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賢者巡礼  作者: ナハァト
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あとでそうだと考え付くこともある

 巨大ロックワームにバックリいかれたが、別に死ぬつもりはない。

 それに、喰われはしたが、飲み込まれてはいない。

 咄嗟に竜杖をつっかえ棒にして、口内に踏みとどまることはできた。

 ……失敗かもしれない。

 真っ暗で状況がよくわからないし、なんか臭……くはないな。

 ただ、土臭いなんて言葉はあるように、ここはなんか岩臭い?

 ロックワームと言うくらいだし、鉱石でも食べているのだろうか?

 とりあえず、服に臭いが付くのは勘弁して欲しいので、さっさと抜け出すことにしよう。

 火属性――は、岩のような体表を溶かすことはできるだろうが、今ここは内部。

 溶けて溶岩のようになった場合の危機的状況が怖いので却下。

 なので、先ほど試そうとしてできなかった光属性でいこう。

 ただ、下手に魔力量を絞ると、巨大ロックワームを倒せてもそのまま埋まってしまう可能性がある。

 全開はやり過ぎになりそうだが……外に到達するまで貫くくらいのつもりで放とう。

 たくさんあったし……一個くらい消えても大丈夫だよな、山。


「『白輝 呪縛を断ち切り、戒め――』」


 突如足元が揺れて不安定になる。

 収まる気配はなく、揺れっ放しだ。

 巨大ロックワームが暴れるのかもしれない。

 そうする理由として考えるのは、襲われているとか……そうか。

 もしかすると、ジーナさんたちが何かしているのかもしれない。

 なら、こっちも動いてさっさと脱出して合流しよう。

 ミスリル鉱石(極大)の行方も気になるし。


「『白輝 呪縛を断ち切り 戒めを解き放つ 眩く白き輝刃 光斬剣ライト・ブレード』」


 手のひらの先に光り輝く剣が出現する。

 出現したのは普通の剣サイズだが、注ぐ魔力量によって大きさも形状も変化するが、今はそこに制限は付けない。

 もっと長く太くして、一気に切り刻んで外まで貫いてやる。

 いくぞ! と構えて魔力を流した瞬間――これまでで一番揺れ、光り輝く剣の先が下に向く。


「あっ」


 注がれた分、長く太くなった光り輝く剣が下に向かって形成され、巨大ロックワームをそのまま貫くと、揺れはさらに大きくなり――突然、浮遊感というか、落ちている感覚が伝わってきた。

 なんかマズイ気がする。

 急いで脱出した方がいいが、その前に今ので魔力操作をミスった。

 光り輝く剣が暴走したように動き出す。

 剣ではなく鞭のようにしなり出し、魚のようにびちびちと跳ねるような動きをし出した。

 正直見ているのが怖い。

 幸いというか、びちびちしているのは先端の方で、根本である俺の方には届かないようだが、巨大ロックワームは別。

 細切れ、と言えるくらいに内部から切り刻まれ、散っていく。

 ただ、結果として、視界が――開けた。

 見えたのは、輝く陽の光と、白い大地。

 山の中に居たはずなのに、今は空中に居た。

 いや、違う。

 空中に居るだけではなく、空気が灼熱と言ってもいいくらいに熱く、白い大地はすべて砂。

 初めて見るが、おそらく砂漠と呼ばれる地形。

 今、その砂漠の地表に向けて落ちて――。


「冗談だろ」


 砂漠にスゥーッと一本の線が描かれたかと思うと、そのまま割れていき――にゅっ、とそのまま起き上がっていく。

 そこは巨大な口だった。

 それこそ、人なんて容易どころか、家を数軒丸ごといけそうなくらいの巨大さである。

 空中で全容が見えるからわかるが、ロックワームと似た形状のようなので、さしずめ極大サンドワームだろうか。

 あと、間違いなくこっちを餌だと認識している。

 大口開けて待ち構えているし。


「そう、簡単に」


 継続したままだった光り輝く剣に、さらに魔力をガンガン注ぐ。

 暴走状態とか、知ったことか。

 今は極大サンドワームを倒すことの方が重要だ。


「やられるかよ!」


 注がれる魔力量に光り輝く剣は応え、超大、極太に。

 別に最終系でもないが、直径が極大サンドワームよりも長くなるまで超大にし――たのはいいが、今は暴走状態。

 極大サンドワームを細切れにするだけではなく、俺が落ちていくのに合わせて砂を掻き出し、地面が消失していく。

 ……これ、どこまで落ちるのだろうか?

 なんてことを思っていると、下から陽の光のような輝きが照らしてくる。


「……なんだ?」


 どうにか光り輝く剣を消し、その輝きの中に落ちると、その先は――晴天と青い海。


「………………海?」


 状況が目まぐるしく変わって意味がわからなくなるが、このままだとヤバいということはわかる。

 落ちそうになっている海面が硬そうだ。

 水なのに硬そうというのは変かもしれないが、このまま落ちるのは危険な気がする。

 どうにかして落ちないように……今は開放的な空間だ。

 いっそのこと、海を蒸発されるだけの火属性魔法でも放てば……いけるかもしれない。

 それで、海底を露出させて、その海底とぶつかる前に竜杖に乗って………………あっ。別に今乗ればいいのか。

 というか、さっきの砂漠でもそうすればよかった、と今更ながらに思う。


「飛翔!」


 竜杖に乗って、海面と衝突するのを回避する。

 その時、空中に巨大な剣を刺したような形の穴がなんの脈絡もなくできているのが見える。

 しっかり確認しようと瞬きすれば、何事もなかったように消え――晴天の青空だけが広がっていた。


「………………一旦落ち着こう」


 なんか心臓がバクバクいっている。

 まずはこのまま空中で状況確認することにした。


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