパーナイフか。高そうなペーパーナイフだな」

 ペーパーナイフは最近は若干骨董品的な物と化しているので、ペーパーナイフを所持する人はあまりいないと思われる。珍しいな。

 三科さんの机の上には写真が一枚あり、水着姿の三科さんが写っていた。一緒に白鳥さんが写っているところを見ると、白鳥さんと三科さんは知り合いだったようだ。

「4人の女性人はみんな清楚だから、水着を着て誘惑するようなことなさそうだな」

 大野さんは不意に言い出す。「何を急に」と私は大野さんを見る。

「いや、ちょっと思っただけだよ」

 大野さんはシュンとしてしまった。

「私は背中に傷があるから無理ですよ」

 Lakeさんの言葉に、白鳥さんが言っていた孫の思い出を思い返す。白鳥さんの孫には「背中に肩から肩にかけた一直線の大きな傷」があるという。もしかして、なんて思って「どのくらいの大きさなんですか」と私は聞いた。

「うぅん。肩幅の半分ぐらいかな。真ん中に漢字の一みたいに。いつついたのか忘れちゃったけど」

 一直線の傷ってことはあってるらしいが、白鳥さんの言葉とは合わない。孫がすぐそばにいるなんてドラマチックなことはなかった。

「私は太ってるしなぁ」「誰も気にしないって」「それはひどい言葉だと思わないのかな探偵」と現実から目を離すためなのか、無駄な話が多くなる。

 釣り人である佐中さんの部屋は、釣り具が結構そろっているものだと思ったが、あまりそういうわけではなかった。釣り針は凶器にはなりづらそうだが、それ以外にも釣った魚をすぐさばいて食べるためなのか、包丁があったりした。服は二着あるうちどちらも真っ黒であるが、洗った形跡も血がついてる形跡も無かった。

 あとは他の人には無かったスポンジが入っていた。何に使うかはちょっと不明である。魚はきっとスポンジで洗わないと思うが、もしかしたら洗うのかもしれない。

 私の部屋も調べられたが、他人に部屋を調べられるのは非常にこそばゆい感覚であった。

 最後は、唯一二階の部屋の大野さんの部屋である。当然料理人である上にマグロを解体するのだから大小さまざまな包丁があったりと凶器の豊富さだけで言えばもっとも怪しい部屋であった。服は明日着るだろう料理人っぽい服ともう一着あるだけだが、どちらもカラッとしていた。多分クリーニングに出したかアイロンをかけたばかりなのだろうと思うぐらいだった。

 大野さんは、このメンツの中ではもっとも白鳥さんと長い付き合いがあって、この部屋はいつも大野さんの部屋になるという。そのため、この部屋だけなぜかまな板が常時おいてある。

「みんなの部屋には何もなかったね」

「本当に誰かが犯人なのかな……」

 犯人が近くに居ると恐ろしいが、とりあえずみんなを疑って疑心暗鬼になるのだけはやめようと心に誓った。

 その後館内を、外を調べていた人と合流してくまなく調べたが何も見つからなかった。もちろん、割れた窓も壊れた網戸も、壊された非常口も。

 全員でロビーに戻ったが、何の成果もあげられず満身創痍の7人はただ下を見てぐったりしていた。

「外はどうだったんだ」

 みんなで結果を報告する。

「私たち以外の足跡はないし、何かが雪に埋もれた形跡もないから、外に何か投げたってことはないわね」

「全員の部屋を調べたけど、凶器になりそうなのも、血にまみれた服も、違和感も何もなかった。皆の部屋の窓も何の問題もなかった」

 しかし、間違いなくこの6人の中に犯人はいる。しかしながら、凶器も服も出てこないとなると……。

 私はもう一度現場に来た。日を跨いだので、血液も乾いているので、若干遺体に近づけるようになった。

 私は遺体の傍に寄り、じっと観察してみる。お腹に穴が開いてること以外何も変わらない白鳥さん。

 お腹のあたりをよく見ると、近い場所を刺されているからよくわからないが、二回刺されている跡がある。また、傷口の周りが若干だが血液が薄くなっているように見える。水をかけられて薄まった感じだ。水と言うならば、白鳥さんの部屋の風呂が使われていたことと何か関係があるのだろうか?

 現場に来たものの疑問は一方的に増えるばかりだ。

 疑問点を洗い出していくことにしよう。

 まず白鳥さんは何者かに刺されたが、現場には凶器がない。さらに、血が撒き散っているが、ある一方向だけ飛んでない方向がある。これは犯人が立っていた方向に飛んだ血が犯人に遮られて飛ばなかったと考えられるが、それなら犯人が来ていた服は一体どこにあるのだろうか。

 現場の部屋の風呂場の使用、傷口のあたりの血が水で滲んで薄まっているように見える点も疑問の一つだ。

 密室ともいえるこの別荘で亡くなった凶器と服のありかさえわかれば、きっと犯人が見えるはずなのに。

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