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次期魔王に雇われたが何かがおかしい  作者: 宮路広子
空の英雄と魔王女一行 ~ワイバーンは何が欲しい騒動~
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69 空中戦だが何かがおかしい

 ――相棒達が一緒だからな。


 高いお空で戦うのは、怖くないの? 

 子供の頃そうエスターが尋ねると、父バジルは明るい笑顔でそう答え、隣で寝そべっている騎竜を優しく撫でた。


―勿論戦争は怖いさ。……怖くてたまらない。人族に隷従しているドラゴンは魔法や武装で強化されてるし、最前線で戦う人族の竜騎士達は精強だ。あいつらの攻撃で、何度死ぬって思ったか、判らないんだぞ―


 ひぇえ、とエスターの隣に腰掛けおやつを食べていたコリンが悲鳴を上げた。


―でも後部魔撃手のダイイや、空母でサポートしてくれるマーマン族。……それからこいつ、オレンジ七号がいるから、怖いけど俺は大丈夫なんだぞ―


 そんなコリンの頭も優しく撫で、バジルは笑った。


―エスター、俺達ハーフリットは弱いんだぞ。腕力も魔力も無いし、賢くもない。身体も小さくて、とっても弱い種族だ。……だからこそ、相棒達を信じて力を合わせなくちゃいけない―

―その子や、別の種族のみんなを父さんは信じているのね?―

―そうだぞエスター。信じて初めて、俺は空で戦えるんだ。……特にこいつを信じなきゃ、俺は絶対に飛べない―


 バジルの言葉に、騎竜――オレンジ七号は眠たげな目を開き、甘えるようにその鼻面をバジルの横腹に押しつけた。こらこらやめろよと笑いながら、バジルは軽くオレンジ七号を叩く。


―このオレンジ七号は俺の一番信頼する相棒で、最高の友だ―


 そう言って嬉しそうに胸を張るバジルを、エスターは憶えている。

 そして当たり前だとでも言うように、バジルの頭に顎をのせる、オレンジ七号の楽しそうな姿も、記憶の中に残っている。


―……じゃあオレンジ七号、お願い。お父さんを守ってね?―


 そんなオレンジ七号を撫でてエスターが声をかけると、オレンジ七号は大きな黒い双眼を優しく細め、バジルにするように、顎を軽くエスターの頭に乗せた。


―きゃあっ―

―あはは。任せろって言ってるぞエスター―


 突然頭を襲った重みに驚いて父親の膝に逃げこんだエスターを受け止めてから、バジルはもう一度オレンジ七号を見上げる。


―……なぁオレンジ七号。もし俺が死んだら、俺の代わりにこいつらを守ってくれよ―


 な? と問いかけるバジルの頭を、今度はオレンジ七号が振り下ろした顎が襲う。


―あいたぇ?!―


 どうやらオレンジ七号は、つまらない事を言ったバジルに怒ったようだった。

 痛みに悲鳴をあげる父親に、エスターは思わずコリンと一緒に吹き出してしまった。



【――発射出撃成功。高度を保チ、飛行体制に移行スルヨ。エスター!】

「――了解サファファ!」


 弓型出撃台から打ち出され強烈な重力に襲われる数秒間。エスターは自分の意識が薄れ、過去の記憶を垣間見ていたらしいと気付いた。


『……らしくないわね。戦場出たてのひよっこでもあるまいし』


 弓矢のように高速で弾き飛ばされ空へと出撃する出撃台は、慣れてない頃は、飛行士がその衝撃で気を失ってしまう事故が起こる程、危険なものだった。


『だからこそ集中しなくてはいけなかったのに……やはり、注意力散漫になっているのかもしれない』


 エスターは気を引き締め、翼を広げたワイバーンの最高速度を保つため低く体勢をとった。共に飛び立った小隊の部下達も、エスターを先頭に編隊を組み、それぞれスピードを保ってエスターに続く。


