33 戦闘になったが何かがおかしい
「少し考えをまとめたいので、時間を下さい。――ああザイツ、時間がもったいないので、君はちょっと頼まれてくれ」
という一言を残してケイトは馬車に備え付けられている机に向かい、これからの作業予定を立て始めた。
一方。
「……あった。……爪跡15,5セン……15,7セン……四つ指の爪跡から爪跡までの長さ……98,2セン……あーもう、約1メイでいいだろっ」
そのケイトに頼まれたザイツは、半ば押しつけられた巻き尺とメモ用紙、木炭を持って村の跡地を周り、倒壊した家屋や木柵につけられた四つ指の巨大な爪痕を見つけては、その大きさを計測していた。
「1ミリが1ミィ、1センチが1セン、1メートルが1メイ、1キロが1キー……似てるようで違うんだよね。……午前午後の概念は無いし、時々意味する単語が違ったりもするし……油断できないんだよな……」
「姫、ちゃんと記録してるか?」
「え? し、してますよザイツさんっ。えーと、98,2cm、約1mっと」
「え? m?」
そしてケイトに頼まれはしなかったがキョウもそれを手伝い、あまり筆記が得意ではないザイツの代わりに、メモ帳に記録していた。
ちなみに少々変わった記号を使った記録法だ。
「あ、そこにも爪痕ありますザイツさんっ。倒れた柱の影っ」
「これか……ふぅん、くっきり残ってるなぁ。火で家屋が燃えなかったからか」
ザイツとキョウは二人で村の敷地を周り、あちこちに付けられた爪痕を捜して記録に取った。
「まだまだ、あっちの方にもありそうですね」
「ああ。助かるけどいいのか姫? 面倒じゃね?」
「そんな事ないですよ。それに馬車の所にいても、今はやる事がありませんし」
「……まぁな」
ザイツは馬車を止めた家屋の影に目をやる。
【よーし、ブラッシングもかけてやるであるガンバーっ。魔王女殿下にお仕えするならば、身だしなみは大切であるぞっ】
【ヒヒ~ン♪】
やはり暇なのか、メイド少女化したカンカネラは馬車の中から馬用のブラシを取り出し、丁寧にガンバーのタテガミを梳いていた。
「あのバカラス、あんたに仕えてるせいか、結構マメだよな?」
「あはは、そうですね。それにガンバーちゃんの事気に入ったみたいです。素直でいい子ですもんね」
「何を言われてるか、判らないだけじゃねぇのか? ……判っててあえてあの態度だったら、あの馬かなりあざとい性格だけどな……」
「え? いやいや、そんなまさか……」
そんな二人の声が聞こえたように、ヒヒ~ン? と鳴いたガンバーは、愛らしく首を傾げた。
「……まぁ、いいんだけどな。……そういや、おっさんとガキがいないな」
「ああ、さっき木材を作って、二人で裏手に行きましたよ」
「それって、墓か?」
「ええ。墓標の差し替え、あれだけ言い争った子を手伝ってあげるハウルグさんも、優しいですよね」
爪痕を捜すついでに裏手に回ってみると、木材を十字に組んでいるハウルグとロンの姿があった。
「ゼーレ式の墓に変えるのはいいが、シューレ式で墓標にした丸い石は、その辺に投げ捨てたりせずちゃんと土に埋めろよ。粗末にすると罰が当たるからな」
「判ってるよ。神体を暗喩したものには、神体の意志が宿るって神官様がおっしゃってたもん。……異教の神のだって、弔いの墓標を粗末にしたりしない」
「へぇ……普通の人族と比べても、お前信心深い方だろ? もしかして神官の血筋だったりするのか?」
「……俺の死んだ爺ちゃんが、元神殿の修拳士――修行僧だったから。還俗して家族を持った人だけど、すごく信心深かったんだぞ」
「なるほどモンクか、あいつらすげぇ鍛えられてるから強いよなぁ」
「うんっ。俺の爺ちゃんもすごく強かったって婆ちゃんが言ってたっ」
村人の墓造りという陰鬱な作業でも、ハウルグと言葉を交わすロンの表情は沈んではおらず、しっかりしている。
「相手をしている、おっさんの影響もあるのかな?」
