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第2話

このままでは、ミコが殺されてしまうのではないか。俺の脳裏にはそんな不安が浮かんだ。

男の手に頭を握られ、持ち上げられていたミコは見るからに弱っていて、両腕と両足からは力が抜けているように見えた。


でも、今は対抗する術がない状況とも言える。比較的近距離で攻撃するナナとキララは疲れきっているし、アヤカは寝ているし、ユギカの矢は攻撃として通らなさそうだし…。


「おい、起きろ。アヤカの拳銃って俺が使っても大丈夫か?」

「ん…。なぁに、先生?」

「だから、アヤカの拳銃は俺が使っても大丈夫か?」

「別に問題無いと思うよ…。何に使うかは知らないけど、一応追加の銃弾も渡しとくね。あとそれ、リロードしなくても弾が出るタイプだから~」

「すまない」


俺はアヤカから拳銃を受け取ると迷わず男に向かって引き金を引いた。激しい音ととおもに男の右腕に着弾し、男が悶えている隙にミコを助け出した。


「貴様、銃を使って不意打ちをしようとは。よっぽど死にたいようだな」

「その前にお前を退場させてやる」

「ほう。根性だけは人一倍あるか。面白い、相手をしてやろう」


俺は昔、ボクシングに興味があった頃に少しかじった程度にやったことがある。避けることばっかが得意だった俺としてはこんなデカい図体したヤツの攻撃なんか余裕だった。

俺はミコを背負った状態で男の攻撃から逃げ、たまに目や首に向かって発砲した。


「馬鹿な!?人間ごときに我の攻撃が避けられるはずなど…!?」

「俺みたいに逃げることばっかに特化してる姑息な人間もいるってことは忘れるなよ」

「舐めてもらっては困るな。我が既に本気を出していたとでも思ったか!」


すると、男の頭からは3本の邪悪そうな角が生え、肌が紫色になり、巨大なコウモリのような翼が背中から生えてきた。


「この状態になった我に攻撃を入れられた人間はこの数百年に1人もいない。さぁ、その状態で我をどう殺すつもりか?」


すると、男はさっきまでとは比べ物にならない速度で飛んできた。慌てた所為で銃を落としたとろ、それをいとも容易く片手で握り潰してしまった。すまない、アヤカ…。買い直して今度返そう。

男の猛攻はそのあとも続き、俺は気づくとボロボロになっていて、腕や足の切り傷からは出血していた。


「貴様、人間にしてはよくやる方だ。だが、体の持つうちに我に攻撃を加えられるか?所詮、他の人間と変わらないか」

「俺は…、大切な生徒たちの為にここで倒れるわけにはいかないんだ…っ!!」


すると、権能が切れたのか理性を取り戻したミコが俺に話しかけてきた。


「先…生、あまり、無理しないでください…。ここは、私がどうにか…」

「いや、それはコッチのセリフだ。お前もしゃべると傷口が開くぞ」

「私…、先生が頑張るなら…、どうにか力に、なりたいです。だから、先生に精霊の加護をかます。効果のあるうちに、倒してください」


そしてミコが呪文を呟くと、俺の周りに黄色い光が数秒放たれた。確かに、あっきまでと比べると体が格段に軽かった。


「ほう。精霊の加護か。しかし、その程度で人間ごときが我を殺せると思うな!」


そう言って突っ込んできた男の攻撃を俺はジャンプで躱した。そのままの勢いで俺は男の頬に全力でパンチを食らわした。


「これは、お前らの都合で俺の大事な生徒を傷付けたバツだ!」


すると、男はよろめいて倒れ込むと同時に金網に角が引っかかって身動きがとれなくなった。


「馬鹿な!?我がまさか人間ごときに反撃できるワケが…」

「現実を受け入れな。今、お前は人間の俺に反撃された。その上無様にも身動きの取れない状況になって」

「今の状態でも我はお前を殺すことはできるぞ」

「そんな未来はねぇよ。今世の行いを悔いて来世では人間も敬いな」


そう言って俺は引き金を引いた。虚しく銃声が響き渡り、確かにその男は死んだ。


「まさか、本当に殺しちまうとはね」

「お前、チミとかいったか?トーナメントとかで第3雲母学園が勝ち続けてきたのは、この()たちの努力の結果だ。俺たちのことを憎んでたのか何だか知らないが、随分と酷い真似してくれたな」

「わたしゃ、お前たちに大切なお金を持ってかれてばっかじゃアイツらに顔向けできんのよ」

「どういうことだ?」

「あのお金はね、ほぼ全部他の賭けに負けた貴族の賭け金なんだよ。それをお前たちに取られるってことは、私の刺客がお前たちよりも弱いってことで見下されるのよ。だから、お前たちを排除したかったのさ」

「じゃあ、こんなことをしなければいい」

「それじゃあ、私にどうやってアイツらと関わっていけっていうんだい!?」

「殺す。俺の生徒たちを殺そうとした報いだ」

「待って!!2000万ゴールドあげるから許して」


でも、俺としてはあと少しでミコだけでも命を奪われたかもしれないと考えるとどうしても許しがたい。


「先生…、許してあげて…」

「ミコ…。仕方ない、許すとするか。ただし、今すぐその2000万ゴールドは用意しろ」

「は、はい」


こうして、賞金よりも多い金額を得て俺たちはそこを後にした。もちろん本心では奴を許していないから警察学校である第5雲母学園にここのことは通報したけど。



「…はっ!?ここは…」

「やっと起きたか」

「今って何時くらいですか!?みんなは大丈夫ですか!?」

「ああ、みんなは大丈夫だ。ミコ、今回俺は決めたことがある」

「何ですか?」

「ミコ、お前に無理させない。それが俺の決意だ」

「わ、私、先生に心配させちゃいましたよね。それに、先生にも頑張らせちゃいましたし…」

「俺はお前たちの顧問だ。俺がお前たちの為に頑張るのは当たり前だ。だから、お前も頑張りすぎずにしっかり俺を頼ってくれ」

「先生…。そ、それじゃあ、ちょっとお願いがあります」

「何だ?俺にできることならなんでもするぞ」

「そ、それは…」


そしてミコがしてきたお願いは、少し意外なものだった。

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