「――サファファ、右辺最後方の、ポール二等空士はついて来ている?」

【なんとかネ。コリンの代理としてはやや速さが足りナイ実力ダケド、ベテランだからまぁ、なんとかスルデショ】

『……コリン。……あの子も無茶をする所を直して落ち着けば、良い飛行士になるのだけど。……いけないいけない』


 懲罰房送りになっているコリンの代理として別の小隊から借りた隊員を確かめているうちに、また別の思考にずれそうになったエスターは、操縦桿を握り締め必死に意識を集中した。


『現実逃避している場合じゃない』


 戦いから目を逸らし別の事を考えたがる、自分の無意識をエスターは理解していた。 

 物心付く頃には側にあった、身近な存在として自分達を優しく見守っていたオレンジ七号を始末しなくてはいけない。

 そんな現実から逃れられない今が、エスターには辛い。


『――それでも、命令は果たさなくてはならない。……それが私の、『英雄』の後を継いだ者の存在意義』


 それでもその辛さを噛み殺すようにして、エスターは冷静にワイバーン小隊を指揮し、月明かりに照らされた夜空を飛ぶ。


『守ってくれた父さんはもういない。……オレンジ七号は、敵になってしまった。……私が家族を……家族が住むハーフリット庄を守らなくては』


 父のように。


「――っ」


 そう内心で繰り返すエスターの視覚はやがて、遥か前方を飛ぶ、影のようにブレながら高速で飛ぶ何かを捕らえた。

 作戦本部から送信されてくる解析結果よりも早く、直感的にエスターは確信する。


「――攻撃目標発見!! これより交戦に入る!!」


 ワイバーン装備である通信機に向かって、エスターは叫んだ。 

 そして了解と通信機から響く部下達の声に、今度こそ揺れ動く雑念を捨てる。 

 

「疾く飛べ!! ――そして無慈悲に殺せ!!」


 エスターの檄に応えたワイバーン編隊は一瞬で散開し、目標へと襲いかかった。



 その少し前。


「作戦行動中にて、おかまいできず申し訳ありません」


 飛行母船エギーリャ管制塔作戦本部に来た魔王女一行を一瞥したジェレミアは、恭しくキョウに一礼し、部屋の後方にある椅子を勧めた。


 ――部屋に入れてやるから、頼むから邪魔せず隅っこに居てくれ。


 そう言外に含ませたジェレミアの笑顔に底知れぬ迫力を感じ、キョウ以下魔王女一行は大人しく部屋の後方席に座り、マーマン達が忙しく動き回る作戦本部を眺めた。


「――あ、あれって……どういう仕組みなんですかねザイツさん? 空中が、映像だらけです。なんだかSFみたい」

「えすえふ? ってのはよく判らんが、とりあえず、いくつかの魔法を組み合わせた技術みたいだな」


 幸い、キョウが最も気にしていたエスターの様子は、確認する事ができた。

 それは作戦本部の空中に浮かぶいくつもの四角い映像が、様々な角度から空を飛ぶワイバーン小隊の様子を映し出していたからだった。


「精霊魔法の空間解析能力と、索敵能力を利用していますね。……ふむ。映像収拾は、魔話術(ビューフォン)の応用のようですが、他にも色々……駄目か。使われている魔具まで考えると、内部構造まで把握できなければ、とてもこの技術を解き明かす事はできない」 

