第2話
ラーニレフ邸にて…
「何か我々の一族に恨みでもあるのか?」
「アンタらがいなければ、ママはあんな死に方しなかったのよ!」
「ほう。詳しく聞こうじゃないか」
「アタシのママはね、昔ここで給仕さんとして働いていたのよ!なのに、ここの人に乱暴なことされてからママはをかしくなっちゃったのよ。それで、自分で自分を傷つけて泣いてたの。痛い、苦しい、消えたい、助けて、死にたい…。って。結局、ママがどうやって死んじゃったかは知らないけど、最後威まで苦しんでた。だから私はあの学園に入学して、いつかアンタたちに復讐できる日を願ってた。もしもユギカちゃんと結婚しようなんて考えてるんなら、それをアタシが邪魔してお前と結婚してやる!きっと、お前もユギカちゃんに乱暴するだろうからね!」
「貴様…。そんな態度は許されない。お前たち、この生意気な小娘を地下牢に放り込め!」
「そんなことしたって無駄よ!どうせアタシの仲間たちが今夜にでも来てお前たちなんかすぐに懲らしめるんだからね!」
「なら、こちらも相応の力で相手するまでだ」
*
その頃、俺たちは学園の倉庫にいた。
「これは私の学園を拉致したも同然。不法侵入でも訴えられる。これは一攫千金のチャンスだ!新米殿、そして賞金稼ぎ部の皆、ここの備品は何をいいくら使ってもらってもいいから生かして連れ帰ってきてくれ」
なんて学園長に言われたけど…。
「何で学園の備品にこれくらいしか拳銃がないの?この学園は普通科なんだから第5学園ほどじゃなくていいけどもっと置いてよ」
アヤカは不服そうだった。
「仕方ないだろ。この学園だって普段から拳銃が必要なわけじゃないし」
「仕方なくないですよ!昨日先生が壊したのがいけないんじゃないですか!」
「わかった、わかった。今度買って返すから」
「いいです、自分で選ぶので。その代わり、責任とってもらう為に先生にはついて来てもらうから」
「えぇ…」
とりあえず、全員準備は整った。
「みんな、私たちは今から大切な仲間を取り返しに行きます。誰1人として命を落としては意味がありません。覚悟と準備はいいですか?」
俺と2人は、静かに頷いた。
「それではみんな、手を繋いでください。私が転送魔法を使います」
そして、3人と手を繋ぐとミコが虹色に光り出した。
「あ、すいません。言うのを忘れていましたが、パラシュートは背負いましたか?」
「え?ちょっ、まだ…」
「ごめんなさい、止められません!!」
*
身が軽くなる感覚がした次の瞬間、俺は強い向かい風を感じた。恐る恐る目を開けると、そこは上空だった。
「えぇぇぇぇ!?ちょっと待って!?これどういう状況?」
「ごめんなさい。私たち一角獣人が転送魔法を使うとどうしても上空に出てしまうんです…」
「え?翼疾人じゃないのに!?」
「そ、それはともかく、まだ手を繋いでいてください。そうすれば助かりますから」
俺は助言通り手を繋いでいたままにして目を瞑っていた。しばらくして地上が近くなってきたような感覚がしてくると、柔らかいものの上にそっと落ちた感覚を覚えた。でも、そこには何もなかった。
「みんな、怪我は無いですか?」
「ああ、何とか。それで、これは?」
「私が風魔法で即席で作ったんですけど、どうでしたか?」
「凄かった。ありがとう」
「そ、それはともかく、早くナナとユギカの救出に向かいましょう」
そして俺たちは、目の前の街の奥にある大きな屋敷に向かって歩きだした。
*
俺たちが街に入ると、異常なほどにしんとしていた。
「何かやけに静かですね。国民の皆さんは全員でお昼寝中なんでしょうか?」
「ちょっ、今さっきフラグになること言った!?まずい、敵襲が…」
そんなことを俺が言っているとあっさりフラグは回収された。
「動くな!シド様の命により、貴様らにはここで死んでもらう」
「いいえ、それはこちらのセリフです!早くナナとユギカを返してくださればあなたたちを殺さずに済みますが。どうされます?」
「全軍、攻撃開始!」
その合図とともに両者ともに激しい攻防が繰り広げられた。
しかし、相手の前衛は剣士ばかりでキララの長刀によって切り伏せられ、後衛も銃の数は少なく、アヤカによってすぐに駆逐されていった。
「まさか、ここまで相手の防衛が手抜きだとは思いませんでした」
「いや、きっと屋敷の方に戦力を回しているだけだ。気を付けていこう」
*
現在、屋敷までおおよそ50メートルほどの地点。敵は、さっきまでとは比べ物にならない感じだった。
「先生、部長、そしてアヤカちゃん。ここは緑川が食い止めます。みんなは先にナナとユギカちゃんを助けに行ってください。」
「ダメです!ナナはきっとキララの助けを待っているんです。今回の件、ユギカも大切ですが、それ以上に大切なのはケンカをしたまま離れ離れになってしまった2人がちゃんと再会して仲直りすることなんじゃないんですか?ここは私が相手します。その代わり、しっかり2人を連れ帰ってきてください」
「…はい。部長、ありがとうございます」
俺とアヤカとキララは、2人の待つ屋敷の中へ走り込んでいった。