沼と穴
「ね、僕はさ」
彼女の白い手をとりながら半ば独り言のように呟く
「どうしたらいいのかな」
華奢で脆い手をそっと握る
「どうやって生きていけばいいのかな」
僕は彼女の華奢な手を強く握った
その手を引いて
彼女の軸をぶれさせて
押し倒した
黒く、絹のような海が広がる
様々な方向に散らばる
「どうすれば、上手く生きられるかな」
彼女の目の前に立ちはだかって真っ直ぐ見つめる
その目に何が映っているか僕には分からない、
し、
分かりたくもない
本当の僕の姿なんて
彼女の瞳に呼び起こされるように僕の獣は姿を現し、
「僕」は姿を消した
「現実なんて見たくないんだ」
本気になれば出来るんだと何度言い聞かせてきたか
いつまでもその「本気」なんか出さないくせに
現実は冴えない惰性の塊が自惚れてるだけで
いつまでも人に追いつけなくて
「馬鹿みたいだろ」
実際馬鹿だ
努力を怠っている人間が結果なんて出せる訳がない
「僕はさ、誰かに勝ちたかったんだ。誰かの上に立ちたかったんだ」
そんな事できるはずない
周りの努力と自分の努力
明らかに自分は下にいる
「自分が悪いのは分かってる。自分の所為だって分かっているんだ」
いつまでも過去の栄光に縋って
出来ない理由は自分の所為だと分かっているふりをして
「みっともないよな。クズだよな」
自分の所為だと思っていながら何もしない、そんな愚かな自分が
「嫌いな筈なのに好きなんだ」
自惚れている
確実に
溺れている
この自ら創り出した闇に
気づけば僕は彼女を求めていた
「なあ、愛ってなんだろう」
僕が今していることは僕の求める「愛」じゃない
ただの欲と自傷の延長線
一時の快楽に溺れれば
そうすれば何もかも忘れられる
僕は一心に彼女に身を寄せた
上昇していく温度を感じながら
どこまでも
どこまでも
僕は愚かだと思った