「そうですね。……王庭騎士団って、騎士見習いとして集められた子供達で集団生活するんですよ。だから自然と種族を問わず、年上の子が年下の子の面倒を見るようになるんだって、魔王陛下がおっしゃってました」
「なるほど、ガキの扱いは慣れてるって事か」
「そうかも。……私も、お城にいる時は親切にしてもらいました」
「……」
何かを思い出したのか、キョウは楽しそうに微笑んだ。
ザイツは、ふと自分の知らない魔王の城でのキョウを、少しだけ想像する。
「……殿下。そいつは……いつの頃を思い出してらっしゃるんですかね?」
「……え?」
「……いえ、何でもありません」
そんなキョウに一瞬視線を向けたハウルグは、だがすぐに十字の組木へと視線を戻し、それを建てる作業を再開した。
「……狼、どうかした?」
「この程度の作業でどうもするかい。お前こそへばるんじゃねぇぞガキ」
「お、俺だって大丈夫だ!! いつも妹くらい大きな荷物背負ってリリエまで行ってるんだからな!!」
「へぇ、でも中身はどうせ綿か糸だろ。俺なんか自分くらいの総重量の武装して魔国の樹海横断訓練を……――っ!!」
――だが突然、ハウルグとロンとの言い合いは止まる。
ハウルグは墓の前に屈み込んでいた身を素早く起こし、鋭い視線を周囲に向けた。
「うわっ、急に起きるな――」
「静かにしてろ」
「っ――」
「ちっ――行き先がばれてたとはいえ、対応が早いな――力尽くしかねぇか!」
やがて緊張した表情で視線を定め、広場方向を睨んでいたハウルグは、小さく舌打ちすると、ロンの腕を掴んでキョウの側に連れて行く。
「お、おい?!」
「――いいかガキ、この姫君がお前の安全圏だ。絶対に離れるな! ――ザイツだったか、殿下とガキを頼む。隠れてろ」
「っおい――待てよおっさん! 一体何が――」
ザイツが問い返すよりも早く、ハウルグはフェンリルへと姿を変えると、地を蹴って倒壊した家屋を踏み越え、広場へと走った。
「何か察知したのか?」
「えっ、な、何か起こったんですかっ?! 大変です!! 広場にはケイトさんとカンカネラさんとガンバーちゃんが!!」
異変を察したザイツも、巻き尺をキョウに渡して背中の剣を抜く。
「ガキと一緒に、ここに隠れてろ姫。俺はちょっと広場の様子を見て――」
「大丈夫ですかみんなー?!」
「って待て人の話を聞けぎゃぁああああああああああああああああ?!!」
キョウをこの場に残そうとしたザイツは、突然走り出したキョウを止めようとして手を掴む――もそのまま引き摺られ、勢いよく広場近くまで持って行かれてしまう。
「――あっ、すみませんザイツさんっ、大丈夫ですか?!」
「……冒険者さん、あんた護衛なんだよな? ……護衛する女より弱いのか?」
「種族差なんだからしょうがねぇだろ!! ――くそっ、隠れろ姫!! いいから!!」
「……ザイツさん……ちょっと涙目です」
「ほっとけ!!」
引き摺られた痛みと非常な現実に涙を堪えながらも、ザイツはキョウ、ロンと共に家屋の影に隠れ、近くまで来てしまった広場の様子を伺った。
「――っ」
「あ……広場が」
広場の光景に、緊張が高まる。
「まっ……魔王軍だ!!」
怯えたロンの言葉通り、広場は魔王軍兵の皮鎧を身につけた魔物達に、村の出入口を塞ぐようにして包囲されていた。
兵士達から馬車を庇うようにハウルグが兵士達の前に立ち、何かあった時にすぐ動けるようにか、カンカネラが少女姿のままガンバーの手綱を握っている。
馬車の中で待機しているのか、ケイトの姿は無い。
『……全然気付かなかった。……これは村の外周も取り囲まれてるか?』
「――大人しく我らと砦にお帰り下せぇ、王庭騎士ハウルグ様。……村の周囲は既に、囲ませておりやす」
『――っ』
ザイツの危惧に応えるように、そう言った魔物の一体が、自身の背ほどもあるバトルアックスを地面に突き立てながら、前に出た。
