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愛と狂気  作者: 新山七瀬
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縁側の黒猫

今日の空は不思議な色をしていた。白いような青いような、曖昧に表現することしかできないような色だった。

僕と彼女、縁側に並んで座った。僕の左側に彼女。ふたりで空を見上げて空の色の曖昧さについて語る。長々と語るうちに、そこから転じていって逸れていく。空の話が雲になり、雲が羊になり、動物になり、いつの間にか猫になる。そしてお互いの好きな動物の話になった。彼女は猫が好きだ。僕も猫が好きだ。彼女には黒猫が似合うと思った。彼女の、艶をまとった黒のイメージは黒猫を彷彿とさせる。毛並みの良い、黒猫。

猫は道端でこちらをじっと見てくる。それはまるで人間を観察するような目だ。こちらが猫を見ている、というより猫がこちらを見ているという雰囲気を感じる。どこか人間の内側を見透かすようなその目に、僕はどこか安心をおぼえる。きっと人間に対して偽りの仮面を被る人生を送っているからだろう。良い行いも罪も罰も、人間が見ていなくても猫にはわかってしまうような気さえする。僕は人間に評価されなくても猫に分かってもらえればそれで良いと思っている。

僕を理解してくれるものは他にもある。僕の隣にいる彼女だ。特に僕が何を言わなくても彼女はそっとそばにいてくれる。全てを知っている訳では無いと思うが、それでも無闇に知ろうとしない。僕はそんな距離感でいいと思った。お互いの知らないところまで無理に知ろうとしなくていい。知っている部分を見つめながら知らないところまで許せればいい。だから僕も彼女の詮索はしない。光沢のある墨のような漆黒の長髪と透明感のある雪のような柔肌、華奢な身体にはどれだけの人生が詰まっているのかさえ僕は知らない。彼女の人生を知らなくても彼女はここにいるのだから。

彼女の髪に指をかけ、そっと彼女の耳にかけた。彼女は僕の突然の行動に不思議そうにこちらを見た。振り向いたときに黒髪が陽の光を浴びて輝く。絹のように輝く髪。どこか人間離れさえした白く透明な肌。僕を歪みなく真っ直ぐ見つめてくれる瞳。僕は彼女の全てに触れたかった。そっと顔と顔を近づけ、ゆっくりと、確かめるように唇を重ねた。決して深いくちづけではない。唇だけを重ねた浅いもの。そのまま華奢な身体に腕を回す。僕の腕を感じると彼女もまた腕を僕の身体に回した。たとえ粘膜同士の触れ合いがなくても僕はそれでいいと思う。そんなものは無くても充分に確かめ合うことは出来る。抱き合ったまま唇を離し、彼女をもっと深く抱きしめた。お互いに満たされていくのを感じた。

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