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愛と狂気  作者: 新山七瀬
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陶磁器人形は笑わない

僕は横たわる彼女に馬乗りになり、その細く白い首に両手をかけた。彼女は抵抗するでもなく、落ち着いたーしかしながらどこか虚ろな二つの眼をこちらに向けている。僕はそのまま手に力を入れた。やはり彼女は抵抗せず、その黒い艶やかさを帯びた瞳で僕を見守っている。僕が親指の付け根に喉仏の硬さを感じたところで彼女はわずかに目を細めた。そこで僕は力を緩めた。

彼女の頬を撫でる。彼女の肌は透き通るように白く滑らかである。例えるならば陶磁器か、あるいは真珠か。どこか人間離れしている「綺麗さ」だった。そこに生気を加えるかのように、頬にはわずかな紅味が差され、唇も紅くふっくらとしている。切りそろえられたその長い髪はその瞳と同じく墨のように黒い。濡れたように艶を纏い、彼女が頭を動かすたびに輝き舞う。彼女の美しさは言葉で表すには不十分だ。それがとてももどかしいのだが、その美しさの前ではそんな事などどうでも良くなってしまう。

彼女の首筋に触れる。それから鎖骨に触れる。どこまでも白いこの肌に、僕は傷をつけたくなって爪を立てた。彼女は目を細め、眉をひそめていた。彼女の白い胸元に紅い筋がつく。僕の中に不思議な満足感が押し寄せていた。まっさらな白に浮かび上がる紅は美しく見えた。僕はさらに傷をつけたくなって、今度は首筋に顔を近づけた。彼女は数回小さく呻き声をあげる。僕はしっかりと噛み付いて跡をつけた。彼女に傷をつける度に不思議な満足感が現れる。これは僕のものだという証を刻み込む満足感。ひとつ、ひとつと刻まれる紅は僕の独占欲の表れだということは、ついた傷を見てやっと気づいた。

彼女は僕のものだ。と同時に僕は彼女のものだ。僕は彼女の前でのみ「僕」でいられるから。

改めて彼女の首に手をかける。彼女は僕の顔を真っ直ぐに見つめていた。「ねぇ、笑ってよ」僕が言うと、彼女はゆっくりと微笑んでくれた。今度は最後まで緩めたりなんかしなかった。彼女が目を細めようとも、眉間に皺が寄ろうとも、僕は力を入れ続けた。彼女の華奢な身体は終始 僕に全てを委ねていた。そうして彼女は、ゆっくりと、目を閉じた。

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