「――お、女の人……?」
「あれは、オーガ族か!」
集団の統率らしい兵士は、逆立つ漆黒の縮れ毛と燃えるような赤い肌、そして額から突き出た同色の二本角を持つ魔獣、女オーガだった。
女オーガは道を塞ぐようにハウルグの前に立ち、その猛々しくも艶めかしい長身の肢体を見せつけるように、堂々と胸を張る。
「抵抗すれば力尽くでも、命令に従っていただきやす」
【ヴァーナ曹長。……あの坊ちゃんエルフの命令か】
「はい」
一方のハウルグは、不機嫌そうに低く呻りながらヴァーナと呼んだ女オーガを見下ろし、馬車の前から離れずに言葉を投げた。
【悪いが戻る事はできねぇ。俺はこの村の壊滅事件の真相を確かめ、俺達フェンリル特火力歩兵小隊にかかった、濡れ衣を晴らさなきゃならねぇんだ】
ハウルグの言葉に、ヴァーナは返す。
「存じておりやす。そしてお気持ちも良くわかりやす。あたしもフェンリル隊の皆様方が、皆の命がかかった大事な作戦中に、そんな勝手をしたとはとても思えねぇ」
【それでも、見逃してはくれねぇかヴァーナ曹長?】
「――はい」
ヴォウ!! と強烈な風音を立て、ヴァーナは戦意を示すように巨大なバトルアックスを構え、ハウルグへと刃を向ける。
「騎士様、それでもあたしは魔王軍の兵士でさぁ。……上の命令にはきっちり従うのが兵士の務め。そいつを放棄しちまったら、あたしも、あたしが曹長として命令を下す兵達も、ただの暴力集団になっちまう。そいつぁ、絶対にできねぇ相談だ」
【……ま、そうだよな】
「ええ。……てぇわけで、まいりやす。――総員!! 抜剣!!」
ヴァーナの命令に呼応し、咆吼があがった。
そして耳障りな金属音を立てて、広場を囲む魔物達の得物が一斉に抜かれる。
「ひ……っ」
「きゃ……っ」
視界を覆うような数の刃が、日の光を浴びてギラギラと輝き。
その凶悪な光景に、家屋の影でロンとキョウは悲鳴を上げ、身を強張らせる。
「ど……どうしましょうザイツさんっ。わ……私……私が止めれば……」
「待て姫!! 今下手に騒げば、逆効果になりかねねぇ!! ……にしても……くそっ……なんだあの女オーガ……」
そしてキョウを押しとどめながら、ザイツはヴァーナに圧倒された。
柱のように巨大でぶ厚いバトルアックスを、片手で軽々扱うその身のこなしには、腕自慢の人族程度では到底太刀打ちできない、鍛え抜かれた戦技と実力が見て取れた。
『これが……魔王軍の兵士。……こんなヤツ一体とだって、俺がまともに戦って勝てるとは思えない。――まして集団なんて!!』
キョウが正体を現して命じれば兵は退くと判っていても、一触即発状態になってしまった広場に、キョウを出す事はどうしても躊躇われた。
下手をすれば、戦意に興奮した兵士達が誤って、こちらに攻撃をしかけてしまう可能性もあるからだ。
「――下手に巻き込まれれば、ガキが死ぬ」
「――っ!!」
そうなってしまえば、危ないのはザイツやキョウではなく、身を守る力の無いロンだ。
『――魔法で援護しても、弓兵か魔法兵がいたら即反撃される。魔法で辺り一面燃やされでもしたら、ガキには耐えられねぇ!! 流石にそれはまずい!!』
「……ザイツさん……」
ザイツの言葉に頷いたキョウは、ロンを庇って抱きしめ後ろに下がる。
身に迫る恐怖が魔族嫌悪に勝ったのか、ロンは拒む事無く震える手でキョウにしがみつき、息を飲む。
『……ケイトは……流石に馬車から出られないか。……どうする……どうする気なんだ……おっさん……?!』
その二人を背に、剣を握り締めながら広場を睨むザイツの視線の先で――ハウルグは動いた。
【――一つだけ、言っておく】
「聞きやしょう」
一歩前に出たハウルグを兵達で囲みながら、ヴァーナは返す。
【背後の馬車に乗る女性とその仲間達は、俺の窮状に耳を傾け、事件解明に助力してくれる事になった善意の部外者だ。彼女らに魔王軍と敵対する意志は一切無い】
