32 事件の経緯を追うが何かがおかしい②
馬車は横道を進み、魔獣避けの木柵が見えて来た所で止まる。
「あれか?」
「う、うん……あ、ちょっと待って。もしかしたら、まだ罠が残っているかもしれないから」
深い山中。木々の隙間をなんとか整えたような小平地に、村らしき家々の残骸は残っていた。
ロンは一言ケイトに残して馬車を降りると、正面入口らしい古びた木門まで走って周囲を見回し、何かを確認した後馬車へと呼びかける。
「草地に鳴子と足掛け縄が残ってる。正面からなら大丈夫だから、この道をまっすぐ来てくれっ」
「ロン君、罠などあったのか?」
「うん。……元々は小さな魔獣用だったんだけど、戦争が始まるって聞いて、大人の人達が村周辺に増やしたんだ。……あんまり、意味なかったみたいだけど……」
ケイトの問いにやや沈んだ声で答えながらも、ロンは手を振って馬車を誘導し、それに従って馬車は村の跡地へと入った。
「……ここが」
「……」
帰って来た者を諦めさせるように、人の気配は全く無かった。
「……そうだよ。……ここが、俺の村……だった場所だ」
誰に答えるでもなくそう言葉を漏らすと、ロンは服の胸元を握り締める。
馬車から降りたザイツ達を最初に迎えたのは、ひび割れ苔生した石造りの井戸がある広場と、それを囲むように建っていたのだろう、破壊され崩れ落ちた木造家屋の成れの果てだった。
ザイツは緊張の面持ちで辺りを見回すキョウの後ろで、村周辺の様子を観察した。
『……草だらけだな。……それに……さほど脅威でもないが、小魔獣がちらほら見える』
自然に返りかけている土地、というのがザイツの第一印象だ。
ザイツは蔦に絡みつかれた家屋跡や、雑草が生い茂る畑後からこちらを伺う小魔獣達を警戒しながら、この村が既に人の住む場所ではなくなっている事を実感した。そして。
「……ここで死体になった連中は、あいつらに喰われたのか?」
「ひぇえ?!!」
その死んだ村の中に、残っているはずの死体が見えない事にも気付いた。
「でもそれなら髪や骨くらい残ってねぇか? ……うーん、見た感じ散らばってはねぇようだな。……だったらアンデッド化して? ……にしては、それっぽい腐臭もねぇし……」
「ざざザイツさん!! 淡々と怖いです!! ていうかゾンビはやめてください!! バイオハザードは私無理です!!」
「(ばいおはざーど?)――姫様、落ち着いて下さい。……アンデッド特有の引き摺るような足跡も、怨念が残す魔力もありませんし、ここの村人がゾンビになって夜間徘徊、という事はなさそうですよ」
ケイトはガタガタ震えてザイツのマントを掴むキョウをなだめると、跪いて地面を確かめた。
「――もしかして、君が埋葬したのかロン君?」
「え? ……う、ううん、やってないよ。……俺はリリエに逃げ戻ってから、怖くてここまで来られなかったし……弔ってやる事なんて……」
「そうか」
「……もしかしたら……あの時来ていた隣村のじいちゃんが埋葬してくれたのかも」
「……隣村? ここで会ったのかい?」
「うん……ここに帰って来た時に」
「……ほう」
「……でも一人じゃ無理かな……やっぱり俺が帰って、埋葬すべきだったかも……」
ケイトに問われたロンは、恥じたのか僅かに目線を逸らし、小さな声で答える。
「そりゃ別に恥じる事じゃないだろう」
「――いたっ」
その頭をやや荒い仕草で叩いたのは、いつの間にかどこかに行き、戻って来たハウルグだった。
「無人の村なんて、魔獣や無宿の罪人が棲み着く場合もあって一人じゃとても危ねぇ。無理しなくて正解だ」
「べっ、別にお前に慰めてもらわなくたって平気だ! どこ行ってたんだよ狼!!」
「墓場」
「え?」
「ここに調査に来た兵士が、遺体はまとめて埋葬しておいたって聞いてたからな。……現場保存しろとは命じられてなかったから、放置されて朽ちた遺体を放っておきたくなかったんだそうだ」
「え……弔って……くれたのか?」
「簡単にだが。ほら、こっちだ」
手招きするハウルグに、ロン、ザイツ、キョウが続き、その後ろを馬車を引いたケイトが続いた。
倒壊家屋が塞いでいない小道をしばらく進んだ一行は、やがて村の裏手らしい薄暗い木陰に出た。