「いやいやケイト、解き明かそうとすんな。一応この船で使われてる技術は、軍事機密だ。間諜(スパイ)の真似事なんかしたら、逮捕されるぞ」

「……ちっ」


 知的探求心を刺激されているらしいケイトは不満そうだったが、後ろからでも見えるリアルタイムらしい映像にキョウは見入っていた。


「す、すごいスピードですね。エスターさんを先頭に、雲を突き抜けて飛んでます」

「うん。……それでいて、一糸乱れぬ編隊ってやつだな。エスター小隊、確かに腕利き揃いだ」


 ザイツも注意深く映像を観察し、現状を把握する。そして。


【エスター小隊目標に接触! 時刻22:21、バローク港沿岸部6-1105地点にて、交戦開始!!】

「――っ」


 矢尻のような編隊で空を飛んでいたエスター小隊は、一瞬で豆が爆ぜるように飛び散り、ある一点を包囲するように軌道を描きながら加速する。


【沿岸配備の高速船、エスター小隊の援護に回れ!! 鳴らしている警報を強めろ!! 住民と漁船を交戦区域に近づけるな!!】

【了解!! 高速船二班から六班、交戦地点周辺を警戒します!!】

【高速船八班、夜漁の魚船確認!! 区域より強制離脱させます!!】

【照明魔弾用意!! 区域全体を照らせ!! 目標を夜陰に逃がすな!!】


 空中と地上、海上。目まぐるしく映像が切り替えられ、作戦本部は怒号のようなマーマン族の声が飛び交い動く。


「――っ」


 そんな完全に交戦状態に入った作戦本部の映像群の中で、やがてザイツは、疾く飛ぶワイバーン小隊達が目指す、『何か』を見る。


「……あれが」


 古傷だらけの、それでいて漲るような膂力を感じさせる強靱な、灰色の両翼と身体。

 そしてそれを包みこむように吹き上がり輝く、夕焼けのような橙色の魔力。

 照明弾に照らされた姿に、ザイツは一瞬震える。


「オレンジ……七号。……英雄のワイバーン」


 決して他のワイバーンと比べ、特別大きなわけではなかった。

 特別な強化装備どころか、身を守るものすら何も身につけてなかった。

 だがザイツはその時確かに、多勢に襲いかかられるワイバーン一体に、その他有象無象とは違う、恐るべき威容を感じた。

 

「……え……エスターさんっ」


 狼狽えたキョウの声が、エスターを呼ぶ。

 応えるように。英雄の名を継いだハーフリットの娘の、隊員に向けた声が作戦本部に響く。


《疾く飛べ!! ――そして無慈悲に殺せ!! ――目の前に在るのは、我らの敵だ!!》


 強い声は、ただ潔かった。

 その声に何を感じたのか、キョウは息を飲み、ザイツのマントの裾を握り締めた。


《ブレス掃射!!》


 四方八方至近距離から、小隊のワイバーンが凄まじい爆風と共にブレスファイヤを放つ。

 回避するオレンジ七号の退路を全て潰すように、二弾、三弾とブレスを撃ち込み、炎光で描かれた檻がオレンジ七号を追い込み、そして押し潰さんとするように更に畳みかける。


「……すっげぇ」


 ザイツは思わず感嘆の声を上げた。

 至近距離からの一斉掃射でありながら同士討ちが発生する気配も無く、エスター小隊のワイバーン達はそんな可能性など感じさせない精密かつ大胆な動きで宙を舞い、それを回避し下へと逃げるオレンジ七号を追撃する。


「ほう……ワイバーンとは他竜種族と比べれば力も知能も低く、臆病な性質だと聞いておりましたが」

「命じるハーフリット飛行士との信頼関係がなきゃあ、ああは飛べねぇだろう。なるほど、力押しのドラゴニュート族他大型竜じゃ、あそこまで細かく飛ぶ事はできねぇな」

 

 目の前で繰り広げられる空中戦とエスター小隊の勇猛ぶりに、ケイトとハウルグの声にも、驚嘆が滲む。


《追い込め!!》


 エスター、そしてエスターの命令に従い攻撃するワイバーン飛行士達は、まるで一体の生き物のように連携し合い、敵を包囲し攻撃を加えた。

 いくつもの映像がブレスの白熱光で輝き、やがて光塊は回避し続け逃げていたオレンジ七号に追い付き、塗りつぶす。 

 