「……」
【――王庭騎士第十二位、フェンリル族ハウルグが誓う。そして曹長ヴァーナ以下魔王軍兵士諸君に、彼女らの身の安全保証を求める】
ハウルグの言葉に、ザイツは驚いた。
ザイツ達に魔王軍への害意が無いと宣言しているという事は、ザイツ達の助力を一切必要としない――つまりハウルグただ一人で、彼らと戦うという事だ。
「……お言葉、確かに承りました。魔王陛下の寵深き騎士たる、貴方様の誓いを信じやす。彼らからの攻撃や援護が無い限り、あたしらは彼らを攻撃せず、また人質にとる事もしやせん」
【ああ、助かる】
ザイツの動揺をよそに、ヴァーナはあっさりとハウルグの言葉を認め、そしてより殺気を強めてジリジリと、ハウルグへの包囲網を狭めていく。
『だ――大丈夫なのかおっさん――』
そして包囲されるまま、ハウルグは動じる事無く両拳を握り、その場に立つ。
『いくら魔王の騎士ったって――たった一人で――――え』
――だが不安なザイツの思考は、突如『吹き飛んだ』、包囲網を形成していた魔物達の叫び声によって破られた。
「え――えぇえ?!!」
【ギャアアア?!!】
【ヴォアアア?!!】
【アヒィイイ?!!】
【オラ行くぜぇええ!! ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!】
強烈な雄叫びと共に、フェンリルの姿がぶれ た。
それが残像だと気付いたザイツの目の前でハウルグは跳び、二度、三度、その爪が敵群を薙ぎ払い、まるで木の葉でも撒き散らすように、次々後方へと吹き飛ばす。
『す――げえぇええ?!!』
常人には到底捉えきれない脚力と瞬発力、そして一撃一撃で武装ごと叩き潰す拳と蹴が、多勢に無勢だったはずの魔王軍の兵士達を、あっという間に蹂躙する。
「チィ!! 怯むな!! 押し切れ!!」
【そいつぁ悪手だぜヴァーナ。――多勢に無勢の白兵戦は、フェンリル族のお得意芸だ!!】
「くっ――!!」
一手目をかろうじてかわしたヴァーナが部下を鼓舞して反撃に転じるも、鋭いはずのバトルアックスでの連撃は、ハウルグの影すら打ち抜く事はできない。
「しま――」
【――死にたくなけりゃあ身構えな!!】
兵士達と同時に仕掛けてきたヴァーナの刃を紙一重で避け、その懐に踏み込んだハウルグは、猛然と地を蹴り体術を宣誓する。
【――旋風蹴撃!!】
巻き上げるような回し蹴りがヒットし、ヴァーナを含めたハウルグ周辺の敵は全て、その勢いのまま地面に叩き付けられた。
「げほぉ!!」
鎧と共に何かが破壊された音が派手に響き、口から鮮血を吐き出すヴァーナと、悶え苦しむ兵士達。
「……え……うわ……」
ザイツが気付いた時には、広場は倒れ伏した魔王軍兵士で埋め尽くされていた。
自分が恐怖した魔王軍兵士のあっけない敗北に、ザイツは呆然としながら、悠然と広場に立つハウルグを凝視する。
『なんだ……これ。……これが……魔王の……騎士?』
――そして王庭騎士という存在が、自分はおろか魔王軍の兵士達と比べても、圧倒的にかけ離れた存在である事を、目の前の光景で思い知った。
【――肋骨が内臓に刺さったかヴァーナ? オーガの回復力なら死にはしねぇだろうが、さっさと治療しねえと悪化するぜ。村の周りを囲んでる兵達を呼んで、撤退させろ】
「は……はは。……完敗でさぁ……ハウルグ様」
【バカを言うな】
そのハウルグは、血を吐き息も絶え絶えに呟くヴァーナに、静かに言う。
【魔兵や弓兵が加勢してきたら、俺はもっと手間取っていたぜ。……お前、そもそも俺を捕まえる気なんかなかったろう?】
「……はは、それでも……命令されれば働かなければならねぇですからねぇ。……ハウルグ様も手を抜いて、あたしらをこの程度で済ませて下さったし……まぁ、おあいこでさぁ……」
ハウルグの言葉に、血塗れになった口元を歪めてヴァーナは答えて身を起こすと、怪我人とは思えない大声で、命令を下す。