木陰の下にはいくつもの新しい土山がしっかりと固められ、その上にはそれぞれ、墓標として大きな丸い石が乗せられていた。
「――うっ」
それを見たロンは、思わず声を上げて口をへの字に結ぶ。
「……坊主、言いたい事は判るが、文句言うな」
「い、言える立場じゃねぇ事くらい判ってら!! ――でも――やっぱり嫌だこの墓!! 邪神信者の弔い方じゃねぇか!!」
「邪神じゃねぇ!! 闇神シューレ!! 仕方ねぇだろうが!! 埋葬したのが魔王軍の兵士達だったんだから!!」
移動中の会話でお互いに慣れてしまったのか、ハウルグとロンは遠慮なく言い合い睨み合った。
「……あれ、お墓ってそんなに違いましたっけ、ザイツさん?」
「神体を暗喩する、月の影を表す丸い物を墓標にするのが闇神シューレ信仰。同じく神体を暗喩する、太陽の輝きを表す十字を墓標にするのが光神ゼーレ信仰だ。……どっちも異教の祭事なんてしたくないからな、弔ったのが魔王軍の兵士なら、シューレ信仰の墓になっても仕方が無い」
「へぇ……」
「ほら、向こうの古い墓はみんな十字だろ。人族はほぼゼーレ信仰だからな。」
そんな二人を見ながらザイツの説明を聞いたキョウは、『十字架じゃなかったんだ……』と呟きながらも墓の前に跪き、両手を会わせて黙祷した。
十字架とは何かと考えたザイツとケイトも、とりあえずキョウの後ろで墓前に跪き祈り。それに気付いたハウルグとロンも、言い合いをやめてキョウ達と共に祈った。
「天におわす我らが主、尊き唯一神ゼーレよ。戦に倒れし善良な者達の魂を、どうか天の国へと導きたまえ……」
「地と共に在る我らが主、慈悲深き闇神シューレ。死者を哀れみたまえ。その魂が新たなる目覚めの時を迎えるまで、彼らを安らかなる地の楽園にて見守りたまえ……」
「っ!! 人族の墓で祈るならこっちに合わせろよっ」
「クサレ光神なんぞに祈ってたまるかっ」
「なんだとおっさん異教徒!! 野蛮魔獣!!」
「うっせークソガキ異教徒!! 脆弱人族!!」
「……おっさん、ガキ、うるせぇ」
「放っておけザイツ。……さて、そろそろいいですか姫様?」
「あ、はい」
やがてケイトの声で、目を閉じていたキョウは顔を上げ立ち上がった。
「そろそろ井戸があった広場に戻りましょう。現場検証もしたいですし、ここは遮蔽物が多すぎて、話し合う場には向きません」
【あっ、それなら我輩、弟分を一休みさせて水を飲ませてやるであるっ。おいでであるガンバーっ】
【ヒヒ~ン♪】
そしていつの間に兄弟分になっていたんだ、というザイツの問いを無視し、小馬の頭の上から飛び降りた魔烏カンカネラは、小さな鳥の姿から使用人服の少女姿になって、馬車を引いて広場へと戻って行った。
「絶対後で墓標を直すっ」
「細かいガキだな」
「細かくない!! 邪神信仰の村なんて思われたら大変じゃねぇか!!」
「だから邪神じゃねぇっつってんだろーが!! 闇神シューレはなぁ!! 種族差別せず全てを慈しむ、優しい神様なんだぞ!! 人族だって差別しねーんだぞ!!」
「ゼーレ以外の神なんてみんな邪神だ!! 人族は選ばれた種族だから、特別に唯一神ゼーレが愛して下さっているんだ!!」
すっかり言い合いが定着したハウルグとロンを連れ、一行も広場へと戻った。
「――さて、宗教対立は置いておいて、情報収集の続きといきましょう。次はハウルグ卿、お話を伺えますか?」
「お、おう。……話せる事なら、なんでも答えるぜ」
墓を見てある程度神妙な気分になったのか、ハウルグはロンとの言い争いを止めてケイトに頷いた。
飲みに来る魔獣で、毒物が入っていない事を確認した井戸水を飲むガンバーを優しく撫でたケイトは、視線を倒壊した家屋に移すと、冷静な言葉をハウルグに返す。
「助かります。――さてハウルグ卿、先程聞いた通り、まず貴公はリリエッド砦を攻めた時、山道を進んで砦を囲む山側面を登ったのですね?」
ケイトの視線を追うように倒壊した家屋に視線を移したハウルグは頷く。
「ああ。――あまり詳しい道順や作戦、装備なんかは軍機に関わっちまうんで言えねぇんだが……」
「詳細な進軍ルートや砦攻略作戦などは必要ありません。――ハウルグ卿、私が聞きたいのは、まず『貴方がこの村の近くを本当に通過したか』どうか、です」
