有限と無限
無限ループのように繰り返される怠惰な毎日を断ち切れないまま、いや、断ち切ろうという行動もないまま僕はまた彼女と共にいた。
彼女はこんな不甲斐ない僕でもそばにいてくれる。これは僕の人生の中での唯一の幸福と言えよう。
嫌なこと苦しいことがあると、決まって僕は彼女を呼び出す。
彼女の役目がそれだけという訳では無いが、僕の相手を出来るのが彼女くらいしかいない。
道端に転がる些細な死に憧れを抱いたある日、僕は彼女を――。
彼女の首に触れた。白く透き通るような首。
そっと指でなぞるとくすぐったそうに薄く微笑んだ。
それから目を合わせてそっと微笑みあってから、
首に手をかけて力を込めた。
彼女は苦しそうな顔こそするものの抵抗しない。
力を込める。もっと、もっと。
やがて彼女は絡繰師を失った人形の様に床に落ちた。
……彼女の表情は醜いものと変わったまま、もうあの陽だまりのような微笑みは帰ってこない。
僕の心は穏やかだった。
穏やかに、ぼんやりと糸の切れた人形を見つめていた。
美しさは彼女の象徴である。その美しさを僕が崩したという、達成感に近い支配感。
僕はやっぱり狂っている。
だが彼女の前にいる僕はこうでないと僕でない。
狂っている僕の肩を背後から叩くものがあった。
横目で見やると細くしなやかな指。手だけで綺麗さが溢れている。
彼女。
僕が今手にかけた彼女と同じ女性である。
僕は長い睫毛に彩られた瞳を真っ直ぐに見つめた。潤んだ瞳に吸い込まれそうになる。
彼女の存在は僕を安定させる一方、僕の闇を暴いて引きずり出す。
胸元に手を当て強く突き飛ばす。
バランスを崩した彼女はよろめいて絹のような髪をなびかせて倒れた。
顔を歪める彼女に馬乗りになって動きを制限する。
僕の手にはいつの間に握られたナイフがあって、僕はそれを高く振り上げて彼女の心に突き立てた。
飛沫が上がる。辺りを紅で染めてゆく。
彼女の本来の色。
僕は何度も突き立てて色を求めた。
またこうして憧れが増える。




