悲願
【咲恵…!!】
家の前で立っている見知らぬ男が、妻の名前を呼ぶ
〖浩二…!なんで…!〗
『浩二…誰だ…?』
【くそぉ…くそぉ…】
浩二と名乗る男は右手にナイフを持ち、
こちらに襲いかかる
『咲恵!優希!あぶない…!!』
オレは襲いかかる男を避け、
とっさに手が出る
男は倒れ込み、また襲いかかってくる
が、
そいつの顔面を殴りつけると、
そいつは倒れ込み気絶した
『はぁ、はぁ、』
〖アナタ…大丈夫…!?〗
『あぁ、オレは平気だ、軽くきりつけられて切り傷が出来たくらいだ、それより、コイツは誰なんだ…?』
〖…私の学生時代の同級生なの…この間同窓会があって、その時からしつこくされてて…〗
『な…!なんで黙ってた…!?』
〖だって…アナタ仕事とボクシングで忙しくしてるし…アナタの邪魔をしたくなかったから…ごめんなさい…〗
『…そうだったのか…』
「パパ!!大丈夫!?顔から血が…」
『優希…大丈夫だよ…大丈夫…』
助かった…
助けてあげられた…
オレの大切な家族…
守り抜いた…
良かった…
本当に…
本当に良かった…
『うっ……うっ…』
〖アナタ…〗
「パパ…どうして泣いてるの?怖かったの…?」
『ああ…怖かったよ…でも、もう大丈夫だ』
「パパ…助けてくれてありがとう…!パパかっこよかったよ!ボク…パパみたいになる!一生懸命仕事しながらボクシング習って強くなる!」
『優希…ありがとう…』
〖アナタ…〗
『咲恵…愛してるよ』
〖私もよ…愛しているわ…アナタ〗
あふれる涙を手で拭うと
現実に戻っていた…
そう
本当ならあそこにワシはいない
そして
妻と息子を殺され、
住宅街をさまよってた時にあの虐待男に会ったんだ
オレは大切な息子を失ったばかりだったから許せなかった
自分の息子を痛めつけるアイツをオレは殴りかかり、殺してしまった…
そのせいで…
過去に戻れ、大切な家族に会えた
だが、
謝れなかった…あの子に…
ワシはうなだれながらも部屋を出た
「よお、無事、過去に戻れたか」
『お前は…口の悪い兄ちゃんじゃないか…なんでここにおる?』
「オレの名前はトモヤだ、オレの父親は…あんたに殴り殺された」
『な…に…!?お前が…あの時の…!?』
「ああ、そうだ」
『そうか…そうだったのか…、だがなぜワシだと分かった…?』
「あんたがオレを助けて、あのチンピラ野郎を殴りつけてる時に、全部思い出したんだ」
『そうか…』
「オレはあんたに復讐するためにこの街に来たんだ、だが、ひったくりにあい、追いかけてる最中にズッコケて、頭打って記憶が飛んだんだよ」
『復讐…か、そうだな、お前の好きなようにしてくれ…』
「復讐はやめたんだ、それにオレはもうあんたを憎んでやしないしな」
『トモヤ…くん…』
「もう暗闇から抜け出しなよ、な?」
『…ありがとう…ありがとう…』
「泣くな、泣くな!それより腹減ってねーか?カレー食い行くぞ!缶詰めのお礼だ!」
『あぁ…行こう…』
、
、
、
、
、
、
「何かよく分かりませんが…良かったですね。」
『世話になったな!メガネデブ!』
「もうお帰り下さい」
『おう、じゃあな、ありがとよ!』
「どういたしまして。」
ガチャン…
バタン。