「……この村の、リリエまで続く山道を使ったかって事だな?」
「はい。……バース連合国の国境沿いには、ここだけでなくいくつかの小村が点在しており、そのどれもが小都リリエと山道で繋がっております」
ケイトは手にしていた地図を広げ、ハウルグと話を聞くロンやキョウ、ザイツに見せながら言う。
「村と村を繋ぐ山道はありますがかなり距離がありますし、当然砦に向かうにしても遠回りになってしまいます。そんな『寄り道』をわざわざしてまで、この小村を襲うような理由はありますまい」
「……そうだな」
「――つまり貴方方がこの村の山道ではなく、どこか別の村の山道を使ってリリエッド砦に向かったのであれば……この村の壊滅に関わっている疑いは、かなり薄れる事になるのですが……」
「……」
ケイトの言葉を聞いたハウルグは、真剣な表情で地図をしばらく見つめていたが、やがてはっきりと首を振る。
「……残念だが、別の山道じゃなかった」
「……確かですか、ハウルグ卿?」
「ああ、実際にここまで馬車で来て、地図でも確かめたから間違い無い。……俺達がリリエッド砦へ進軍する際に使った山道は、確かにすぐそこの道だ。……つまり認めたくはねぇが、この村が潰されたその夜、俺達は確かに、そのすぐそこの道を通過していったって事になるな」
その答えにロンは眉根を寄せてハウルグを睨んだが、ハウルグは動じない。
「狼……誤魔化さないんだな」
「誤魔化したら、真犯人を見逃すかもしれねぇだろ。嘘は言わねぇ」
「……」
ハウルグの言葉に再び視線を倒壊家屋へと移したケイトは、それをじっと見つめながら、言葉を続ける。
「……ではハウルグ卿、貴方方が国境を越えて山道に入り、この村付近を通り過ぎたのは、大体何時頃だったと思われますか?」
「何時……か。……ケイト、地図を貸してちょっと待っててくれ。――……作戦開始時刻が……目標地点到達時刻は……で、確認を取ったその中継地点到達時刻……一度あった徘徊魔獣との戦闘は……だったから……つまり……――」
ハウルグはケイトから地図を受け取ると、それを更に睨みながらブツブツと何かを呟き指を折った。
そしてしばらく後、ハウルグは地図から顔を上げるとケイトの問いに答えた。
「――おおよそだが俺達が進軍中、この村に最も接近したのは、リリエッド砦攻略当日の、二十の時半~二十一の時くらいだ」
「二十の時半、ですか……」
「夜の八時時半? 夜中の移動だと思いましたが、意外と早いんですね? 村の人達はまだ起きてたんじゃないですか?」
キョウの疑問には、ロンが答える。
「いや、街の人達は夜遅くまで起きてるけど、俺達の村じゃ油がもったいないから、大抵は日が落ちて夕食食べたらもう寝る時間だよ。その分朝は早いけど」
「あ、そうなんだ」
「うん。……だからええと……時間で言うなら、十九の時半~二十の時くらいには、みんな寝てるかなぁ。家の灯りも消えてるはずだよ」
ロンの言葉に頷き、ハウルグは更に付け加える。
「そうだな。正直まだ早いかと思っていたが、山道を移動している時、この付近でも灯りらしい灯りを殆ど見なかったのは、そのせいだろう」
「だろ?」
ああ、と頷いたハウルグの目が、何かを思い出したように眇められる。
「……だがな、普通の村なら門前や緊急事態を知らせる半鐘付近くらいには、松明の灯りくらい一晩中灯しているはずなんだが……そういえば、この村からはその灯りらしい火も見えなかったぞ?」
「え?」
「小僧、この村では夜、非常灯まで全部消して眠るのか?」
ハウルグの問いに、驚いたようにロンは首を振った。
「そんなはずはないよ。いくら貧乏な村だって、いつもはちゃんと獣避けに門前は松明で照らしてるし、緊急用の半鐘の昇り口だって小さなランプを灯しているぞっ」
「そうなのか? ……それじゃあここが、まるで無人の村みたいに真っ暗だったのは……俺達が通った日だけだったのか?」
「無人って、いくらなんでもそれはねぇよっ!! ――なんだよ!! まさかお前達が通り過ぎた時には、もう村が潰れてたとでも言うのかよっ?!」
「いや、多分それはない。――俺達フェンリルは、夜目と耳鼻が効くからな」
ハウルグはあっさりロンの推測を否定する。