「総員に告ぐ!! 及び直ちにこの場に集合、整列せよ!!」
命令に痛みを忘れたように兵士達は立ち上がり、また村周辺に待機していたのだろう兵士達も、続々と広場に集まって来た。
ヴァーナは口から流れ出る血を震える拳で拭うと、背を伸ばして兵士達に向き直り、言葉を続ける。
「本戦闘において、部隊の戦闘不能者が四割を越えた!! これにより本隊は壊滅状態となり、任務続行は不可能であると判断した!! ――そして『撤退が不可能』である以上、我々は勝者である王庭騎士ハウルグ卿に、『捕虜』として従わなければならない!!」
ヴァーナの言葉に、オォウ!! という魔物達の歓声が上がった。
訳が判らずハウルグも、背後に隠れていたザイツ達も当惑する。
【――はっ? ヴァーナ? お前何――】
「げっふぅううううう!!」
【って恰好つけつつ血吐くな!! 寝てろ!! 本当に死ぬぞ!!】
「い、いや……このまま戻ってもあれこれ坊ちゃんエルフが五月蠅いですからねぇ。……ここはいっそ事件解決まで……任務続行中って事で……ハウルグ様のお手伝いをした方が得って判断でして……そういうわけで……兵達を……頼みやす……」
【っておぉおおい?!! しゃべるな!! ってかそれなら最初から戦わないで適当にしとけよ!!】
「……いやだって……騎士様とガチ勝負できる機会なんて……そうある機会じゃねぇですし……もったいねぇっつぅか……」
【……あ?】
ヴァーナの言葉に、その通り!! と同意する兵達。
「……あの女オーガと兵士達……ようするに……おっさんと戦いたかったのか……?」
「た……体育会系……っていうんですかね? ――ああまた血吐いた!! ハウルグさんー!! もういいですよねー!! 皆さんの治療しますよー!!」
【あ……ああ、頼みます、殿下】
予想外の展開にやや戸惑うハウルグの元に駆け寄り、キョウとザイツは血を吐いて倒れたヴァーナと、その他怪我をした兵達の治療を手伝う事になった。
「……あ……あれ……? 御令嬢……どっかでお目にかかったこたぁねぇですかい……?」
「あ、あはは……それは後でお話しましょうヴァーナさん。ええと……治療できる人は、他にいませんか?」
ヴァーナに問いかけたキョウの言葉に、ふと気付いたザイツは周囲を見回す。
「……あれ? そういえば……結局ケイトってこの騒ぎで何してたんだ?」
【え? そういえば……あの娘は、馬車から出て来てないであるぞザイツ】
「マジかバカラス? ――うお?!」
駆け寄って来たカンカネラの方に向こうとしたザイツの目の前で、バタンと音を立てて馬車の後ろ扉が開いた。
「――真相解明計画が出来たぞ皆!! この計画通りに証拠を集める事ができれば、私が立てた一つの仮説が証明され事件も解決するはずだ!!」
中から出て来たケイトは、とても嬉しそうに出来上がった紙面を片手に力説し――ふと周囲を見回す。
「……あれ? 何かあったのか? ――おぉ?! まさか彼らは魔王軍?!」
「……まさかもへったくれもねぇよ。……ケイト、お前今何があったのか、全く気付かなかったのかよ?」
「今? ……え?」
人型に戻ってケイトに問いかけるハウルグを見返したケイトは、しばらく考えるように沈黙し、そして困ったように答える。
「……どうやら私は、何かの考えに没頭すると、周囲の音が聞こえなくなるようなのですが……もしかして今回も、そうだったのでしょうか?」
「…………ケイト…………お前…………」
「も、申し訳ないハウルグ卿っ。ええとよく判りませんが、お疲れ様ですっ」
「……」
ケイトを見るハウルグ以下全ての者達は沈黙し、肩を落とした。
そしてザイツ達は、真相解明計画と人手(兵士達)を手に入れた。
キョウ「ケイトさん……何かがおかしいです」
ザイツ「あんたが言うな」
ケイト「えっ?」
ハウルグ(シクシク…)




