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必要なのは度胸である。

結論から言うと、マリアはこの提案に乗った。

まぁ、八割ほどは乗らざるを得なかったと言ってもいいのかもしれない。

本当に困っているが故、否、困っているからこそ、この提案に乗ることにしたのだ。

事実、マリアにとって、悪い話ではなかった。

聖女にならないかと言われたが、雇用契約書のある雇用体系であり、更に週休完全二日、昇給制度あり。試用期間はあるものの、社員寮すら完備されている。業務内容はごみ拾い等の社会奉仕活動と

「……ヒーローショー?」

思わず目を疑った。教会でミサみたいな感じではないのか。ヒーローショーって何なんだ。

「聖女として出て欲しいわけよ。子ども喜ぶ、社会貢献になる、ついでに犯罪抑止にも繋がる防犯意識とかさ?なんかそういうのにも良いじゃん?」

「しかし、ヒーローショーって……そうなると……」


目の前の人物はまるで本物の悪の怪人のような風貌ではないか。


「うちの会社は超ホワイト!何せ世界征服した際に皆には快く従ってもらう必要があるからなぁ。基本業務内容は防犯意識向上のための防犯教室とヒーローショーと細々とした物販です」

「意図がわかる分何とも言えませんわね……」

「まぁそう言うなよお嬢ちゃん。アンタもすぐこちら側の住人と書いてスタッフになるんだからよ。いや、キャストか?まーそんな事は良いや」

マリアの手に黒いインクのついたペンがしっかりと握らされる。

「こんな高待遇、逃しちまうともう二度とないだろうからなぁ?」

試されている。

直感的にそう感じた。

見るからに怪しい、しかし記憶の中で持ち得る“過去の”契約書の中では1番まともで、それでいて1番抜け目なく健全な契約書である。それがまた胡散臭さを醸し出す一因であろう。

……しかし、それがなんだと言うのだ。

母が遠洋漁業船に乗ると出て行った。父が借金のカタに連れていかれた。可愛い妹と離れて暮らすことになった。

這い上がってみせますわよ。絶対に。

契約書に己の名を記すマリアの瞳には強い意志が灯っていた。

「マリア・クランテット。本日より御社で精一杯働かせていただきますわァ!」

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