【は、針の穴すら撃ち抜いてしまいそうなブレスであるな……】

「お前の魔法より、正確っぽいな」

【なんであるとー!!】

「……勝った、か?」


 魔烏(クローメイジ)に戻って肩に乗っていたカンカネラに怒鳴られながら、ザイツはエスター小隊の勝利を期待した。


『……まぁエスター少尉を思ってキョウ姫は落ち込むだろうが、バロークの町が荒らされ続けるよりはいい……はずだよな』

【よし!! 着弾した、したよな?!】

【よくやったエスター小隊!!】

【あれを喰らってればただではすむまい!!】


 その期待は、作戦本部のマーマン達も抱いたようだった。

 ――だが。


「……ん? ――え?!」


 ザイツは、ブレスが放つ爆音と光が薄れる中、何かが軽やかに動き、そして抜け出すのを確かに見た。


「あれを――全――回避しただって?!」

「え……あ……っ」


 叫び声に、目を閉じ俯いていたキョウも顔を上げ、驚いたように息を飲む。

 映像には、空中を散歩でもするように悠々と飛ぶ、オレンジ七号の無事な姿が映っていた。

 再び無数のブレスが撃ちこまれるも、オレンジ七号は大きく羽ばたき上昇しながら、それらと戯れるように、紙一重で避けていく。


【ぐっ……また駄目か!】

【流石バジルの相棒……その動きが身体の隅々にまで、乗り移っているかのようだ!】

『ありゃー……』


 悔しそうなマーマン族達の声から、ザイツはこれがエスター小隊とオレンジ七号の、毎度の戦いなのだと判った。

 どれほど精密なブレスを無数に炸裂させても、当たらなくては意味が無い。

 エスター小隊の奮戦を玩弄するように、オレンジ七号はワイバーンのあらゆる攻撃を回避しながら自由自在に夜空を上昇し、その場の誰よりも高く飛んだその場所から、エスター小隊を見下ろすように反転した。そして。


《――うぁあ!!》


 そこからオレンジ七号が急降下した次の瞬間、オレンジ七号とすれ違った小隊のワイバーンが一体吹き飛び、そのまま体勢を立て直す事もできないまま、海上に落下した。


「きゃああ!! ハーフリットさんが!!」

「殿下?! ご心配無く負傷程度です。あれならワイバーン装備の、救命装置が発動します!!」


 キョウの悲鳴に慌ててジェレミアが説明した通り、落下するワイバーンが輝き、白い球体に包まれた。すると落下する速度が急激に遅くなり、ワイバーンはそのままゆっくりと、海面に着水する。


《回収ー!!》


 しばらく浮いていたそれを、即近寄って来た高速船が回収しハーフリット飛行士と後部座席のゴブリンシャーマンも助け出された。


「よ、よかったぁ~」

「貴重な兵士を一人でも殺さないよう、魔王軍内では日々研究が進められております。ご安心下さい魔王女殿下」

「……その技術で、オレンジ七号も助けられませんか?」

「……残念ながら、その余裕はなさそうです」


 悔しそうなジェレミアの声を掻き消すように、轟音をたててオレンジ七号が次々エスター小隊へと襲いかかった。


《くそっ! 速すぎ――ぐあ!!》

《どこ行った――後ろぉ?!》

《演習でバジル様を相手した時みたいなんだぞぉおおぉぉ!!》


 エスター小隊も迎え撃つがオレンジ七号の動きは誰よりも速く、その圧倒的な差が致命的な隙を生み、隊員達はあっという間に撃墜されていった。


「おいおい強すぎるだろう。ジェレミア、なんだありゃあ? 本当にあいつは、ただのワイバーンかぁ?」

「間違い無くただのワイバーンだハウルグ。……ただあいつは、天才的な飛行センスを持っていた英雄バジルの騎竜として、何十回、何百回と戦場で交戦経験を積んできたんだ。……あいつの身体には、隅々までバジルの戦術が染みついている」

