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僕はこっちに行くよ

「そうか。そんなことがあったのか」

と、色白の少年、元い、神様は言う。


僕がコーヒーを啜ると、ドアが開いたことにより、ドアの上部に掛かっていた鈴が鳴る。


「来たみたいだ」


神様は席を立つ。


入ってきた彼女、弥生ちゃんは僕を見つめて、そっと微笑む。そして、僕の隣の席に座る。


「君は、ミルクを入れるんだったね」


「はい」


マグカップにお湯を注ぐ音。

名もない時間。

もうすぐ、終わる時間。


神様が、マグカップを手で持ってきて、机に置く。

弥生ちゃんは、それを手に取り、熱そうに口をすぼめながら啜る。


「今、彼に君たちの話を聞いていたんだ」


弥生ちゃんは、首を傾げて微笑む。


「君たちは、愚か者だ」


僕も微笑む。


「けれど、美しい。人間の死ほど美しいものはないさ」


神様も微笑む。


「私もそう思う」


弥生ちゃんはそう言って、カップの縁についたコーヒーの染みを舌先で舐める。


僕と弥生ちゃんは、コーヒーを飲む。

ひどく、ゆっくりと、味わうように。




僕と弥生ちゃんがコーヒーを飲み終えると、神様が言った。

「さあ、時間だ」


僕と弥生ちゃんは、席を立って、外に出る。そこまで、神様も付いてくる。

玄関で、弥生ちゃんは僕の手を引いた。

神様は、僕らの手を訝しげにじっと見ていた。


「この先、2つの道がある。右が、今までいた世界。左は、まあ、ある意味、別の世界がが待っている」


「ある意味」


「僕もよく知らないんだ」


「コーヒーありがとうございました」


「こちらこそ」


弥生ちゃんは、僕の手を引き続けた。地面の葉を踏み、坂を上り続けた。


そしたら、見えてきた、2つの道。


弥生ちゃんは、迷わず、左に行こうとする。僕は、立ち止まる。離れる手。

弥生ちゃんは、振り返って、首を傾げた。微笑みながら。


僕は、微笑まなかった。


「僕は、こっちに行くよ」


「あなたは、そうすると思っていた」


僕らは、お互いに背を向けて歩きだす。


バイバイ。ばいばい。もう2度と会わない人。バイバイ。ばいばい。

見ていただき、ありがとうございました。

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