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新魔王城 玉座の間 闇黒三美神の業務報告



■新魔王城 玉座の間 闇黒三美神の業務報告



「それでキルコ坊やを取り逃したということですか!?」

 玉座から腰を上げ、ゴートマ様は声を荒らげた。

 魔国において『なりたい職業(魔王様を除く)ランキング』で常に1位だった闇黒三美神の3人は跪いていた。ゴートマ様の叱責を受け、ただただ頭を垂れている。

「今日はレベル70超えの盗賊に、レベル40超えの魔物たちを転送させたというのに! それが全滅と? 闇黒三美神のアナタたちは何をしていたんですかッ!」

 ゴートマ様は伝説級の軍配団扇、覇将風を三美神の前で仰いだ。まきおこる多属性のマナの風が彼女らをじりじりと痛めつける。

 一振りで百の兵士を薙ぎ払う力を持つ覇将風だ。加減しているとはいえ仕置きとしては少々強い気もするが、此度の三美神が演じた失態を鑑みれば、妥当とも言えるか。

「申し訳ございません! ゴートマ様!」

「相手方の勇者の力が強力でして……」

「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!」

 頭を更に深く垂れる三美神。ゴートマ様がお怒りになるのも無理もない。

 ゴートマ様は三美神や魔物たちを人間界に送るのに多大なお力を消費されるのだ。今朝も転移魔法を行われた後は、2、3時間ほど床に伏しておられた。何の成果もないと知って憤慨なさるのは至極当然である。

 いくら相手の勇者が、魔王の魔力により3桁のレベルに達していたとしてもだ。

「しかし明日は心配する必要もないでしょう。死樹海迷宮に匹敵するほど複雑だと聞く新宿駅や東京駅で乗り換えに迷っていた勇者たちも、明日には下北沢に着くと報告を続々と! ……受けていますからね」

 おいたわしや、ゴートマ様の転移魔法は未だ不完全で、転移先を指定することができない。

 現世の座標を掴むのに聖剣神話なるゲームソフトを目印にしているのだが、そのゲームは現世には数多とあるようで。ほとんどランダムに転移先がバラけてしまう。

 運が悪いと海外もあり得る。パスポートを申請してきた勇者も過去にはいた。彼は異国の空の下で息災だろうか。

「明日も案内役として転移させますが、手ぶらで帰ってきたら承知いたしませんからね!」

 その言葉を最後にゴートマ様は玉座に腰を下ろされた。

「失礼いたします」

「失礼いたします……」

「失礼いたしますっ」

 闇黒三美神が出ていく。彼女らからは苦い悔しさと、安堵を感じた。

 さて、俺も勉強しておかなくては。ほとんどの場合、乗り換えでたどり着き、そして必ずと断言していいほど迷うという新宿駅と東京駅について。



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