「は、ははは……とんだ亡霊だな」

「……」


 冗談めかしたハウルグの言葉に、ジェレミアは返す余裕も無く、苦々しくため息をついた。


「――おお! ですがまだ、終わってませんよ!」


 そんな重苦しい空気を破ったのは、映像を注視していたケイトだった。

 ケイトの指さした映像には、オレンジ七号の突撃をギリギリで交わし、残った隊員達と反撃に転ずるエスターの姿が映し出される。


「エスター! やはりお前なら……くっ、頼む! なんとかしてくれ!」


 エスターとオレンジ七号は、追い追われ、急上昇と急降下を繰り返しながら相手の攻撃をかわし、ブレスを撃ち込む。

 殆ど一騎打ち状態での激しい攻防に、ザイツとキョウは息を飲んだ。どちらが勝つのか、どちらが落ちるのか、全く予想できない。


《――撃て!!》


 不意にエスターが、オレンジ七号の背後に回っていた部下へ命令を下した。

 命令通り部下はブレスを正確に撃ち込むが、オレンジ七号は身を捻り、難無く回避する。

 ――だがその瞬間、回避したオレンジ七号に生じた僅かな隙を、エスターが見逃さない。


《かぎ爪!!》


 エスターの乗るワイバーンがオレンジ七号へと突進し、かぎ爪を突き刺すようにしてオレンジ七号に組み付いた。

 そのままエスターは、更なる命令を部下に発する。


《このまま撃て!!》

「えぇええ?!」


 キョウは悲鳴をあげるが、エスターの隊員達は躊躇無く構え、そしてブレスを放った。

 ――直後響く、強烈な炸裂音。それぞれの場所から放たれたブレス数発は、見事オレンジ七号に命中した。


「よっしゃ!!」

「な、なんという荒技を!! 一歩間違えば、自分がブレスの餌食ですよ!!」

「前後上下各所から、確かに六発着弾した!! これならいくらオレンジ七号でも、ダメージは――」


 映像には、大きく傷付き血を流すオレンジ七号が映されている。


「よし! これなら撃墜も時間の問題だ!」


 言葉通り、ズルリと音を立ててオレンジ七号の身体が揺らぎ、そして勢い良く落下していく。

 着弾の衝撃があったのか、エスターのワイバーンはややふらついており、追う事ができない。


 

【勝負あったであるっ】

「あの高さから、救命装置もなく落ちれば……」

「確実に死ぬな」


 耐えきれないのか、キョウはザイツのマントを握り締め、固く目をつぶった。

 纏っていた魔力が消え、脱力したオレンジ七号は落下していく。

 そのまま海面に叩き付けられ、数秒もしないうちにその命運は尽きる。作戦本部内の誰もが、そう予想する。


「――なんだ?!」


 だがザイツは、落下していくオレンジ七号の身体が光で瞬くのを見た。

 

『あれは――まさか!』


 次の瞬間、オレンジ七号の翼が再び強く広がり、オレンジ七号は急降下した海面ギリギリを滑るように飛び、再び上へと飛び上がる。


「……回復……魔法?」


 だったのだろう、とザイツは思う。

 そしてその事実が、作戦本部のマーマン族達を、大いに動揺させている事にも気付く。


【そうだ……今のは確かに、回復魔法だった!!】

【遠隔操作型の魔法だな】

【だが……これはどういう事だ?!】

「……え? どういう事、なんです?」


 恐る恐るもう一度顔を上げたキョウは、動揺しているマーマン達に首を傾げ、疑問を投げた。

 その疑問には、その場の責任者であるジェレミアが、代表で答える。


「……姫、ワイバーンには回復スキルも回復魔法もありません。……オレンジ七号が『自分で傷を癒す』事は、絶対にできないんです」

「……え?」

「……では、誰が今あいつの傷を癒したんでしょうか? ――『あいつは今、ひとりぼっちのはずなのに?』」

「――あっ」


 驚きの声を上げるキョウが見上げた映像の中、今回は諦めたのか、オレンジ七号が飛び去っていく。


「……一人では、無かったという事か?」

「……ああ。……単純な野生化ワイバーンの襲撃、って話も怪しくなってきたな」

「……町を襲わせている、黒幕がいる……という事ですか」 


 ザイツ、ハウルグ、ケイトは、お互い発したきな臭い状況に表情を引き締め、そして小さく頷き合った。

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