「村は遠目からちらっと見ただけだったが、今は派手にブチ壊れてる村の外柵も、柵の中に建っていた家もちゃんと見えたし、物騒な物音も、人が大勢死んでいるような死臭や血の臭いも全く感じなかった」
「そ、そうなのか?」
「ああ。これでも警戒して進んでいたからな、周辺地点に異常があれば、すぐに気付いたはずだ」
ハウルグの言葉を聞いていたケイトは、額に指を当てながらなるほど、と呟く。
「……つまり貴公の言葉に嘘が無ければ、リリエッド砦攻略当日の、少なくとも二十の時半~二十一の時までは、村は無事だったと言うことですね」
「そうだな」
ハウルグは頷く。
「―― 一応ざっとその後の事を言っておくと、砦を本隊と俺達強襲部隊で攻めて、あっという間に陥落させたのが、砦攻略当日二十四時丁度。その後はそのままリリエの正門周辺に包囲網を敷きつつ降伏勧告して、リリエが降伏に応じたら境警備に当たっていた後衛部隊と連携して占領作戦に入って――という感じで、俺も部下達――というより多分占領軍全体、交代して仮眠とる以外全く自由時間なんか無かった」
「忙しかったんですか?」
「ああ、おまけに指揮取ってるのがあのクッソ真面目坊ちゃんエルフだし。とにかく『将校から末端の一兵士に至るまで、魔王陛下に恥じぬ働きを見せよ!!』っとまぁ、うるせぇうるせぇ」
悪態をついたハウルグは、首を振って続ける。
「――だがあの時は、その石頭な真面目さはよかったんだろうな。下手に規律を緩めて好きな事させたら、リリエの住民は猛っていた魔王軍の兵士達に略奪暴行されて、酷い事になってただろうから」
「そ、それは……よかったです」
キョウのほっとした声に、ですねと苦笑したハウルグは答えた。
そして家屋の方を向いているケイトに、声をかける。
「――これで全部か? 聞きたい事が他にあるなら、今言ってくれケイト」
「……少々お待ちを」
いつのまにか、家屋の方を向いていたケイトは腰に下げていた袋から手帳と細い木炭を取り出し、何かを書きながらハウルグと会話していた。
「――ではハウルグ卿にロン君、もう少しだけ質問させて下さい」
「いいぜ」
「いいよ」
ケイトは休まず手を動かしながら、二人に問う。
「まずロン君からは聞いておりますので、ハウルグ卿に。――戦前に密偵から情報は得てらしたでしょうが、この山道一帯に、盗賊の根城や盗賊の出没情報はありましたか?」
「坊主が言った通り、この辺に盗賊は出てない。不安材料や、逆に取引材料にもなりえるから念入りに調べたらしいが、砦が睨みを効かせていたのもあるんだろう、そういった連中が砦一帯から山道にかけて出没する事はなかった」
「なるほど」
ケイトは小さく頷く。
「次はロン君に。――ロン君の村の人達は、よく行商に出ているのかな? 出ているとしたら、それはどの辺りに?」
「行商? ――うん、行ける人は行ってるよ。国境越えて隣の国にも。うちの村で取れるボッジ綿の紡ぎ糸とか、カトラやギスモーで売れるんだよ。……ああでも……村が潰された日は……俺達以外村の外に行ってた人は、いなかったかも。……トーマスさんも帰ってきてたし……」
「……外国か……」
しゅんとするロンに、そうかとケイトは短く答える。
「それでは最後に、二人に質問です。この辺りで、大型魔獣はどれだけ出没し、危険視されていますか? また出没するとしたら、何が確認されていますか?」
さして間を置かず、まずロンが答える。
「えーと……山道じゃ、魔獣なんて小さなヤツしか見た事ないな。襲われた事も無い。山奥にいけば灰色熊や大猪の巣があるらしいけど、この辺じゃ見た事ないよ」
続いてハウルグが答える。
「坊主とあまり変わらないな。やはり砦が目を光らせていたんだろう。国々を結ぶ街道よりも、山道村周辺には危険な魔獣は出ないようだ。進軍中に一度交戦したのもザコの集まりだったし、人族の村にも簡単に対処できるレベルだろう」
「なるほど……ありがとうございました」
カリ、と音を立てて、ケイトは手帳に書きこみ終える。
そして厳しい顔でそれをしばらく見下ろした後、千切った手帳の紙をハウルグに渡す。
「どうぞ、御覧下さい」
「お、おう。……こりゃ」
そこにはケイトが今まで聞き取った、事件の時系列が書き込まれていた。
○ボッジ村の接触者動向(事件当日~次日)
