再びの朝
辺り一面、落ち葉が落ちている。
周りに立っている木々は、もうあと僅かの枯れ葉を吊って、裸同然で立っている。
僕と弥生ちゃんは、その落ち葉を座布団代わりにして、賽銭箱の前の石段に座っている。
僕らの真上には、高く、高い、太陽がある。その太陽は、夏のように熱い陽射しを僕らに当てるのではなく、まるで、僕らの肌を包み込むような、滑らかな暖かさを感じさせてくれる。
弥生ちゃんも僕も制服姿だった。
弥生ちゃんは、紺のセーターの袖をギュッと掴んで、膝の上に置いていた。
僕はそれをじっと、眺めていた。
彼女は、虚空を、空間にある何かをじっと見つめていた。
「私ね、二十歳になったら死のうと思う」
「え、何で?」
彼女は、微笑んだだけだった。
「ヒロ君はどうする?」
彼女は、小首を傾げた。
「僕は、怖いよ」
「何が怖いの?」
「死ぬことが」
「でも、死ななきゃいけない時があるんだよ」
「寿命?」
彼女は首を振った。
「違うの。その前に、私は死ななくちゃいけない」
僕は、彼女の言っている意味が分からなくて、前を向いた。
彼女のマネをしてみた。目の前にある、何かを見ようとした。
そこには、お菓子の国があった。人形の国があった。彼女も見ているのかなと思った。
でも、その国々は、風が吹くと消えていった。
「死んだら、どこに行くんだろう」
僕は聞いた。
「別の世界だよ。ここじゃない世界」
彼女は答えた。
「それはいいかもね」
僕は、神妙な面持ちで答えた。
そのことに気づいて、彼女は笑うかなと思って、彼女の方を見たけれど、彼女も真剣な顔をしていた。
「僕も死ぬよ」
彼女は、僕じっと見つめた。
僕も彼女をじっと見つめた。
「約束?」
僕は、微笑んでそう聞いた。
そしたら、彼女はゆっくりと首を振った。
「約束はしない」
そして、彼女は立ち上がって、歩きだした。
僕も立ち上がると、彼女は振り返った。
僕は、その時の彼女のスカートが翻る様子を見ていた。
「私、約束はしない主義なの。でも、君とならいいかな」
「うん」
「じゃあ、約束」
僕が目を覚ました時には、もう、この世界は朝だった。
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