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クリスマス①

悠夜ゆうやさんに問題です。今日は何の日でしょう」


「クリスマス」


「正解です!」


 あれから数日が経ち、十二月の二十五日、クリスマスになった。


 特に何事もなく今日を迎えたけど、あの日から紅葉もみじとは会っていない。


 もしかしたら何かやってくれてるのかもしれないけど、一度会ってお礼を言いたい。


 ちなみに何も無かった理由は、今日の為に必要最低限しか会わないようにしてたからだ。


「今別の女の人のこと考えました?」


「紅葉、最近見なくない?」


「あぁ、そうですね。ちなみに私は紅葉さんと連絡を取ってるのでお礼は言いました」


「それはずるくない?」


 俺だって紅葉にお礼を言いたいのに、俺は紅葉の連絡先を持ってないからお礼が言えない。


 別に追加しようと思えばできるけど、今更勝手に追加するのも抵抗があるし、それなら顔を合わせてお礼を言いたい。


「悠夜さんは絶対に浮気ができないタイプですよね」


「隣に世界一可愛い子がいるのに浮気する必要あるの?」


「ひ、贔屓目ですよ!」


 珠唯すいさんが顔を赤くして俺をポカポカと叩いてくる。


 ほら、世界一可愛い。


「お前らさ、イチャつくなら家でやれよ」


「別にイチャついてないですよ。ただ可愛い珠唯さんとたわむれてるだけで」


 厨房から出てきた店長に呆れられたような目で見られた。


 それを世間ではイチャついてって言われたらそれまでだけど、少なくとも俺は珠唯さんを楽しんでるだけでイチャついていない。


 そういうのは今日を境に徐々に増やしていく予定だから。


「そういえば紅葉ってバイトには来てるんですか?」


「来てるぞ? そういえばお前に話したいことがあるけどなかなか会えないってボヤいてたな」


「そですか」


 そういうことなら珠唯さんに言うなりして連絡をくれればいいものを。


 まあ、隣の珠唯さんが何もしてこないあたり、言われてるけど俺には話してないってことだろうけど。


「紅葉に伝言頼まれてたりする?」


「わ、私を疑うんですか……?」


「俺はあるかどうかを聞いただけだよ。あるなら教えて。教えたくないならその理由を教えて」


「……言わなかった私のこと、嫌いになりますか……?」


「俺が珠唯さんを嫌いになることはないよ? それだけは保証する」


 俺がそう言うと、珠唯さんが頬をほのかに赤くして俯いた。


 逆に何をされたら珠唯さんを嫌いになるのだろうか。


 多分珠唯さんに命を狙われたとしても許す自信はある。


 というより、珠唯さんは俺が本気で嫌がることを絶対にしないとわかっているからそう思うのだろう。


 珠唯さんのそういうところも好きになった理由の一つだし。


「今日はここら辺にホワイトクリスマスはないな」


「なんでですか?」


「局地的に暑すぎるからだよ」


「暖房つけてるからじゃないですか?」


「ソウダナー」


 店長がものすごい棒読みで答える。


 一体なんなのか。


 なんか腹立つから元旦は休んでやろうか。


「まあいいや。邪魔者は帰るよ、クリスマスに仕事をしてる同志達の元に」


「あなた旦那いるでしょ」


「単身赴任中だから一人なんだよ。言わせんな」


 これは失礼なことを言ってしまった。


 あんな寂しそうな店長は初めて見た。


 仕方ないから元旦も出てあげよう。


 そんなことを考えていたら寂しそうに店長が厨房に帰って行った。


 何しに来たのか。


「店長さん、可愛かったです」


「ああいう人って好きな人の前だと乙女になるのかな」


「悠夜さんも私の前では……」


 珠唯さんが何かを言おうとしたけど、途中で止まって不服そうに頬を膨らました。


「どした?」


「別になんでもないです。ただ悠夜さんは私以外の人にも可愛いところを見せるのが嫌だとか思ってません」


「ほんと可愛いな。だけどそれはそのまま返すぞ?」


 珠唯さんだって俺以外の人に可愛いところを見せつけている。


 というか珠唯さんは存在そのものが可愛いのだから俺以外の視界に入るべきではない。


「俺だけの存在でいて欲しいよ」


「ボソッとそういうこと言わないでくださいよ! それと私は悠夜さんだけのものです」


「ありがと。じゃあとりあえず外出ようか。クリスマスに生まれる『リア充撲滅委員会』が動き出す前に」


 一応俺と珠唯さんが付き合ってることは誰にも言っていない。


 珠唯さんが誰かに話してる可能性はあるけど、少なくとも俺は誰にも話していない。


 だけど今の状況を見たら付き合ってなくても撲滅委員会に消される可能性が高い。


「悠夜さんと私はリア充……嬉しい」


「そういう不意に見せる笑顔やめな。可愛すぎて手が出る」


 珠唯さんの満面の笑みが可愛いのは当然として、こういう不意に見せる小さな笑顔は不意打ちなのもあって破壊力がやばい。


 今は外だから抑えられてるけど、いつかそれも抑えが効かなくなって無意識に頭を撫でていると思う。


「出していきましょう」


「出しません。それよりも行くよ」


「どこにですか?」


「言わせたいだけだろ。デートだよ。その前に紅葉の話は聞くけど」


「むぅ、台無しじゃないですかー」


 珠唯さんは不服そうに頬を膨らませるけど、紅葉の話は今日中に聞きたい。


 だけどさすがの俺でも好きな人とのデート中に他の女の子の話をさせるほど常識が無いわけではない。


 だからデート前に紅葉の話は済ませたい。


「わかりました。悠夜さんがそんなに私よりも紅葉さんとお話したいって言うなら仕方ないですね」


「ははっ、怒ればいい?」


「目が笑ってないですよ……でもそんな悠夜さんが好き」


 俺の一番が珠唯さんから移ろうことは絶対にない。


 珠唯さんも俺の性格をわかっているから理解してるだろうに、そんなことを言うのならわからせないといけない。


 とりあえず帰ったらお仕置きをしなくては。


「あれ? なんか悠夜さんの目が怖いぞ……」


「別に怖くないよ。楽しみにしてて」


「こ、これは! 私は今日大人の階段を上るやつか!」


「ある意味そうかも?」


「にゃ!?」


 可愛い猫さんが目を丸くする。


 人は怒られて成長すると言うし、そういう意味では大人の階段を上ると言えなくもない。


 それなのになんで珠唯さんは顔を赤くして俺の方をチラチラと見てくるのか。


 いくら可愛いところを見せても俺はやめないぞ?


 というかむしろ……


「終わらないから行くよ」


「ひゃ、ひゃい!」


 こうしてやっと可愛い珠唯さんと共に外に出た。


 紅葉の話を聞いたらデート開始だ。

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