6:00~7:00 ボッジ村無事(確実)。
ロン&ユミィ村出発。
トーマス帰村(焦った様子)。
14:00頃 ロン&ユミィ、リリエの街に到着。
夕刻(17:00前後?)ボッジ村一応無事。
修理工ダッドリー&息子のデイブ村来訪。
村の住民焦っていた様子(ダッドリー&デイブ談)。
18:00~19:00 ボッジ村一応無事。
ダッドリー&息子のデイブ村出発。
20:30~21:00 ボッジ村一応無事(遠目)。
ハウルグ卿部隊、ボッジ村付近を通過。
灯りは全て消えていたが、外観は無事。
騒乱の気配も無し。
22:00前後 ボッジ村不明。
ダッドリー&息子のデイブ、リリエのロン祖母宅に寄る。
村の様子をロンに話す。
24:00 ボッジ村不明
ハウルグ卿部隊、リリエッド砦攻撃→陥落。
魔王軍はそのまま占領作戦に(忙しい)。
ロン&ユミィ、リリエの街を出発。
次日夜明け頃
(6:00~7:00?) ボッジ村壊滅
ロン&ユミィ村に到着→リリエに戻る。
その時隣村住民に遭遇。
○気になる点。
※村周辺は元々とても平和。盗賊や魔獣の脅威もほぼ無し。
※事件当日に外(外国)から帰って来たトーマスは焦っていた(ロン談)。
※ダッドリー&デイブ談、夕刻頃には村の住民全体で焦っていた(会議)。
※普段は灯されているはずの村の非常灯が、その日は消えていた(意味は?)。
※事件当日魔王軍は忙しかった。しかもその統制は、厳しく行われていた。
「おお、なるほどなケイト」
「大体でも、時系列で並べると判りやすいですね」
ザイツとキョウはハウルグの左右から紙を覗き、中身を確認した。
「……なんて書いてあるんだ?」
「今まで俺達が話した事を、まとめてあるんだ」
一方字が読めないらしいロンは、ハウルグから内容を聞く。
「……それら全てが事実だったとすると、少なくともハウルグ卿が通り過ぎた二十時半~二十一の時まで、村は無事だった事になります。そしてその後から、次の日の夜明け頃――六の時~七の時頃、ロン君が村に戻ってくるまでが、村に何かが起こった犯行時刻となります」
一通り皆が紙の内容を理解したのを確かめたケイトは、視線を向けていた家屋の側へと歩み寄りながら、真剣な表情で口を開いた。
「……ですがその間に、この村を襲える者が、本当に存在したのでしょうか? ――ハウルグ卿が村を通り過ぎた跡に――このような跡を残す者が、再びこの場に現れる事ができたでしょうか?」
「――っ」
家屋に近づいたケイトは、倒れた柱に絡みついた蔦を、取り出したナイフでそぎ落とし、皆に見せた。
――その柱には、人の倍は大きいだろう手を想像させる、四つ指の爪痕がはっきりと残っていた。
ハウルグは目を見開き一瞬でフェンリルの姿に戻ると、自分の四つ指の巨大な手を睨み付けた。
そんなハウルグをじっと見つめながら、ケイトは言う。
「この村の周辺には盗賊はいない、単独で村を壊滅できるような魔獣もいない。……更に言えば、砦攻略後そのまま占領作戦に移った魔王軍の兵士達に、のんびり略奪している暇も無い」
【それは――】
「――ハウルグ卿、この爪痕を見た者達は現実的に考えて、確かにこの場を通り過ぎた、貴方方以外の襲撃犯を想像できないと思います」
【っ!! ――だから――やっぱり俺達がやったって言うのかケイト?!!】
空気を震わせるような怒声で、ハウルグは吠えた。
そんな怒るフェンリルから目を逸らさず、ケイトはハウルグに一言で答える。
「――いいえ」
【――っ】
「――それでも、貴公が犯人だという答えを真相だと確信するには、色々なものがひっかかるのです。……この事件は、何かがおかしいのです。だから気になって仕方が無い」
ケイトは腕を組み足下の柱につけられた爪痕を睨み付け、それから周辺を見回して言う。
「そういう訳で……謎を解くために人手が欲しいのですが、皆さん、重労働してくれますか?」
勿論姫様は除いて、と続けたケイトは、しごく真面目な表情でハウルグを見つめる。
「ケイトお前…………変な女だなぁ」
人型に戻ったハウルグは、嬉しさと当惑をない交ぜにしたような微妙な表情を浮かべ、そんなケイトを見つめ返した。
キョウ「人手……何をするんでしょうね?」
ザイツ「とりあえず、イヤな予感しかしねぇ」




